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お嬢!トゥルーラブ♡スリップ のすべてのチャプター: チャプター 131 - チャプター 140

159 チャプター

【第2部】 第15話 完璧な彼氏?②

 そんなことを考えていると、相川さんがふいにこちらを向いた。  目が合い、にこっと笑われる。「どうしました? 僕に見惚れて」 その言葉に、顔がカッと熱くなる。「み、見惚れてなんかないです!  ……ただ、どうして私なのかなって思って。  あ、やっぱり祖父たちに遠慮してるんですよね?  私もそうなんです、困りますよね、勝手に決められちゃって。  それか、私みたいなのが珍しくて、ちょっと興味出たって感じですかね!」 恥ずかしさを隠すように、私は早口でまくし立てた。 言い終わったあと、相川さんはしばし呆気にとられたような顔をしていた。「はい?」 首を傾げながら、なんとも言えない表情で私を見る。「おじいちゃんたちに遠慮してるなら、そんなこと気にしなくていいんですよ!  私だって──」「……あ! あの子、迷子じゃないですか?」 突然話題を変えられ、私はびっくりして相川さんが指さす方向を見る。 そこには、小さな子どもが不安そうな顔でウロウロしていた。「相川さん、ちょっとすみません!」 思い立ったら即行動な私。  相川さんをその場に残し、迷子らしき子どもへと駆け寄った。  「大丈夫だよ、お母さんとはぐれちゃったかな?  一緒に探してあげるからね」 私は子どもの手を取る。  今にも泣き出しそうな顔で、必死に涙をこらえている姿に胸が締め付けられる。 あたりを見渡してみるけど、母親らしき人影は見当たらない。 どうしよう──。  このまま動かない方がいいのか、でも……。 迷っていると、隣から声が聞こえた。「しばらくここで待ちましょう。  もしかしたら、お母さんが戻ってくるかもしれません」 相川さんだ。  そう言って、子どもの頭を優しく撫でていた。 子どもはきょとんとした顔で相川さんを見上げ、そして、こ
last update最終更新日 : 2025-09-16
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【第2部】 第16話 迷子のキューピッド①

 十分ほど経った頃だろうか。  人並みの向こうから、相川さんがこちらへ駆けてくる姿が見えた。 人混みを巧みにすり抜けるその手には、ソフトクリームが握られている。 すっと私たちの前に立った相川さんは、ニコッと微笑みながら子どもの前でしゃがみこむ。「はい、どうぞ」 差し出されたソフトクリームを、子どもは目を輝かせて受け取った。「わあ、ありがとう!」 そして、大事そうに両手で持って、さっそく一口。  嬉しそうにほほを緩ませる。「相川さん、わざわざ買ってきてくれたんですか?」 私は驚きと同時に、その心遣いに感動していた。  気遣いのできる人だとは思っていたけれど、ここまでとは。 感心しながら顔を向けると、相川さんは静かに頷いた。「この子も心細いでしょうし。これで、少しでも気が晴れるといいのですが」 子どもを気遣うような優しい表情と声―― やっぱり、優しい人なんだな……と改めて彼のことを見直した。  それからさらに十分ほど経った。   「……勇也?」 不意に聞こえた女性の声に、はっと顔を上げる。 人混みの先で、ひとりの女性がこちらを見つめていた。  三十代くらいだろうか。 顔には安堵と喜びが入り混じったような表情が浮かんでいる。 女性は駆け寄り、子どもを力強く抱きしめた。「お母さん!」「心配したわよ……」 母子の感動の再会。 抱き合う親子を見守るうちに、自然と胸や目頭が熱くなる。 ああ、本当によかった。  しばらくして落ち着いたのか、母親が私たちの方へと向き直る。  目を潤ませながら、深々と頭を下げた。「本当に……ありがとうございました」 子どもも真似をして、ぺこりと頭を下げてくれる。「いえ、当然のことをしただけですから……」 どう返せばいいのかわからなくて
last update最終更新日 : 2025-09-17
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【第2部】 第16話 迷子のキューピッド②

 私が考え込んでいると、不穏な声が耳に飛び込んできた。「やめてください!」 目の前を歩いていた女性が、急に叫んだ。  その声に反応して顔を向けると、二人の男が彼女にしつこく声をかけているところだった。 ああ、ナンパか……。「ちょっと!」 口が勝手に動いていた。 しまった、と気づいたときにはもう遅い。 二人組のうち、特に目つきの鋭い方が、こちらへ向かって詰め寄ってきた。「なんだ? おまえ」 腕を組んで、睨みつけてくる。  でも、私はびくともしなかった。「その子、困ってるでしょ?」 顎で女性を指す。  男は鼻を鳴らし、不機嫌そうに私を見下ろした。 こういう輩、よくいるんだよねえ。  脅してくるだけで、たいして力も根性もない奴。 そんなのに私が怯えるとでも思ってるの?  もっと怖い連中を毎日見てるっての。慣れっこよ。「うるせぇよ! 関係ねぇだろ!」 男は怒鳴ると同時に、私に向かって手を伸ばしてきた。  でもその動きは遅い。 軽く体をかわし、男の手首を逆に取って捻り上げた。「いってぇっ!」 男の悲鳴を耳元で聞きながら、静かに囁く。「あんまりお痛してると、あんたが痛い目見るよ?」 男の目が、大きく見開かれた。  私がにこっと微笑むと、その顔色はさっと青ざめる。「す、すみませんっ!!」 あっという間に、男はもう一人の仲間を引っ張りながら、猛ダッシュで逃げていく。 ……あら? そんなに怖かった? 私は目をしばたたかせ、彼らの消えた方をぽかんと見つめた。「くっ……くくく」 隣で、肩を震わせながら相川さんが笑いをこらえているのが目に入る。 そんなにおかしいかな? すると、先ほど絡まれていた女性が、おずおずと私の前に立った。「あの、ありがとうございました。
last update最終更新日 : 2025-09-18
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【第2部】 第17話 失態、痛み①

「龍……なんで?」 私はわけがわからず、ぽかんと龍を見つめていた。  だが、すぐに我に返る。 その龍の後ろ、妙に気まずそうな顔をしたふたりの姿が目に入る。 しゃがみ込んで、ちらちらとこっちを窺っているのは――ヘンリーと貴子。 ……隠れているつもりなのだろうか。  物陰に身を潜めるように、ふたりして体を縮こませていた。 私はその様子を見て、納得した。 ああ、そういうことか。 何となく察しがついた私は、ゆっくりと頷き、そして問いかける。「私のこと、みんなでつけてたの?」 三人を順番に睨むように見つめていく。「えっと、お嬢、その……」 龍が、ひどく言いにくそうに口を開いた。  焦ったように手を動かしながら、気まずそうに視線を泳がせている。 ゆっくりと私の方へ歩み寄ろうとした、その瞬間。「っ来ないで!」 思わず声を荒げる。「……ずっと、あとをつけていたの? 人のデートに、内緒でついてくるなんて!」 私は予想していなかった事態に、心が乱されていた。  きっと、いつもより口調も、態度もきつくなってしまっている。 それがわかっていても止められなかった。 龍はひどくショックを受けたような表情で立ち尽くす。 私の顔をじっと見つめたまま、何も言わない。  悲しげに、その瞳が揺れていた。「まあ、いいじゃないですか」 突然、隣から柔らかな声がする。 相川さんが私の肩をそっと抱き寄せた。「皆さん、流華さんのことが心配だったんですよ」 そう言って、耳元で静かに囁く。「あなたは、これだけ皆から愛されている。  それほど、流華さんは魅力的だということです。……ね?」 視線を龍に向け、穏やかな笑みを浮かべる相川さん。  だが、龍の目はその笑みを真っ直ぐに睨み返していた。 互いに、どこか火花を散らすよう
last update最終更新日 : 2025-09-19
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【第2部】 第17話 失態、痛み②

「今、流華さんとの時間をいただいているのは僕です。  心配しなくても、私が責任を持って送り届けますから。みなさんはお帰りください」 その言葉に、三人は何とも言えない表情を浮かべる。  視線を逸らしたり、表情を歪めたり、気まずさ全開。 私自身も、何て声をかけていいのかわからず、ただ下を向いていた。 気持ちが整理できない。  このままじゃ、龍と顔を合わせても、きっと嫌なことばかり言ってしまう。 それだけは嫌だ。「……わかりました、帰ります」 重い沈黙を破るように、龍が口を開いた。「お嬢……本当にすみませんでした――またあとで」 背中を向けた龍に、私は何も返せない。  貴子とヘンリーも、それに続く。「流華……」「ごめんね。私も帰る。またね」 貴子は、ヘンリーの首根っこをつかんで、龍の後を追うように歩き出す。  ヘンリーは貴子に引きずられながら、ずっと私のこと心配そうに見つめていた。 三人が遠ざかっていく。 その背中を見送りながら、私は後悔していた。 龍は、私が心配でたまらなくて、ずっと見守ってくれてたんだ。  なのに私は、龍の気持ちも考えず、あんなひどいことを……。「流華さん、大丈夫ですか?」 相川さんがさりげなく私に手を伸ばしてきた。「……そうだ。帰りに、近くの公園に寄っていきましょう。静かで、いい場所ですよ」 その手に戸惑った私は、反射的に振り払ってしまう。「あ……ごめんなさい」 空気が一瞬、気まずくなる。  だが、相川さんはすぐに微笑んで言った。「いいえ。僕こそごめんなさい。無理させました」 その優しい眼差しに、また胸が痛んだ。「じゃあ、温かい飲み物でも奢ります。……自販機のですけどね」 冗談交じりに笑うその声は、いつもより穏やかだった。  きっと、気を遣ってくれているんだ。 私は返事をす
last update最終更新日 : 2025-09-19
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【第2部】 第18話 意外な一面①

 心の中のもやもやとざわめきが、まだ落ち着かない。  あのときの龍の顔が、何度も何度も頭に浮かんでは、消えていく。 はあ……私はいったい何をやっているんだろう。 また落ち込みそうになった、そのとき――「はい、どうぞ」 目の前に、ホットココアの缶が差し出された。  顔を上げると、にこやかに微笑む相川さんが私を見下ろしている。 その笑顔は、とても柔らかで優しくて……。  って言っても、何を考えているのかわからないけど。 もともとは龍と気まずくなったのだって、この人のせいなんだから。 私は戸惑いながらも、その缶をたどたどしく受け取る。「……ありがとうございます」 小さくつぶやくと、相川さんは「どういたしまして」と穏やかに答え、私の隣に腰を下ろす。  二人の間に流れる、静かな時間。 目の前の噴水をぼんやり眺めながら、私は黙り込む。  しばらく黙っていたが、それが不思議と苦痛ではなかった。 それは、きっと相川さんも、無理に何かを言おうとはしなかったからだ。 やっぱり、気を遣える人だな……それにやっぱり、優しい? やがて、静かに彼が口を開く。「……あの人が、流華さんの恋人なんですね?」 その言葉に、私の心臓がわずかに跳ねる。 龍のことだ。 思わず、ギュッとココアの缶を握りしめる。「えっ……あ、はい」 声が少し上ずってしまい、慌ててうつむく。「やっぱり」 相川さんは、嬉しそうに笑った。  それはどこか、含みのある笑顔に見えた。「実は……ずっと、誰かに後をつけられている気配はしてたんです」「えっ」「でも、まさか、彼だったとは思わなかった」 さらりとした口調で言いながら、その瞳はどこか鋭く光っている。 気づいてたんだ……私も、なんとなく変だとは思っていたけど。  それでも、まさか龍たち
last update最終更新日 : 2025-09-20
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【第2部】 第18話 意外な一面②

 唐突に、相川さんが伸びをする。  そして明るい声で言った。「しかし、彼がライバルだとは……余計に燃えますね」「えっ?」 私は反射的に相川さんを見つめた。 笑顔でさらりと恐ろしいことを……。 彼の考えが読めない。  なんで、そうなるの? 相川さんの思考回路がわからず、混乱する。「あの、私はさっきの彼……龍と付き合っています。  彼が好きです。別れる気もありません。だから、その……本当に勝手で申し訳ないんですけど」「それは困りました。だって、あなたに本気になってしまいましたから」 言葉を遮って、相川さんは静かにそう言った。 その目は穏やかなままなのに、真っ直ぐで、迷いがない。  冗談めかした口調でも、目は本気だと告げている。 え……何を言ってるの? 私は一瞬、フリーズした。  しかしすぐに再起動する。「いや、でも……無理なものは無理です。私は、龍が好きで――」「ええ、わかっています。でも、想い続けるのは自由ですよね?」 相川さんはさらりと言うと、口元に柔らかな笑みを浮かべた。「きっと、流華さんは……龍より、僕を好きになる」 目を細めたその笑みに、揺るぎない自信がにじむ。 どこまでも穏やかで、大人の余裕をまとったその微笑みが、かえって怖い。 なんて勝手な言い分だろう。  でも、この人はきっと、私が何を言ってもうまくかわしてしまう。  そんな気がする。 大人だ……でも、私は。 龍みたいに、子どものような可愛い一面がある人の方が。「あ、彼のこと考えてる」 唐突に、相川さんがそう言いながら私の頬をツンとつついた。「な、何するんですか!?」 思わずムッとして睨みつけると、相川さんは楽しげに笑った。 さっきまでの余裕たっぷりな笑顔とは、少し違っている気がした。  無邪気で、本当に楽しそう
last update最終更新日 : 2025-09-20
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【第2部】 第19話 気まずい関係①

 私を家まで送り届けた相川さんは、祖父にきっちり挨拶を済ませると、あっさり帰っていった。 最後に「じゃ、また」と笑顔で手を振っていたあたり、あきらめる気はさらさらなさそうだ。 ――はあ。  大きくため息をついた私の肩に、ずしりと重たい疲労感がのしかかってくる。「大きなため息をつきおって……相川さんとはどうじゃった?」 祖父が、まるで他人事のような顔をして訊いてくる。「もとはといえば、おじいちゃんのせいだからね」 じろりと睨みつけ、そっけなく言い放つと、そのまま祖父の横をすり抜けた。「どういう意味じゃ?」 ちらりと後ろを振り返ると、キョトンと目を丸くした祖父が、ノコノコと私のあとをついてきていた。 本当に、わかっているのか、わかっていないのか……。 台所に入ると、私は乱暴にコップを取り出し水を注ぐ。  そのまま一気に飲み干し、ドンッと音を立てて置いた。「おじいちゃんがどうしてもって言うから、お見合いもデートもしたんだよ?  なのに……っ、早く断っていれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに!」 思い出すたび胸が締め付けられ、気づけば目元がじわっと熱くなる。「……どうした? 何があった?」 さすがに祖父も真面目な顔になり、心配そうに眉をひそめた。 私はこらえきれず、今日あった出来事を話して聞かせた。 相川さんが私のことをやけに気に入ってしまったこと――  そして、龍にあんな酷い態度を取ってしまったこと。 話し終えたあと、祖父は眉間に深いしわを刻み、難しい顔をしてうつむく。 しばし黙りこくったあと、ふっと目を伏せ、ため息をついた。「……すまんなあ。そんなことになっておったとは。  真司くんがそこまでお前を気に入るとは、わしも想定外じゃった」 うなだれる祖父の姿は、いつもの調子とは違って妙にしおらしい。 しかし次の瞬間、ぱっと顔を上げたかと思うと、ニヤリと自信たっぷりの笑みを浮かべ
last update最終更新日 : 2025-09-21
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【第2部】 第19話 気まずい関係②

「っおじいちゃん!!」 私の怒鳴り声が廊下に響き渡り、祖父の肩がびくっと跳ねた。 けれど、その顔は――まさかの、満面の笑み。 ……いや、普通そこは謝罪の表情でしょ!?  なんで嬉しそうに笑ってるの!? 私の怒りはMAXだ。「ま、まあええじゃないか。  流華はモテモテじゃのう。龍がいて、ヘンリーや透真くんもおる、さらに真司くんまで。  わしの孫はモテるなあ! 鼻が高いぞ、ほっほっほ!」 あくまでご機嫌な祖父を前に、私は大きなため息をつく。 やっぱり、期待した私が馬鹿だった。 恋する乙女の胸の痛みなんて、この人にわかるわけがない。  そもそもおじいちゃんに、わかってもらおうっていうのが間違いだったのだ。「もう……いい。私が何とかする」 これ以上祖父に言っても無駄だと悟り、くるりと背を向ける。「人生、何事も楽しむのが一番じゃぞー!」 背中越しに聞こえてくるその声を無視する。 そんな余裕、ない。  今はただ、龍のあの表情が頭から離れなくて―― 私は、必死で気持ちを切り替えようとした。 憤慨したまま、鼻息荒く廊下を歩いていく。 頭の中は、ぐちゃぐちゃだ。  相川さんのことも、龍のことも……どうしたらいいのか、全然わからない。 そのときだった。 突然、目の前にスッと現れた人影。  台所から出てきた龍と、バッタリ、鉢合わせてしまった。「あ……」 足が止まった。 龍と目が合い、じっと見つめられる。 けれど、その目はどこか曇っていて。  いつもの穏やかさや優しさは薄れ、代わりに悲しげな色が浮かんでいた。「……お嬢」 切なげな声。  まるで懇願するみたいに。 心臓がギュッと締め付けられる。  顔を見ていられなくて、すぐに視線をそらした。 しばらく、お互いに黙ったまま。
last update最終更新日 : 2025-09-22
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【第2部】 第20話 親友という存在①

 いつもの教室。変わりのない風景。  けれど、私の心だけは、いつもと違っていた。 何度目になるかわからないため息を、またひとつ吐いた。 そのとき――「流華……ちょっといい?」 机に突っ伏していた私に、ヘンリーが声をかけてきた。 鬱屈した気持ちを抱えていた私は、声をかけられるのも正直億劫だった。  それでも、珍しく真剣な表情を向けてくるヘンリーに驚き、仕方なくその後ろについていった。  やってきたのは、学校の屋上だった。 気持ちとは正反対の、晴れ渡る青空の下。  私はヘンリーと向かい合う。「何?」 なんとなく、ヘンリーの言わんとすることは想像できていた。  だから、少し態度が悪くなってしまったかもしれない。 私を見つめる彼の瞳に、かすかに悲しみが揺れる。「ねえ、僕、あの男嫌いだな」 不機嫌そうな顔で、ヘンリーがぽつりとつぶやく。 あの男って……相川さんのことか。 やっぱり、その話か。  と、私は一気に憂鬱な気分になる。 今、そのことで言い争うのは避けたい。 私はヘンリーから顔を背け、投げやりに言い返した。「そう。別にヘンリーに好かれなくても、相川さんは平気だと思うよ」 ああ、まただ。  こんな言い方……最近こんなことばっかり。 私、ほんとに可愛くない。「流華、僕は……龍だから君をあきらめたんだ。  龍だから、君のことを任せられるって思えた。  でも、あんな男に君を取られるくらいなら、僕は……」 ヘンリーの声が震えた、その直後だった。  私は突然、彼に力強く抱きしめられた。 息が止まる。  あまりに突然の出来事に、頭がついていかない。 私はただ狼狽え、彼の腕の中で固まってしまう。「へ、ヘンリー!?」 久しぶりに感じる、彼の体温。  その温もりに包まれた瞬
last update最終更新日 : 2025-09-23
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