All Chapters of お持ち帰りした異世界の皇子を返品したい: Chapter 41 - Chapter 50

58 Chapters

40.対話をしているのです。

「レノア様!頭が痛いです。」エアマッスル副団長が声をかけてきて、レノアは私に軽く会釈をすると彼の方に駆け寄った。明らかにニヤニヤしている彼はただ彼女と話したいだけで仮病だろう。私なら引き攣った顔で、部屋に戻って休むように言うだろう。彼女は真剣に彼の話を聞いて診察をしている。まあ、万が一もあるからやはり彼女のように丁寧に対応した方が良いのかもしれない。能力も適正もある彼女のような人が医者になれる世界になってよかった。この世界は、今アランが徹底的に管理している。平民であろうと特別な成果を上げれば爵位が授けられる。努力すれば報われるのだから、人々がやる気を出し沸き立って当たり前だ。貴族でも不正を働けば処罰される。あぐらをかいてきた貴族は今の世界に不満を持つかもしれないが、自分の母方の実家まで処罰した皇帝をみれば、自分の地位を保つためにも必死に努力するだろう。領地を収める領主たちはアランの厳しいチェックが入るようだから、彼らの能力向上にもなる。皇族に生まれた責務を、スーパーコンピューターを搭載した彼が本気でまっとうしようとしているのだ。周囲の話を聞くに執務室にこもりっぱなしらしいから、さすがの彼でも処理する仕事が多すぎるのだろう。こんな地方でやる先ほどの演劇にまでチェックを入れている彼の完璧主義っぷりは心配になる。おそらく、そんな彼に息抜きをさせたくてエレナはボート遊びに誘ったのかもしれない。この世界は一夫多妻制をとっているけれど、皇帝であるアランがエレナ一筋で憧れの的になっているので、たった一人の妻を愛することが美徳として浸透してきたらしい。モテたいだろうこの世界にいる雷さんは、自分の書いた小説がプレミア価格に高騰して儲かっているらしいし、どうせ多くの妻を囲っているのだろう。ライオットが日本のラノベ作家は大して儲からないといっていたのだから、雷さんもこの世界で女に囲まれて左うちわで暮らした方が幸せなのではないだろうか。正直会いたくな
last updateLast Updated : 2025-07-08
Read more

41.戻ったんだ。

「え、どこ?パンキョー?私法概論?」私はどこかの大学の大講堂の一番後ろの端の席にいた。どうやら今講義が終わったようで、学生たちが出口に出て行く。「戻ったんだ。」エレナは大学で私法概論の講義を受けていたみたいだ。レオハード帝国に戻った時、アランの役に立つ知恵を身につけたいとでも思ったのだろうか。ダンテ様関連のやらかしの挽回のために、レオ君を懐柔作戦までたてていたが戻ってきてホッとした。レオハード帝国で2人は無事結婚式に間に合っただろうか。「きっと性格に難はあっても素敵な子なんだろうな、エレナ・アーデン。」アランは生来のものか、育ちが良すぎるのか純粋過ぎる人物だ。それゆえに他人の影響を受けやすいように思った。「周囲はみんな詐欺師だよ。」幼少から側にいたカルマン公爵の言葉をそのまま学び取り、貴族たちには疑いの視線を常に向けていた。大好きなエレナの姿の私がライオットの近くにいると、心から傷ついていて激怒した。私がエレナ・アーデンの髪を切ると彼女の身を案じて号泣していた。普段しっかりと皇太子の仮面を被って武装しているが、内面がピュアで繊細だ。大人になった彼も本当に心配になる程ピュアだった。「エレナを愛する権利だよ。」彼が曇りなきまなこで私を見ながら言ってきた時は、ホワイティーすぎる発言に笑い転げそうになった。あんな純粋な絶滅危惧種のような人間が、あの世界の最高権力者でまっすぐ成長したのは幸運なことだ。彼の純粋さはエレナ・アーデンが守っているのだろう。世界を征服したような皇帝が純粋なままでいられるなんて奇跡に近い。「僕のエレナが「僕」て呼んでいる方が良いっていったんだ。」彼女に言われればキラキラした目で従ってしまう。そのせいで、あの世界はボクチャン皇帝に支配されている。あの不自然なナルシストな仕草もどうせ彼女が褒めたりしたのだろう。彼女が褒めてくれたのが嬉しくて、過剰に取り入れてそうだ。エレナ・アーデンが私のように程よ
last updateLast Updated : 2025-07-09
Read more

42.18歳の心変わり。

私はどうしてエレナ・アーデンに同情的になっていたのだろう。客観的に見て彼女は帝国一裕福な侯爵家の一人娘で、絶世の美女。その上、今や世界王の寵愛を一身に受ける身。毒親侯爵夫人のビンタとキャラが強すぎて悲劇のヒロイン扱いしてしまったが、侯爵夫人も今のエレナの状況を見れば拍手喝采するだろう。エレナがラノベの主人公ならタイトルは『超ハイスペイケメン皇帝に今日も溺愛されすぎて困ってます。』といった感じだ。同情の要素が一つもない、嫉妬しかない。「レナの病院を建てようよ。」美少年時代のアランのエンジェルボイスを思い出す。「貢ぎ体質だ。」あの時は小学生がセレブ社長みたいなことを言って可愛いと思ったが、10年以上ずっと貢がれていたからエレナは他人の金を使うことに抵抗がないのだろう。「周囲の人間はみんな詐欺師だと思った方が良いよ。」アランのエンジェルボイスがまた私の頭に響いた。「あんたの女が一番の詐欺師だよ。悪女だよ。」見知らぬ大学の大講堂で1人寂しく呟いた。「それにしても、なんでレシート。」入れ替わる前に着ていた服も、外出時に持参しただろうバックも、履いた靴も捨てたに違いない。スマホは珍しいから捨てなかったのだろう。「まさか、アラン彼女への貢物を国庫から支出している?ダメでしょ、それは。」だから、エレナ・アーデンは領収書をとっておく癖があるのではないだろうか。いや、今のレオハード帝国ではエレナへの貢ぎ物は国庫から支出するのが妥当なのかもしれない。スーパーコンピューターアランが管理するあの世界は、皆、夢を持って生き生き暮らしている。適材適所に人員を配置したり、貴族たちの書類を逐一チェックし彼らを鍛えたり、彼はいつも熱暴走を起こしそうなくらい忙しいのだ。その熱暴走をふせぐエレナという冷却装置への貢物は国庫から支出されて当然だ。「こんな異世界のレシート役に立たないのに、取って置いてしまうなんて可愛いじゃないか。」私は何とか自分を納得させようと試みてい
last updateLast Updated : 2025-07-10
Read more

43.ねえ、ライオット知っている?

「クレジットカードの限度額がきたら、銀行口座からおろした感じだな。」三池がレシートを時間順に並べていく、レシートを元にエレナの立ち寄った店を地図に記した。「エレナ・アーデンすごいな。予約なしで、この美容院行ったのか。」彼がレシートの整理作業をしながら、感心したように言った。「本当だね、美容院ってこんな高いところもあるの?」こんなこと言ったら怒られるかもしれないが、技術料だけでこれだけ高額ってさすがにボッタクリではなかろうか。個室で人と会わなくても済むような芸能人御用達みたいな場所なのだろう。そんなところに吸い寄せられるとは、根っからのお嬢様というものは異世界でもお嬢様なのかもしれない。私の行くような美容室で薦められるままに、トリートメントを受けても10万円こえることはまずないと断言できる。会計で10万円をこえるるような事があれば、恐らくバックに顔に傷がある肩が潜んでいると疑うだろう。「個室でヘアメイク全部込みでおまかせみたいな感じだろうけど、流石に高くて空いていたのかもね。」笑いながら言う彼にめちゃくちゃ気が動転していた自分が気恥ずかしい。私は自分で思っているより、ずっと小者のようだ。私は、彼に少し興奮状態で泣きながら事の顛末を説明した。「宝飾品や時計は返品できると思うし、服やバック、靴は返品できなかったらネットで売れば良いんじゃないかな?」落ち着いてそう言われて、まずはレシートを整理することにしたのだ。まるで、商売をやっている人かのようにレシートを捨てないエレナ・アーデン。人の持ち物は問答無用に捨て、容姿にここまで手を加えたところを見ると自分が私になることが納得いかなかったのだろう。容姿には割と自信があったし、センスだって悪くないと思ってたので結構傷ついた。整形手術をされなかっただけ、ありがたいと思った方が良いのかもしれない。行動力が並外れてて、もう何があっても驚かない。彼女のことを知りたいと思ったけれど、もう関わりたくない気持ちが今は優っている。「バックなんて限
last updateLast Updated : 2025-07-11
Read more

44.え、もしかして今のキャラが素なの?

私たちは違う世界に生まれて育っているのだから、一緒にいるのは甘いことじゃない。エレナ・アーデンより私の方が良いだなんて言われても嬉しくもなんともない。私じゃないとダメだというくらいの気持ちが欲しかったんだよ。初めての恋に浮かれていても、その事実に目をつぶっていられる程バカにはなれなかったよ。ライオットに惹かれてはいても、どうしても彼を見ると白川くんを思い出した。私に振られたら、あっさりと他の人にいった男。呆れていたふりをしていたけれど、本当はすごく傷ついた。ライオットは分かっていない。血筋でアランに負けてエレナ・アーデンに振られたと思っているだろうけど、そんなことはない。たとえ2人の立場が逆だとしても、エレナ・アーデンはライオットを選ばない。だって、自分じゃないとダメだと言ってくれるような人を見つけてしまったら、誰でも良いようなあなたなんてどうでもよくなる。そんな男は見飽きているんだよ。捨てられたなんて被害妄想、絶対起こさないで欲しい。だって、最初に私の気持ちを捨てても良い選択肢の1つにしたのはあなただよ。私は自分がいつのまにか初恋に終わりを告げていることに気がついた。三池といると安心して、時に頼れて毎秒ごとに惹かれていっている自分に気がつく。思えば、今回レオハード帝国に転生してしまった時も私はずっと彼に側にいて欲しかった。クリス様が彼に変わってくれないかと、ずっと思っていた。自分勝手だろうけど今は彼のことが好きで、もっともっと好きになる気がする。エレナがショタ萌えで6歳のアランに惹かれた可能性もあるけど、きっと一緒に過ごすうち、頼れてかっこよくなっていく彼をどんどん好きになったはず。エレナが私のお金を使い込んだ時、私には魔法使いのようになんでも解決してくれるアランのような存在はいないと頭にきたけれど、親身になって私に寄り添ってくれる彼が私にもいたのだと気がつけた。自分でライオットを幸せにできないならレノアに幸せに
last updateLast Updated : 2025-07-12
Read more

45.なんで、触らせてくれないの?

「今思うと、私が高校の時しょーりを嫌いだったのは、自分も騒いだりしたくて嫉妬していただけかも。」悔しいけど、偽らざる本音だ。でも、彼に話しておきたかった。私が彼を嫌いだったのは彼の問題ではなく、私自身の問題であったこと。「え、嫌いだったの?好かれてはいないと思ってたけれど、嫌いだったの?」彼はまた驚いている、嫌われていたのに気が付いてないとしたら鈍感過ぎる。好きの反対は嫌いじゃなくて無関心だというが、嫌いだったということは私は彼に興味があったのだ。「そういえば、飛行機酔いするなら宇宙飛行士にはなれないんじゃないの?」私は彼の存在を知った初日、彼が友人たちと話していたことを思い出した。もう一度修学旅行に行きたいとボヤいている友人に、彼が飛行機酔いしたからもう行きたくないと言っていたのだ。ボヤいている友人の顔は朧げなのに、不貞腐れたような彼の顔はよく覚えている。そんな三半規管が弱い人間が存在することに驚いたことも。興味があったくせに、ずいぶんと遠回りしたものだ。「しょーりが今の所なれるのは、私の彼氏くらいだよ。」飛行機酔いのことを知っていることに戸惑っていた彼の顔が一気に赤くなった。なんで、彼の攻略はこんなに楽勝なのだろうか。もっと、苦戦させてくれても良かったのに、まあ、遠回りしたから楽勝でちょうど良かったのかもしれない。「そういえば、しょーりの初めての彼女ってどんな人?」彼が驚いた顔をして固まってしまった。私はわざと彼に答えづらい質問をしたのだ。彼もライオットのような3時間黙祷系男子なのだろうか、結構あれはトラウマ経験なのだが。どうやら、彼はこれからそんなにモテなそうだ、そこは安心ポイントかもしれない。彼は、そこまで高いトークスキルを持っていない。少女漫画脳っぽいのに気の利いた返しもできないとは。お笑いが好きか聞いてくるくらいだから、芸人のような面白い返しをしてくるかと期待したのに。なぜ、さしてイケメンでもない芸人がモテるのか考えたこと
last updateLast Updated : 2025-07-13
Read more

46.結婚する訳でもないのに挨拶するからびっくりした。

小学生の頃、私は漫画が好きだった。読むのはもっぱら、毎回バトルする少年漫画。誰が一番強いのかを争うのを読むのが楽しくて仕方なかった。友達が、感動すると言って少女漫画を貸してくれた。全く面白くなかった。恋愛で頭いっぱいの登場人物がみんなバカに見えた。地球を守るため戦う少年漫画の主人公に比べ、スケールが小さく底辺校が舞台なのかとバカにしていた。今なら理解できる。私は幼かったのだ、なぜ毎回似たようなバトルを見て喜んでいたのだろう。今後の人生で自分が地球を救うバトルをする可能性があるとは、思っていなかったはずだ。少女漫画は面白い、恋愛は最大の娯楽だ。それに、小学生にして気がついていた私の友人は偉大だったのだ。ライオットに恋していた時は苦しいばかりで気がつかなかったが、三池との恋は娯楽でしかない。今なら、壁ドンをする俺様男の気持ちが分かる。ときめかせて、赤くなって動揺する相手の反応をみるため。30字以内で答えられた。もし、将来Fラン大の入試問題を作る機会があれば出題してみよう。私があの三池勝利に惚れているのだ、世の中何があるかわからない。なんか、壁ドンでも床ドンでもとにかくドンドコして彼を動揺させたくてたまらない。「俺、男だぜ。」みたいなセリフを吐く男の気持ちも分かった。小学生の頃少女漫画を読んだ時は、一見すれば分かる事をワザワザ言ってこの男はバカなのかと思っていた。今度、三池を密室に連れ込めるような場面があったら言ってみよう。反応が今から楽しみだ。私に怯えているようだけど、そんな態度をしていたらもっとセクハラしてやるんだから。私の彼氏になったようだから、何をされても訴えるんじゃないわよ。「いつか、私の終わってしまった初恋の話をさせてね。」一瞬にして、彼の顔が真っ青になった。変色生物か何かなのだろうか、あちらの世界で2ヶ月も王族だったのに表情管理が全くできていない。彼は動揺しているのが丸わかりな、震えた声
last updateLast Updated : 2025-07-14
Read more

47.彼が優しく純粋に育ったのは、すべてあなた方のおかげです。

エレナ・アーデンは半日でファミリーカーが購入できるくらいの金額を使っていた。返品できるものは返品、エステもクーリングオフした。その他のものはネットオークションで売った。その結果、なんと12万円程の黒字を出した。私はリース子爵領での演劇の登場人物紹介を読んだ時エレナ・アーデンが12歳で実業家として成功しているとか絶対あり得ないと思った。アランがイケメン皇帝で人気があるから、彼女が嫉妬されないように彼女の演劇の紹介文を盛ったに違いない。半端な女じゃ、紫色の服を着たアランファンが許さない。存在し得ないような、とんでもないハイスペな女じゃなきゃカップル推しなどできない。そこまで計算できるなんてさすがアランとしか思っていなかった。エレナ・アーデンはおそらくかなりの商才がある。だから、12歳で実業家として成功しているのは本当なのだろう。彼女は初めて来た異世界で半日で黒字を出したのだ。いわゆる一流をしっているがゆえの目利きなのだろう。返品できなかったものを、ネットオークションで売ったらみるみる高額になった。あっという間に買い手がついて売れた。クレームが来たら嫌なので1回使用したことを明記して、少しの汚れもアップで写真に撮ってあげた。それでも、新品の購入時より高値がつくのはどういうことなのだろう。私の持っている常識では全く理解ができなかった。エレナ・アーデンの部屋には数えきれない宝飾品があった。私はそれを見て、彼女を浪費家で金がかかりそうな女だなと思っていた。今思うと、それらの宝飾品はお店みたいに綺麗に保管してあった。あれらの宝飾品もどんどん値があがったりするのではないだろうか。いわゆる高度なセレブのタンス預金みたいなものだ。よくセレブが子供には一流のものを買い与え、一流を知ることが大切だと言っているのをバカにしていた。そんな小さい子になにがわかるんだ無駄金使いやがって、寄付でもしてろと毒吐いていた。でも、一流のものに幼い頃から接していると、一流を見る目が本当に
last updateLast Updated : 2025-07-15
Read more

外伝8.俺は最後の恋がしたいのだ。

日本に帰ったら、俺は『異世界クラッシャーえれな』を書いて出版社に持ち込むつもりだ。主人公は現役東大生松井えれなだ。名前を少し変えようかと思ったが、主人公「えれな」という名前にすることで俺は愛情を持って執筆できていた。名字を変えて松井えれなの名前を変えて、松田えれなにしようか悩んだ。松田は俺の大好きな野球選手の苗字で、聖域なので使いたくなかった。松井も某有名野球選手の苗字だと気づいたが、松井えれなはどこにでもいそうな名前だと思いこのままにしようと思った。現役東大生に松井えれながいたら迷惑をかけるかもしれないが、そもそも東大は女が少ないから確率は低そうだ。「もしかして、お嬢様か?松井えれなは。」元々お嬢様であるなら素地があるなら、エレナ・アーデンの真似ができるかもしれない。演技は女優の線もあるが、酸いも甘いもしったような女優がライオットと脱獄を試みて正体を明かす愚かな行動はしなそうだ。「社長令嬢とか、大病院の娘とかにするか。社長令嬢はラノベに多いから、大病院の娘設定にしよう。」病院は過労やメンタルの病でお世話になっていて、身近な存在になり俺は松井えれなを大病院の娘で現役東大生の設定にした。自分より明らかに優秀な人間を書くのは難しい。23歳にもなれば分かる、世の中には生来の能力差がある。東大に入るような人間は、元々の能力が他者とは異なっている。思考回路や物事を分析する能力が全く違うのだ。「俺だって地元じゃ神童と言われて来たじゃないか。」俺はスペックの高すぎる松井えれなという主人公を書いてやることで失った自分の自信を取り戻せる気がしていた。東京に出てくるまで、地元では無双状態だった。ルックスもそこそこ、学年でもトップの成績しかとったことがなかった。それが、井の中の蛙、大海を知らずということを東京に出てきて知った。自分は特別でもなんでもなく量産型だと分かってしまったのだ。自信を失うと落ちていくしかなかった。就職してコケにされ、彼女に捨てられコケにされた。損
last updateLast Updated : 2025-07-15
Read more

48.大阪に旅行に行きたい。

「大阪に旅行に行きたい。」私が言った言葉に彼は驚いたような顔で返してきた。「夏休みに。いいねー。大阪スタジオパークいきたい。」本当にのんびり屋、よくこの大都会東京で暮らせてきたものだ。島時間はそろそろ終了にしろよ。私たちは、未熟な自分に向き合う修行の旅にすぐにでも出るべきだ。「そんなの待てないよ。今週末には行こう。」彼が真っ赤になって絶句した。私は、彼が私の声が好きと言ったことを思い出した。私は今、私の第3の声を使っている彼女っぽい可愛い甘い声だ。今、思い返すと私は三池に対して3種類の声を使っていた。私の第2の声、仲良くする気はない凛とした涼しい声で中高6年間で使用。第3の声、彼女のような可愛く甘い声で三池の前で現在使用。第4の声、甘さを抜いた友人声で現在の人間関係で使用頻度が高い。第5の声、突き放すようなブリザードボイスで邪魔者を排除する時に使用。彼は2の声と3の声と5の声の3種類を知っている唯一の存在だった。精々私が1人の人間に対して使うのは2種類の声だからだ。私は彼に対して第2の声を高校時代使っていた、あまりにしつこい時は第5の声を使った。でも、彼に惹かれはじめてからは第3の声を使っている。彼が私の声が好きだと言った時、私は自分の地声のことだと思ってしまった。今思えば、私の地声を聞いたことがあるのは私しかいない。妄想しながら一人言を言う時など一人の時発する私の地声は極めて普通だった。彼が好きだといったのは、私の第3の声だろう。私は有事の際にはこの声を使っていた。兄やクラスメートの男に何か理不尽な要求を頼みたい時だ。男は視覚優位と思っていたが、最近はアニメの影響で声フェチが増えているようだ。それは声を使いこなせる私にとっては非常に好環境だった。私はそんな有事にしか使わない第2の声を彼に惹かれはじめてから常時使っていた。深層では彼を振ってしまった自分を再び好きになって欲しくて仕方な
last updateLast Updated : 2025-07-16
Read more
PREV
123456
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status