日が沈みかけているのか、窓から赤い夕陽が部屋に差し込んでいた。 いったい今、何時なんだろう。 あれから、私はずっとベッドの上だった。 動く気にもなれず、何も考えたくない。 もう何度目になるのかわからないため息が、またひとつ口からこぼれ落ちた。 ……龍。 いつも私のことを一番に考え、彼にできる最上級の優しさと愛を注いでくれた人。 どんな時も隣に寄り添い、見守り、支え続けてくれた―― 大好きな、龍。 たくさんの思い出が、ひとつひとつ蘇っていく。 彼の笑顔を思い出した途端、私の目にまた涙が溢れた。 ……傷つけてしまった。 優しい彼が、あんな行動を取るなんて。 でも、嫌だったわけじゃない。 ただ、悲しかった。 そこまでさせてしまうほど、彼を追い詰めていたことが、 ショックだった。 激しい感情をぶつけなければならないほど、彼の胸は張り裂けそうだったんだ。 それほど苦しんでいたことに、私は気づいてあげられなかった。 今もきっと、龍は自分を責め、苦しんでいる。 だって……龍は優しいから。「ごめんね、龍……ごめん……」 涙がまたひと筋、頬を伝っていく。 早く、あなたに会いたいよ――。 そのとき、玄関のチャイムが鳴った。 心臓が、一気に波打つ。 まさか……。 脳裏に浮かんだのは、龍の顔だった。 私はふらつく足取りで自室を出て、一階へと降りる。 速まる鼓動を抑えながら、玄関へ向かった。 人の話し声が聞こえてくる。 期待と不安が入り混じり、胸が痛いほど高鳴っていく。 私はそっと玄関の様子を覗き込んだ。 そこにいたのは、 祖父と話している、ヘンリーと貴子の姿だった。 ……なんだ。 期待が一気にしぼんでいくのがわかる。
Last Updated : 2025-09-30 Read more