私が冷静さを取り戻したころ、貴子はしれっと事情を根掘り葉掘り聞いてきた。 このパターン、お約束だよね。 ま、今さら貴子に隠したって仕方ない。 私はこれまでの経緯を話すことにした。 あれからずっと龍とは気まずいまま。 そして……それにつけ込まれ――ていうのはヘンリーに悪いけど。 ヘンリーが暴走してしまったこと。 貴子は例のデートのことは知っているから、相川さんの説明は省略した。 どうせ、龍から聞いているだろう。「ふーん、なるほどねえ。 あんたもいろいろ大変だよねえ。ほんと、面白いわ」 辛い気持ちを吐き出すと、貴子はいつもの調子でニコニコと微笑みながら、私の頭を撫でてきた。 そんな彼女をあきれた目で見つめる。 ……貴子って、おじいちゃんに似てる気がする。 何事も楽しんでるっていうか、悩みさえ笑い飛ばす、みたいな。「他人事だと思ってるでしょ?」 じとーっとした目で貴子を見ると、彼女は心外そうに眉を寄せる。「何言ってんの? 流華のこと、心配してるわよ。だから今もこうして助けに来たでしょ? ヘンリーが流華を連れて行くのを見かけたから、あとをつけて来たのよ。 私が来なきゃ、まーたややこしいことになってたんだから!」 貴子に言われ、私ははっとし、落ち込んだ。 そう、また油断していた。 もし貴子が現れなかったら、ヘンリーにキスされていたかもしれない。 ……そんなことになったら、きっと、龍をもっと傷つけてた。 本当に……私、何やってるんだろう。 ずーんと下を向き、がっくりと肩を落とす。「もう、しっかりしてよね!」 貴子が少し怒ったように言う。「私だって、龍さんのことをあきらめたのは相手が流華だったからなんだよ! 二人はお似合いだと思ってたし、何より龍さんの想いはわかりきってたしね。 あの人は流華じゃなきゃダメなの。生きていけないの! そ
最終更新日 : 2025-09-23 続きを読む