最初は少し抵抗があったものの…… ボートから見える景色に、心を奪われてしまった。 水面は穏やかで、ボートが進むたびにやわらかく波打ち、日光を反射してきらきらと輝く。 湖の周りには色とりどりの花々が咲き誇り、そよ風にゆらゆらと可愛く揺れる。 時折吹き抜ける風が木々の葉を揺らし、軽やかで心地よい音を奏でていた。 そして、どこからともなく聞こえてくる鳥のさえずり―― スワンボート、いいかも。 深呼吸すると、瑞々しい空気が体を満たしていく。「気持ちいー」 うんと伸びをすると、ヘンリーは満面の笑みを浮かべた。「うん! すごく楽しい。きっと流華と一緒だからだね」 その無邪気な笑顔を見つめながら、私は考え込む。 なんだかな……。 ヘンリーは、いつも純粋に私のことを想い続けてくれる。 それは正直、嬉しい。 だけど。 ヘンリーは平気なのかな? 私には龍という恋人がいて……振り向いてもらえないこと、わかってるよね? それに、私たちはいずれお別れしなくちゃいけない。 それは決まっていること。 どうして、そんなにまっすぐ愛し続けられるの?「……辛くないの?」 ぽつりと漏らした言葉に、ヘンリーは不思議そうな顔をした。「ん? 何が?」「え? そりゃ、私と一緒にいること」 ヘンリーは、言葉の意味が理解できないようだった。 首を傾げたあと、ニコリと笑った。「辛いわけないでしょ? 流華と一緒にいられるだけで、僕は幸せだよ」 その笑顔は、すごく幸せそうで……。 そんなヘンリーのことを見ていると、胸が温かいもので満たされていく。 この純粋さに……幾度となく、救われてきた。「ヘンリーって、すごく素敵な人だよね」「えっ、褒められてる? 嬉しいな、流華、大好き!」 テンションが上がったヘンリーは、その勢いのまま
Last Updated : 2025-10-12 Read more