Tous les chapitres de : Chapitre 91 - Chapitre 100

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【第1部】 第48話 公認カップル?①

「うおっほん!」 短い口づけは一瞬で終わり、私と龍は咳払いに反応しゆっくりと振り返った。 病室の入口付近。  腕組みしながら立ち尽くす祖父が、こちらをじっと見つめている。「お、おじいちゃん……」 二人の関係がバレるのも時間の問題だし、別にいいんだけど……いきなりキスシーンを目撃されるのは、さすがに気まずい。 どうしたものかと思い隣を見ると、顔面蒼白の龍が祖父を凝視している。  体は硬直し、目は大きく開き、幽霊でも見たような表情だ。  そんな彼が突然大声を出す。   「も、申し訳ございません! お嬢に手を出してしまいました!!」 ベッドの上で激しく土下座する龍。  凄い勢いで頭を下げたおかげで、龍の頭は布団に埋まった。「ぶっ……ぶはははははっ!」 祖父はいきなり吹き出すと、タガが外れたように大笑いする。「ひひひっ、龍、手を出したって、おまえ、なんちゅう表現じゃ。  よいよい、おまえの気持ちはずっと前から知っておったわ。流華の気持ちは知らんかったがな」 祖父は私にウインクすると、こちらへ歩みを進める。「まあ、龍の人柄はわしが一番わかっとる。龍になら流華をやってもいいと思っていた。  あとは流華の気持ち次第、とな。  流華も同じ気持ちなら、わしが言うことは何もないて。幸せになりなさい」 側にやってきた祖父は、私の頭と龍の頭を力強く撫でくり回した。「おじいちゃん……」 「大吾様……」 祖父の大人な対応に感動していると、急に雲行きが変わった。  ニコニコしていた祖父の表情が一気に真顔へと戻る。「だがな、あんまり下心を出すとわしも黙っとらんぞ。いいな、龍」 鋭い眼差しで睨みつける祖父に、私たちの間に一瞬緊張が走った。  さすがというか、やはりこの人の睨みには強烈なインパクトがある。    睨まれた龍は急いで姿勢を正し、ベッドの上で正座する。「は、はい! 肝に銘じます!
last updateDernière mise à jour : 2025-08-18
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【第1部】 第48話 公認カップル?②

 祖父の説明によると、  龍を狙ったのは、如月組のことを敵視している組の連中。  以前から龍のことを煩わしく思っていた奴がいて、そいつが今回の事件を企てたらしい。 龍の存在は、他の組の者にとっては脅威でしかない。 喧嘩の強さはいわずもがなだし。  彼が喧嘩で負けたことは聞いたことがなかった、おそらくこの辺のヤクザ連中の中でも最強クラスであろうと思われる。  さらに、彼はとても頭が切れるのだ。  即座に的確な判断を下すことができ、そこに迷いはなく、彼の予想や指示はいつも外れたことがなかった。  皆に慕われ、人を引き付ける人間力。さらには人を従わせまとめる統率力もある。    取り入れることができないなら、始末したいと思う連中は多いだろう。 そんな中、龍を慕っていたあの男を利用し私を餌におびき寄せ、彼を始末する計画を考えた者がいた。  そいつが龍を撃った犯人であり、この計画の首謀者。 というのが事の真相らしかった。 「まあ、あとはわしが始末をつける。龍はなんも心配せんでいい」 祖父は龍に向かって力強く微笑んだ。  この事件の落とし前は、祖父がつけるということだ。 可愛がっている自分の息子同然の龍が傷つけられ、黙っているような祖父ではない。  しかし、その報復を想像すると、相手が可哀そうになってしまう。  いったいどんな目にあわせるのだろう……。    こう見えて、祖父は極道の世界では相当恐れられている存在なのだ。 以前、組の者が謂れなき理由でぼこぼこにされた事件があった。  その後、それはそれは恐ろしい仕返しが待っていたとか、なんとか。 まあ、私は詳細は知らないけれど、こちらの世界では有名な逸話となっている。 龍は祖父に向かって、静かに頭を下げる。「……ありがとうございます。大吾様にはいろいろご迷惑をおかけしてしまい」 「ストップ!」 なぜか龍の言葉をいきなり止めた祖父が不機嫌そうに顔を歪める。
last updateDernière mise à jour : 2025-08-18
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【第1部】 第49話 真相、王子の恋の行方①

 龍との別れを惜しみつつ病院から帰ってきた私は、ヘンリーと二人きりで話をするため、彼を呼び出した。 どうしても決着をつけなければならないことがある。 私は気合いを入れ、屋敷の庭にある池のほとりでヘンリーを待つことにした。 この庭には小さな池がある。よく立派なお屋敷にあるような鯉が泳いでるあれだ。 それが私の家にもあった。 水面をゆったりと泳ぐ鯉に餌をやりながら、私は一人静かに待つ。 しばらくすると、ヘンリーが現れた。 視線を逸らし、どこか気まずそう。 その表情からは、何の感情も読み取れない。 ただ、雰囲気が重いことだけは伝わってきた。「何か用?」 相変わらずのぶっきらぼうな声。以前のヘンリーとはまるで別人みたい。 前は私が話しかけるだけで、あんなに嬉しそうにしていたのに。「うん、ちょっと……話しておきたいことがあるんだ」 私が真剣な眼差しを向けると、ヘンリーが先に口を開いた。「……龍は、どうだったの?」 その言葉に、一瞬考え込む。 そういえば、ヘンリーたちも龍の事件について聞いているはず。 きっと心配していたのだろう。 少しでも安心させようと、私は微笑みかける。「大丈夫、命に別状はないし。すぐに退院できるって」「そっか……よかった」 ほっとしたように微笑むヘンリー。 その優しい笑顔に、胸が痛んだ。 そう、これが本来の彼。 優しくて、純粋で……私が時を超え愛した人。 そんな彼に、これから残酷な言葉を告げようとしている。 どうしようもない苦しさを覚え、躊躇いが生じてしまう。 私はその迷いから逃れるように、思考を切り替える。 そうだ、まずはずっと聞きたかったことを聞こう。 ヘンリーの態度が急変した理由。 私には、
last updateDernière mise à jour : 2025-08-19
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【第1部】 第49話 真相、王子の恋の行方②

 驚きのあまり、言葉を失ったまま彼を見つめる。 そんな私を見て、ヘンリーは寂しげに微笑んだ。「ははっ、アタリかな? 僕、こう見えて結構鋭いんだから」 小さく笑ったあと、すぐに切なげな表情へと変わっていく。「なんとなく、そうじゃないかって思ってた。  君の隣にはいつも龍がいて……龍の前での君はとても魅力的だった。  僕といる時とは違う君。  すごく自然で、のびのびしていて、笑顔が輝いてた。  もちろん、龍の気持ちは最初からわかってたし。時間の問題かなって思ってたんだ。  それでも、もしかしたらって。  少しの間だけでも、君が僕を選んでくれる可能性に賭けた。  ――でも、やっぱり玉砕だった。  それでも君と過ごせた時間は、幸せだったよ」 遠くを見つめるヘンリー。  その横顔が、あまりにも綺麗で。 私の心臓がトクンと鳴った。 これは、姫の気持ち? それとも……。「じゃあ、気持ちに気づかせるために、わざと冷たくしたの?」 彼は優しい。そのような行動をとっても不思議ではなかった。    その問いに、ヘンリーはくすっと笑う。「まあ、それもあるけど……。  僕は、この世界の人じゃないから、かな。  いずれ僕は消えてしまう。一生、流華のそばにはいられない。だったら、君の隣にいるのは、ずっとそばにいられる龍の方がいいって思ったんだ。  僕が冷たくすれば、君はきっと龍に向かう。そう思ったからあんな態度を取ったんだ。  ごめんね……でも」 急に、ヘンリーの瞳が熱を帯びた。「もしも、僕がずっと一緒にいられるなら……こんなことはしないっ。  絶対に君を、他の男になんか渡さない!!  ……君が龍を好きでも、僕は奪い取ってみせる」 その強い眼差しに、心臓が跳ね、苦しくなる。  彼の想いが、ぶつかってくるようだ。 ドクンドクンと鼓動が速まる。「……君を、愛してる。本当に大好き、ず
last updateDernière mise à jour : 2025-08-20
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【第1部】 第50話 別れ

「お嬢! 中村さんの意識が戻ったそうです!」 突然の大声に驚き、私は思わず声の方へと振り向いた。 縁側から険しい表情でこちらを見つめているのは――龍。  肩で息をしながら、必死に何かを訴えようとしている。「龍っ!? なんで、あなたがここにいるのよ!」 混乱しながらも、私は駆け寄っていく。「まだ退院じゃないでしょ? 体は大丈夫なの?」 ついさっきまで、病院のベッドに横たわっていたはずだ。  一歩間違えれば命を落としかねない重傷を負っていたのに。 なぜここに? 龍の前に立ち、隅々まで彼の体をチェックしていく。  多少疲れは見えるが、息が少し上がっている程度で大きな問題はなさそうだ。 ほっと胸をなでおろす。 私が心配そうに彼の腕に触れると、龍は気まずそうに微笑んだ。「すみません、一刻も早くお嬢に伝えたくて……気づいたら病院から抜け出していました」 龍の体がふらりと揺れる。  私は慌てて彼の体を支え、睨み付けた。「もう……無理して……バカ」 中村透真の意識が戻った――  それを一刻も早く私に伝えたかったのだ。 本当に、いつも私のことばっかりなんだから……。 彼のまっすぐな想いに、胸が熱くなる。  心配よりも、愛しさが溢れていく。 その気持ちのままに、私はそっと龍を抱きしめていた。  すると、龍も強く抱きしめ返してくれる。「いっつも龍は、僕の邪魔をするよね」 ふと、そばで声がした。    振り向くと、いつの間にかヘンリーが私たちの近くにいた。  その表情はあきれ顔だ。 はあっと大きなため息を吐いたあと、ヘンリーが龍を見つめた。 二人の視線が交差した直後、ふっと笑い合った。 その笑みには、皮肉も混ざっていた。  しかし、それ以上にお互いを認め合っているような、そんな感情がそこにはあるように感じられた。 
last updateDernière mise à jour : 2025-08-21
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【第1部】 第51話 帰っちゃった……

 ヘンリーが消えたあと、私はシャーロットとアルバートを探した。  しかし、どこを探しても二人の姿は見当たらなかった。 きっとヘンリーと一緒に、元の世界へ帰っていったのだろう。 なんとも不思議な話だけれど、そうとしか思えなかった。 「みんな、帰っちゃった……」 その夜、縁側に座りながら月を見上げ、そっとつぶやく。 騒がしかった日々が嘘のように、家の中は静まり返っていた。 時折、まだヘンリーたちがいるような気がして、振り返ってしまうことがある。  それだけ、彼らはもう私の日常の一部だったんだ、と思い知らされる。 想いを馳せるように、月をじっと見つめる。 隣に座る龍が、慣れない手つきで私の肩をそっと抱き寄せた。  その温もりに包まれながら、私は幸せを噛みしめ、そっと目を瞑った。 脳裏に、ヘンリーたちの顔が浮かんでいく。「……きっと忘れない。ヘンリーたちは、私の心の中でずっと生き続けてる」 「そうですね」 龍は優しい笑みを浮かべ、私を見つめる。  その穏やかな表情を見ながら、自然と笑みがこぼれた。  龍は、病院から抜け出してきたあと、そのままこの家に居続けることを選んだ。 戻るよう言うが、龍は頑なに拒否し、私の傍にいると言い張った。  彼いわく、自分は頑丈で回復力も尋常ではないから大丈夫、だそうだ。 あとは、家で安静に過ごしていれば問題ないと、自分の意志を曲げなかった。「そんなに、私と離れたくないの?」 冗談交じりに問うと、龍は顔を真っ赤にして恥ずかしそうに頷いた。 キュン……胸が高鳴った。  何、その反応!  心の中で思わず突っ込んでしまう。 龍って、ギャップがすごい。  普段は冷静沈着で仕事のできるクールな男って感じなのに、私の前ではヘタレになったり、まるで乙女のような反応をする。 まあ、そこが可愛いんだけどね。 その後、誰か
last updateDernière mise à jour : 2025-08-22
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【第1部】 第52話 命の恩人、そして①

 学校が終わると、私は改めて中村透真に会いに病院へ向かった。 彼にも、どうしても話しておかねばならないことがある。 いつものように、龍は病室までついてくると扉の前で待機する。  不安げに龍を見つめると、彼は優しい眼差しを向け力強く頷き返してくれた。 うん、大丈夫。  私はしっかりと頷き返す。 病室の扉をノックすると、中から返事がした。 なんだか緊張する。  あの日、彼に助けてもらってから、意識がある状態で会うのはこれが初めてだ。「失礼します」 私は大きく深呼吸し、病室へと足を踏み入れた。 ベッドの上には、優しい笑みを浮かべる中村透真の姿があった。  彼の視線は私へとまっすぐに向けられている。 彼を見た瞬間。  心臓が跳ね、思わず足が止まった。 やっぱり、ヘンリーに似てる……。 私を助けてくれた命の恩人。そして、ヘンリーの生まれ変わり。「やっと、会えたね」 中村透真が嬉しそうに笑った。 なんだか……ヘンリーに言われているような気がして、胸が締め付けられる。  落ち着け、自分。 私は深呼吸してから、ゆっくりと彼の側へと歩みを進めた。「あ、あの、助けてくれてありがとう……ずっとお礼を言いたかった。  もう、体は大丈夫?」 緊張しながら、おずおずと彼に尋ねる。  すると、中村透真はニコッと可愛く微笑んで、元気だとアピールするようにガッツポーズをする。「うん、心配いらない、元気だよ。  でも……なんだか、長い夢を見ていたんだ」 「夢?」 ゆっくりと頷き、私を見つめ、彼は懐かしむような顔をする。「僕は王子で、隣国の姫に恋をした……」 中村透真は思い出を語るように、夢の内容を聞かせてくれた。 その話は、まさしくヘンリーと私の前世そのものだった。  もちろん彼の前世でもある。 もしかして、彼はヘンリーが現れ
last updateDernière mise à jour : 2025-08-23
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【第1部】 第52話 命の恩人、そして②

「あの、そのことで、あなたに話さなくちゃいけないことがあるの。 信じられないような話だけど、どうか聞いて欲しい」 私は意を決して、これまでに起きたヘンリーたちとの不思議な出来事を話していく。 彼は驚きながらも、黙って私の話を最後まで聞いてくれた。 話を聞き終えた彼は、ただ茫然と前を見つめている。「そんなことが……本当にあるなんて」「信じられないよね。私も自分の身にこんなことが起こるなんて、思ってなかった。 でもこれが真実なの。 透真君の気持ちは嬉しいけど……その気持ちは、前世からくるものなのかもしれない」 中村透真は俯き、しばらく考え込む。 そして、もう一度顔を上げた彼は私を見つめる。その顔が、ヘンリーの面影と重なった。  愛おしげに見つめるその表情……やっぱりそっくりだ。「この気持ちが前世のものなのか、僕のものなのか、本当のところはわからない。 ……でも、君を愛おしいと思う気持ちに変わりはないよ。 前世で幸せになれなかったのなら、今世で幸せになってはいけないの?」 中村透真は、懇願するような表情と瞳を向けてくる。 やめて、そんな風に見つめないで! ヘンリーにそっくりな顔と声と瞳で……。 私の中の何かがドクンドクンと苦しげに呻いた。 それに必死に抗いながら、拳を握りしめる。「っごめんなさい……私、好きな人がいるの。 ヘンリーやあなたのことはもちろん好きだけど、それ以上に好きな人。 如月流華として、愛する人ができた。 透真君にも、これから先そういう人ができるかもしれない。 前世の想いのせいで、その人への気持ちに気づけないのは……駄目だから」 私は誠心誠意、今の自分の気持ちを彼にぶつける。 前世の想いは、強力だ
last updateDernière mise à jour : 2025-08-23
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【第1部】 第53話 遠く離れても……①

「ヘンリーたち、元気かなあ」 夜空の星を見上げながら、私はふとつぶやいた。 この世界とヘンリーの世界は繋がってはいないけれど、夜空に輝く星を眺めていると、想いは繋がっているような気がしてくる。 つい懐かしくて、ヘンリーたちの顔が頭の中に蘇った。 私のお気に入りの場所、縁側。 大きく伸びをして、空気を胸いっぱいに吸い込む。 気持ちがよくて、大きく長い息を吐いた。 龍が用意してくれたお茶を一口飲む。 温かくてほっとする。心も安らいでいくようだ。 はあ、幸せ。「あの人たちなら、きっと元気ですよ。 いつも煩いくらい騒々しい人たちでしたから」 隣に座っている龍が私に微笑みかけ、一緒に夜空を見上げる。 月明りに照らされた龍は、なんだか色気があって……その横顔にまた見惚れてしまう。 その視線に気づいた彼が、こちらを向く。 視線が交わった途端、慌てた様子で咳き込んだ。「お嬢、そんな見つめないでください……恥ずかしいので」 真っ赤になってしまった龍に、今度は私が噴き出す。「龍ったら、本当に見た目によらず乙女だねえ。可愛い」「なっ!」「あ、これ褒めてるんだよ。私だけに見せてくれる龍、嬉しいから」 私が可笑しそうにケラケラ笑うと、龍はたじたじという顔をしながら目を泳がせた。 愛しい人……私の王子様。 やっと気づけた、この気持ち。 嬉しくて、目を細めながら龍を愛おしく見つめる。「お嬢……その顔は反則です」 龍は顔を真っ赤にしながら、何かに耐えるように苦しげに眉を寄せた。 え? 私どんな顔してたの? 恥ずかしいっ。 顔が熱くなる。 きっと私も顔が赤くなっているに違いない。 恥ずかしくなってきて、私は龍から顔を背けた。
last updateDernière mise à jour : 2025-08-24
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【第1部】 第53話 遠く離れても……②

 時は遡り、十九世紀後半―― 場所はイギリス。 王宮内にある一室から、王子の嘆きが響き渡っていた。「あーあ、つまんないっ」 ヘンリーはムッとした表情をしながら、やわらかそうなソファーにドカッと座る。 広い部屋には大きなベッド、豪華な机とソファー、いくつかの本棚が備え付けられている。 床に散乱しているのは、大きな動物のぬいぐるみたち。 これはヘンリーが寂しくないようにと、アルバートが配慮し用意したものだった。「ヘンリー様、いつまでもそのような態度ばかり……いい加減、大人になってください」 散らかった部屋を片付けながら、アルバートが辟易した様子でヘンリーに声をかけた。 流華と別れてから、ヘンリーはずっとこんな調子だ。 以前のように笑うことも減り、いつもつまらなそうな表情を浮かべている。 アルバートにはその理由がわかっていたが、ヘンリーのためにも流華のことを忘れさせようとしていた。「そうだ、ヘンリー様。 今日もシャーロット様が遊びに来る予定ですよ」 アルバートが嬉しそうな微笑みをヘンリーに向ける。「ふーん、あ、そう」 ヘンリーは相変わらずな仏頂面だ。 その様子に、アルバートは大きなため息を吐く。 持ってきたある物をヘンリーに見せつけながら言い聞かせた。「シャーロット様がお嫌なのでしたら、こちらの方はどうですか?」 それはお見合い写真だった。 とても綺麗な女性がにこやかな表情で映っている。 かなりの美少女だ。 そんじょそこらの町娘とは格が違う。 綺麗で艶やかで色気もある。王家に相応しい気品と美しさを兼ね備えた女性。 近隣諸国のどこかの姫らしい。 普通の男なら大喜びするだろう、しかし……。 アルバートはこっそり、ヘンリーの態度を観察する。 写真をちらりと見たヘンリーはすぐに顔を背けた。「&h
last updateDernière mise à jour : 2025-08-25
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