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お嬢!トゥルーラブ♡スリップ のすべてのチャプター: チャプター 71 - チャプター 80

159 チャプター

【第1部】 第37話 観覧車、すれ違う想い②

「あ、もう着きます。お嬢、今日はありがとうございました」 ニコリと微笑み、軽くお辞儀する龍。 次の瞬間、観覧車のドアが開いた。  扉の外では係員が身振り手振りで私たちへ合図を送っている。 龍は立ち上がると、私に向けて手を差し出した。  私はその手を取り、龍を見つめる。  いつもの優しい微笑み。 先ほどの違和感は何だったのだろう、気のせいだったのかな。 私は龍に促されるまま、ヘンリー達が待つ地上へと降りた。 「流華!」 観覧車から降りると、ヘンリーが私におもいっきり抱きついてきた。「勝手にいなくなったら心配するでしょ、待っててって言ったのに」 少し頬を膨らませ、眉を寄せたヘンリーが私を見つめる。 あれ? 貴子には知らせたつもりだったんだけど、さてはヘンリーには伝えなかったな。  と横目で貴子を見つめる。が、彼女は不機嫌そうに私を見つめているだけだった。「ごめん、ごめん。たまには龍と二人でお話したかったの」 「ふーん、何話してたの?」 「ん? 別に。いつも通り」 私の返答に、なんだか納得していない様子のヘンリーが複雑そうな顔をする。  いったい何を勘ぐっているのやら。「ヘンリーを私に押しつけて、流華は龍さんと楽しんできたんだ?」 なぜか貴子までもが、すごく不愉快だというような顔でこちらを睨んでくる。「いや、押しつけてないって。  貴子とヘンリーはジェットコースターが好きで、私と龍は観覧車が好きだったってだけだよ」 私は二人の気持ちを落ち着けようと言い聞かせる。  予想以上の二人の剣幕に、私はたじたじだ。「ま、いいけど。……勝手な行動はしないでよね」 拗ねた子どものような表情で顔を背ける貴子。  なんだか、小さい子どもを宥めている親のような気分になってきた。 ま、そこも可愛いんだけどね。  二人とも、嘘がなくて正直で、憎めない。
last update最終更新日 : 2025-08-03
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【第1部】 第38話 指輪①

 今度は、ヘンリーと二人きりの観覧車。 ヘンリーは私の横にピタリと張り付き、ウキウキとした様子で窓の外を眺めている。 私のすぐ隣に座る彼は、座席のほぼ中央に座ることになってしまい、景色を眺めるのにはちょっと不便そうだった。  首を伸ばしながら外の景色を眺めている。「流華と二人きりで、こんな綺麗な景色を眺められるなんて。  観覧車っていいね、僕大好き!」 無邪気な笑顔のヘンリーに、私の心も温かくなる。「ヘンリー、それじゃあ、景色よく見えないでしょ?」 「いいの! 流華が眺められるから」 「それじゃあ、観覧車の意味ないじゃない」 なんだかなあ、もう……。と、ため息をついた私の手を、突然ヘンリーがきつく握りしめてきた。  私は驚いてヘンリーを見つめる。  潤んだ熱い眼差しを向けられ、ドギマギする。「流華、もう君と離れたくない。  長い時を経て、こうしてやっとまた君に会えた。絶対にこの手を離したくはない。  でも、でもね……」 ヘンリーが珍しく真剣な表情になり、その眼差しは鋭く私の瞳を射抜いた。  彼の真剣な想いがひしひしと伝わってくるようで、私は息を呑む。 そして、ヘンリーはゆっくり口を開くと静かに告げる。「あの青年が目覚めたら……僕は、消えると思う」 心臓に針が刺さったみたいに、ズキンと痛む。 私自身そう思っていた、あの日から。  彼がヘンリーの生まれ変わりだとわかったあの時。 それは、私が今、一番恐れていることでもあった。「同じ人間が、二人同時に存在しているなんておかしいよね。今は彼が眠っているから、僕はなんとか存在しているけれど。彼が目覚めれば、僕は……。  考えると恐くて、夜も眠れない」 そう、普通に考えれば、同じ魂の二人が同時に存在することはあり得ない。  だとしたら……消えるのはこの時代の住人ではない、ヘンリーの方だ。 その時は必ずやってくる。 ヘンリーは俯き、震えてい
last update最終更新日 : 2025-08-04
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【第1部】 第38話 指輪②

 ヘンリーがそっと箱を開けた。 白いふわふわクッションの真ん中に鎮座しているのは、輝く指輪。 リングの中央には、光り輝くダイヤモンド……って、これは本物ではないよね? そんなもの買うお金なんて、ないだろうし。 私が不思議そうに指輪を見つめていると、ヘンリーが笑った。「へへっ、さすがに本物のダイヤは買えなかった。ごめん。 でも、僕の流華への愛は変わらないから」「え……これって」 戸惑いながらヘンリーを見つめると、優しく笑った彼が愛しそうに私を見つめ返してくる。「これは、僕の気持ち。 ……流華に内緒で大吾の手伝いをしてたんだ。知らなかったでしょ? それでお小遣いをもらって、流華へのプレゼント買ったんだ。 これが今できる僕の精一杯。 僕から流華へ……受け取って」 ヘンリーは指輪を手にすると、もう片方の手で私の左手を取る。 胸の高鳴りは、最高潮に達していた。 ゆっくりと指輪が私の薬指へとはめられていく。 指に収まったその瞬間、どんっと衝撃が走る。 何かに突き動かされるような、体中を何かが駆け巡っていくような感覚。 私の脳裏に過去世の記憶が走り抜けていった。 膨大な量の映像が一気に駆け抜けていく。 それは前世の遠い記憶たち。 私がずっと忘れていた大切な記憶。 二人が愛し合った日々。「流華、どうしたの?」 突然固まり硬直してしまった私を、ヘンリーが心配そうな表情で覗き込んでくる。 思い出したすべての景色、感情、思い出。 それらで胸がいっぱいになり、熱い想いが体中を駆け巡っていった。 私は涙の溜まった瞳をヘンリーに向けると、震える声を必死に抑えながら言った。「私……思い出したよ。過去の記憶」
last update最終更新日 : 2025-08-04
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【第1部】 第39話 突然の異変

 幸せは束の間、とはよく言ったものだ。  次の日から、私の幸せはあっけなく崩れ去ってしまった。「おはよう、ヘンリー」 「……おはよ」 満面の笑みを向ける私の横を、真顔で通り抜けていくヘンリー。「へ?」 あっけに取られた表情で、私はヘンリーを見つめる。 え、どうしたの? なんで?  いつもなら嬉しそうに抱きついてくるのに。「ヘンリー? どうしたの、具合悪い?」 私は急いでヘンリーの後を追う。「別に、元気だよ。あ、おはよう、シャーロット」 先ほどの暗い表情はどこへやら、優しい笑顔のヘンリーがシャーロットの方へ近づいていく。「まあ、おはようございます! ヘンリー様、今日はご機嫌がいいんですね」 声をかけられたシャーロットは、それは嬉しそうに可愛らしい笑みを見せた。 機嫌がいい? ヘンリーが?  それ、反対だよね。 私は心の中で毒づく。「シャーロット、今日も可愛いね」 さらっと殺し文句を言うヘンリー。  その笑顔は、なんだかいつもと違った作り笑いのような印象を受けた。「え! そんな、ヘンリー様ったら」 いつもならあり得ない賛辞の言葉に感激したシャーロットは、真っ赤な顔でその場に崩れ落ちていく。  嬉し過ぎて、腰が抜けてしまったようだ。「シャーロット様!」 驚いた様子のアルバートが彼女を後ろから支え、ヘンリーを訝しげに見つめた。「ヘンリー様、どうされたのですか?」 「何が?」 ヘンリーは何ごともなかったかのように、朝食が用意されている居間へと向かう。  アルバートが私に向かって何かを問いたげな視線を向けてくる。「おはようございます、お嬢」 突然後ろから声をかけられ、振り返る。  そこには、いつも通りの笑顔を向ける龍がいた。「あ、お、おはよう」 「どうかされましたか?」 私の様子が
last update最終更新日 : 2025-08-05
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【第1部】 第40話 大切な親友①

「はあー、疲れる」 青空の下、それに似つかわしくない言葉を吐いた私を、貴子が怪訝そうな顔で覗き込んでくる。「ね、あんたたち、変じゃない?」 昼休み。  いつものように貴子と二人、屋上でランチタイム。  私はお弁当を広げたが食べる気になれず、もう一度お弁当の蓋を閉めると重いため息を吐いた。「貴子にも、わかるよね?」 疲れ切った私は、横目で貴子を見つめる。すると、彼女は深く頷き返してきた。「うん。ヘンリーがあんたに近付いて来ないなんて、異常事態よ。  それに、なんだかシャーロットとベタベタしちゃってさ……いったいどうしたの?」 興味津々という様子で、貴子は目を丸くして私に顔を近づけてくる。  頬を膨らませた私は、ギロッと貴子を睨みつけた。「知らないよっ! こっちが聞きたい!  今朝から、ヘンリーが私にだけ冷たいの。……昨日までは、いつも通りだったのにさ」 激しい怒りを滲ませながら顔を伏せた私は、その勢いのまま貴子に事情を説明していく。 観覧車では、お互い想いを伝え合い、愛を誓い合ったこと。  昨日まで普通だったのに、今朝からいきなりヘンリーの態度が“私にだけ”冷たくなったこと。 ここぞとばかりに、私は溜まっていた鬱憤をぶちまけた。 真剣に耳を傾けていた貴子が、納得したように頷いている。「ふーん、なるほどねえ。ヘンリーには、何か考えがあるのかも」 「考え? どんな?」 「それは、流華が考えないと駄目だよ」 「何よ、ケチ」 貴子は何かに気づいたようだったが、それを私には教えてくれなかった。 確かにヘンリーのあからさまな態度の変化には、違和感を感じる。  何かあるのかもしれない。 しばらくの沈黙のあと、貴子が口を開いた。「ねえ、ちょっと聞きたいんだけどさ……流華は龍さんのこと、どう思ってるの?」 探るような瞳を向けながら、おかしなことを聞いてくる貴子。  私は少々不思議に思いなが
last update最終更新日 : 2025-08-06
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【第1部】 第40話 大切な親友②

「龍は……すごく、安心するかな。  傍にいてくれるだけでいい。いつも一緒にいるからそれが当たり前みたいな。  ずっと家族として暮らしてるし、今さら恋愛対象とかには見れないっていうか、考えたことなかった」 「ふーん。でもさ、龍さんが誰かのものになったら嫌じゃない?  急に流華のもとから居なくなったら、どうする?」 貴子がニヤニヤと私を見つめてくる。 龍が誰かのもの? いなくなる?  そんなこと、考えたこともなかった。  だって、龍はいつも私の傍にいて、これからもずっと一緒で……。 ふと、龍の隣で知らない女性が微笑んでいる姿を想像してしまった。  なんだか、すごーく気持ちが重たくなってきて、胃がムカムカしてくる。「……すごく、気分悪い」 「それって、嫌ってことじゃん」 貴子が嬉しそうに、してやったりという顔でニヤッと笑う。  私はわけがわからず、眉を寄せ貴子を見つめ返す。「流華は、鈍感だよねえ。他人の気持ちにも、自分の気持ちにも」 なぜか勝ち誇ったような表情を向ける貴子に、悔しい気持ちが湧いてきた。「それ、馬鹿にしてる?」 「ううん、別に」 貴子がうーんと伸びをする。  そして、爽やかな笑みを私に向けると、衝撃の言葉を発した。「ね、私……龍さんのこと、好きなんだ」 予想もしなかったとんでも発言に、一瞬時が止まった。  私はいったんフリーズしたあと、再起動する。「えっ! そうだったの!?  そういえば貴子、龍によく絡んでたもんね」 思い返せば、龍の話をするとき、貴子の瞳は輝いていたかもしれない。  龍がいるとよく話しかけてたし。 でも、好きだったなんて……まったくわからなかった。 貴子が龍を好き。龍が貴子を好きなら、どうなる? チクッ。 あれ? なんだか胸が……痛い?「あれ、あれ? どうしたのかな、胸が痛い?」 「え! なんでわかるの」
last update最終更新日 : 2025-08-06
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【第1部】 第41話 本当の気持ち①

 貴子の意図がわからないまま、私は下校の時間を迎えた。 なんだろう、モヤモヤしてすっきりしない。 先ほど、ヘンリーはシャーロットと一緒に帰ってしまった。  こんなことも初めてだ。  今までずっと一緒に帰ってたのに。 あからさまに、ヘンリーは私のことを避けている。  学校を出た私は、いつもの道を一人とぼとぼと歩いていく。 門を出て、道なりに歩いていくと、龍が待っている路地へと辿り着く。「お帰りなさい、お嬢」 いつもの場所で、いつも通り優しい笑顔の龍が迎えてくれる。  その風景に、なんだか胸がジーンとした。 ほっとして、私の目に涙がうっすらと滲んでいく。「お嬢……」 龍が心配そうな表情で、私を見つめてくる。  いけない、また心配させてしまう。私は必死に笑顔を作った。「さ、帰ろう、龍」 素早く龍の側を通り過ぎようとする。  しかし突然私の手が龍の手によって捕まってしまった。  ぎゅっと強く握りしめられる。「え? 龍……」 驚いた表情で龍を見つめると、次の瞬間、大きな体がそっと私の体を包み込む。  あたたかな体温が私をすっぽりと覆いつくした。 トクン……。  心臓が、軽やかな音を奏でる。 龍の鼓動と息遣いが近くで聞こえ、ドキドキする。「無理に笑わないでください、泣きたい時は泣いていいんです。  私の前では、嘘をつかなくていい……私はあなたの味方ですから」 龍の声が私の心にすっと沁み込んでくるようだ。心が温かくなって安心する。  ほっとする、この感覚。    龍と一緒にいると、すべて大丈夫な気がしてくる。  悲しみも、不安な心も、龍には何でもわかっちゃうんだね……。「龍、ありがと。もう大丈夫、帰ろ」 私はそっと龍の腕から逃れた。 なんだか、急に肌寒く感じられ……そんな自分のことがわからなくて、戸惑う。
last update最終更新日 : 2025-08-07
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【第1部】 第41話 本当の気持ち②

 いったい私はどうしたっていうの?「なんなの~っ」 頭を抱え、湯舟に頭を沈める。 帰った私は、頭の中を整理するため急いで風呂へと駆け込んだ。 しかし、風呂に入ったからといって、悩みが解決するわけもなく……。 湯舟に浸かりながら、先ほどの私の醜態に頭を悩ませる。 ヘンリーの態度の変化で、きっと心が不安定になっているんだ。 そこへ貴子が変な勘ぐりを入れてきて、さらに龍が優しくしてくるもんだから。 自分の気持ちがわからなくなっているんだ。 そう、きっとそうだ。 私が好きなのは、ヘンリー。 前世からずっと好きで、待ち望んでいた人。 心が求め、愛している人。ずっと一緒にいたい、離れたくない人。 ……でも、これって私の感情なのかな? 如月流華が、心から望んでいる? もしかして、貴子が言う様に、前世の姫の気持ちがそうさせているってことはないの? わからない、わかんないよ! むしゃくしゃする感情をぶつけるように、私はおもいきり水面を叩いた。 頭上に飛び散った水しぶきが私を濡らしていく。 はあ~っと大きなため息をつき、天井を見つめ考えにふける。 ヘンリーに感じているこの感情は、流華、あなたのもの? それとも私の前世である姫、あなたのもの? じゃあ、龍へのこの気持ちは? 貴子に言われるまで考えたこともなかったけれど、改めて龍のことを想った。 そしたら、龍のこともとても大切で、ずっと一緒にいたいし、離れたくない。ということがわかってしまった。 龍が誰かを好きになって、私のもとから離れていくって想像したら……心が苦しくなる。 心が疼いて、お腹の辺りがずしんと重くなって、気分が悪い。 それに……龍には、ヘンリーにさえ感じない安心感を感じる。 隣にいてくれるだけでほっとするっていうか。
last update最終更新日 : 2025-08-08
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【第1部】 第42話 気になる想い①

 お風呂からあがった私はのぼせた身体を冷ますため、お気に入りの場所である縁側に腰をおろした。 風が体を撫でていき、のぼせた体を冷やしていく。 何気なく空を見上げると、ほんのりと明るい空に、一番星が光り輝いているのが見える。「お嬢、お水をどうぞ」 私の目の前に、そっとコップが差し出される。 振り向くと、優しい眼差しを向ける龍と目が合った。 欲しいと思うものを先回りして用意してくれる龍。 こういうところも、当たり前で何も思っていなかったけど、本当にありがたいことなんだよね。としみじみ感じる。「ありがと」 龍からコップを受け取ると、私は水を一気に飲み干す。 のぼせたせいか、結構喉が渇いていたらしい。「もう一杯持ってきましょうか? 今日はいつもより喉が渇いておられるようですね」「え、ええ。そうね、お願い」「かしこまりました」 水を取りに戻る龍の背中を見つめる。 その大きくたくましい背中に……頼りになる男の背中に、視線が離せなくなった。 はっ、何を! やだ、いったい私どうなっちゃったの? これじゃあ恋する乙女モードの思考みたいじゃない! 私は恥ずかしくなってきて、手で顔を覆い、俯いた。  しばらくして、龍が水を持って戻ってきた。「隣、いいですか?」「うん……いいよ」 龍はそっと私の隣に腰を下ろす。 さりげなく間を空けて。 これも龍が徹底して守っている私との距離。彼の心遣いが感じられる。 龍が何かを思い出したようにクスッと笑い、私に尋ねてきた。「先ほど、お風呂で何を叫んでいたのですか?」「え!? えーと、別に、なんでもいいでしょっ」 私は誤魔化すように、龍からコップを奪い水を飲み干した。 龍のことで悩んでたなんて、言えるわけがない。 私がそっぽ向くと、
last update最終更新日 : 2025-08-09
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【第1部】 第42話 気になる想い②

 龍は静かに立ち上がると、ゆっくりと私に近付いてくる。 そして、触れ合う程の距離からそっと見下ろされた。 彼の背は高く、近くで見つめ合うとどうしても身長差が目立つ。 私はぐっと顔を上げ、龍のことを見つめた。 すると、彼の切ない表情と揺れる瞳が、私の心をわしづかむ。「私がこのことでとやかく言うのはどうかと思い、ずっと我慢しておりました。 しかし……お嬢が辛そうにしている姿を見るのは、辛いです。 私にできることは、お嬢の本心をお聞きし、心のままを受け止めること。 泣き言や愚痴など、溜まっている感情は私にぶつけてください。溜め込むのはよくありません。 私ならいくらでも受け止めます。何を聞いても受け止めますし、誰にも言いません。私の心に留めます。 好きなだけ私にぶつけてくださって構わないので。 ……だから、我慢しないでください」 その真剣な眼差しから、彼の想いがひしひしと伝わってくるようだった。 すごく心配してくれている……それは、きっとヘンリーのこと。 ヘンリーの態度の変化に、私が傷ついていると思っているのだ。 それは確かにそうだが。今悩んでいるのは別のこと。 龍、あなたのことだよ。 私がこれだけ悩んでいるのに、あなたは私のことで悩んでないの? いったい私のことはどう思っているの? あなたの気持ちが知りたいよ……。「どうされました? そんな恐い顔をなさって」 そう言われはっとする。 私、恐い顔してた? い、いかん。「……なんでもない。あんたのせいよ」 私が龍をじとっと見つめた。 なんのことか自覚のない龍は、ただ戸惑うだけ。 「は? 私ですか? 私がお嬢に何か失礼をしてしまったのでしょうか」 急にオロオロと慌て出した龍が、私を心配そうに見つめてくる。
last update最終更新日 : 2025-08-09
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