All Chapters of お嬢!トゥルーラブ♡スリップ: Chapter 171 - Chapter 180

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【第2部】 第35話 別れの日が来る、その日まで①

 最初は少し抵抗があったものの……  ボートから見える景色に、心を奪われてしまった。 水面は穏やかで、ボートが進むたびにやわらかく波打ち、日光を反射してきらきらと輝く。  湖の周りには色とりどりの花々が咲き誇り、そよ風にゆらゆらと可愛く揺れる。 時折吹き抜ける風が木々の葉を揺らし、軽やかで心地よい音を奏でていた。 そして、どこからともなく聞こえてくる鳥のさえずり―― スワンボート、いいかも。 深呼吸すると、瑞々しい空気が体を満たしていく。「気持ちいー」 うんと伸びをすると、ヘンリーは満面の笑みを浮かべた。「うん! すごく楽しい。きっと流華と一緒だからだね」 その無邪気な笑顔を見つめながら、私は考え込む。 なんだかな……。 ヘンリーは、いつも純粋に私のことを想い続けてくれる。  それは正直、嬉しい。  だけど。 ヘンリーは平気なのかな? 私には龍という恋人がいて……振り向いてもらえないこと、わかってるよね?  それに、私たちはいずれお別れしなくちゃいけない。 それは決まっていること。 どうして、そんなにまっすぐ愛し続けられるの?「……辛くないの?」 ぽつりと漏らした言葉に、ヘンリーは不思議そうな顔をした。「ん? 何が?」「え? そりゃ、私と一緒にいること」 ヘンリーは、言葉の意味が理解できないようだった。  首を傾げたあと、ニコリと笑った。「辛いわけないでしょ? 流華と一緒にいられるだけで、僕は幸せだよ」 その笑顔は、すごく幸せそうで……。 そんなヘンリーのことを見ていると、胸が温かいもので満たされていく。  この純粋さに……幾度となく、救われてきた。「ヘンリーって、すごく素敵な人だよね」「えっ、褒められてる? 嬉しいな、流華、大好き!」 テンションが上がったヘンリーは、その勢いのまま
last updateLast Updated : 2025-10-12
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【第2部】 第35話 別れの日が来る、その日まで②

 やわらなかな風が彼の頬をなでると、心地よさそうに目を細める。 そんなヘンリーのことを見つめながら、  ひととき、前世の姫の気持ちとシンクロする。 こんなに純粋でまっすぐな人と一緒にいたら、姫も、きっと幸せだったんだろうな。 遠い記憶に想いを馳せていると、ヘンリーがそっとつぶやく。「流華……。僕、たとえ今別れがきたとしても、後悔はないよ。  ずっと全力で流華を愛してきたから。  自分のやりたいようにやって、想いを伝えて。  こうやって、たくさんの流華との思い出も作れて、本当に幸せ。  ……ありがとう」 なんだかヘンリーの様子がおかしい。  もしかして――「まさか、また……?」 私が不安な眼差しを向けると、ヘンリーは優しく微笑み首を振った。「ううん。今回は本当にいつ消えるのか、まったくわからないんだ。  でも、だからこそ。いつ消えてもいいように、僕は流華と過ごしてるんだよ」 そう言うと、ヘンリーは悪戯な笑みを浮かべる。「……でも、ちょっと龍に悪いかなって、反省中」「ふふっ、大丈夫よ。  龍はヘンリーのこと、認めてる気がするから」「うん、僕もそう思う。  僕も龍のことは認めてるよ。龍ならきっと、流華を幸せにしてくれるって。  でも――」 突然、ヘンリーの表情が険しくなった。「あいつはダメ! 流華、あいつはダメだよ!」 勢いよく体を起こしたヘンリーが私に迫ってくる。 ……ああ、“あいつ”って、相川さんのことか。 ヘンリーの意図を察した私は、思わず吹き出してしまった。「大丈夫、私、龍一筋だから」 その言葉に安心したのか、ヘンリーがほっとした表情で笑う。「うん! やっぱり流華には龍だよ」 そう言って、私の隣に座り直した。  太陽が傾いていき、橙色の光が芝生に色をつけはじめる……。 その
last updateLast Updated : 2025-10-12
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【第2部】 第36話 女のたたかい①

 ヘンリーと別れた私は、家へと続く道を一人歩いていた。 もうすぐ家――そう思うと、自然と足取りも軽くなる。 だって、早く龍に会いたいから。 出かける前に送ったメッセージに、『了解しました』とだけ返事が来ていた。 もしかしたら、心配しているかもしれない。  だから、直接会って話したかった。  前方に門が見えてきたところで、ふと足を止める。 誰かいる。 龍かと期待したが、違った。 風に揺れる長い黒髪……凛とした、その立ち姿。  その姿には見覚えがあった。 相川果歩さん。 彼女は私に気づくと、大きな瞳をまっすぐに向けてきた。 視線が合い……なぜか胸がざわめく。 果歩さんは、おしとやかな足取りでゆっくりとこちらへ歩いてくる。  そして、目の前に立ち、じっと私を見つめた。 うぅ、なんだか緊張する。「あの、何か?」 たどたどしく尋ねると、彼女の小さな唇が開いた。  可愛らしい声がこぼれる。「流華さん……二人きりで、お話したいのですが」 その表情は真剣そのもの。  瞳の奥には、何やら熱い感情が見え隠れしている。 な、なんだろう。  すごく、深刻そうだけど。 これ、もしかしなくても、龍のこと……だよね?「は、はい。じゃあ、近くの公園で」 私の提案に、果歩さんは小さく頷き、美しく微笑んだ。 か、可愛い!  アイドル並みの可愛さに、少し儚さも相まって、守ってあげたくなる。  ……って、私は何を考えてんだ!? 自分で自分にツッコミを入れつつ、照れ隠しのように歩き出す。  すると、果歩さんがそっと後ろからついてきた。   公園に着く頃には、太陽がゆっくりと地平線に沈みかけていた。 茜色の光が公園を染め上げ、  いつもと違うその雰囲気に、妙な胸騒ぎを
last updateLast Updated : 2025-10-13
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【第2部】 第36話 女のたたかい②

「うーん、私がとやかく言ったところで、決めるのは龍だから。  それに、私は龍のこと信じてます」 果歩さんの大きな瞳がさらに大きく見開かれた。  悔しそうに唇を噛み、黙り込む。 まあ、今はこんな風に言ってるけど。 ほんの少し前まで不安でいっぱいで、疑ってばかりだったんだけど……。 そう思うと、恥ずかしくなってきて、私は俯いてしまった。  すると、果歩さんは小さく笑った。「なるほど……。  龍さんが好きになるだけの人、ってことですね」 ぶつぶつとつぶやきながら、果歩さんは頷いている。 なんかだかよくわからないが、納得してくれたっぽい?「龍さん、デートの時もあなたのことばかり話すんです。  私、悔しくって。  いったいどんな人なんだろうって……」 果歩さんは、ギロリと鋭い目を向ける。  その迫力に、私は思わず一歩退いた。「龍さんがどんなに流華さんのことを好きなのか、わかっています。  でも、私だって龍さんのことが好きなの!」 果歩さんの瞳に涙が浮かぶ。 え!? 泣く? ど、どうしようっ。  可愛い女の子が泣く姿は見たくない。「流華さん!」「は、はい!」 突然の大声に、反射的に返事をしてしまう。 果歩さんは、ビシッと私を指差した。「宣戦布告よ!  私は龍さんを諦めないから、覚悟して。  ……確かに伝えたから、じゃあ!」 一方的に言い放った果歩さんは、怪しげな微笑みを残しながら風のように去っていく。「……え?」 取り残された私は、ただ呆然とその背中を見送るしかなかった。   さっきの果歩さん、迫力あったな……。  っていうか、美少女は怒ってもやっぱり可愛いんだな。  いや、そこじゃないだろ、重要なのは。 果歩さんから、宣戦布告されてしまった。 彼
last updateLast Updated : 2025-10-13
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【第2部】 第37話 いちゃいちゃ①

「お邪魔します」 龍が緊張した面持ちで、私の部屋に入ってきた。  その動作はどこか遠慮気味だ。 私はベッドの上に腰かけ、龍を手招きする。「どうしたの? こっち座って」 横をポンポンと手で叩く。「え! ……あの、よろしいのですか?」 なんだか、さっきから龍の様子がおかしい。  しどろもどろだ。 私がじーっと龍の様子を眺めていると、彼の顔が赤くなる。 ふふっ、龍ったら。いつまで経っても二人きりのときの反応が可愛いんだから。「龍! 早く」「は、はい」 急かすと、龍はゆっくりとこちらへ近づいてきて、隣へ腰をおろした。  微妙な距離を空けて……。「もうっ!」 私は龍の傍にぴたっと寄り添う。「わあっ!」 龍は驚き、体を強張らせる。  構わず私は彼に寄り添いながら、一息ついた。「はぁー、龍といると落ち着く」「そ、そうですか? よかった、です」 そのまま龍は、固まったように動かない。 居心地がいいので、その体勢のまま話すことにした。「今日はどこ行ってたの? おじいちゃんも龍も、今朝いなかったでしょ?」「ああ、組の集まりがありまして。そちらに顔を出しておりました。  急な招集だったので、お嬢に何も言えず、申し訳ありません」 やっぱり、そうだったんだ。  納得したように頷く。「お嬢は、ヘンリーと遊びに行っておられたんですよね?」「そうそう、ヘンリーがどうしてもってお願いするから。デートしてきちゃった……。  やきもちやいた?」 私は龍の顔を見上げる。  固い表情の龍からは、感情が読めない。「うーん。以前はそうだったかもしれませんが……今はヘンリーに嫉妬はしないですね」「へー、なんで? やっぱりヘンリーのことは信頼してるの?」 ヘンリーとお別れした、あのとき。
last updateLast Updated : 2025-10-14
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【第2部】 第37話 いちゃいちゃ②

「果歩さん、のことなんだけど……」「……はい」 私が小さく発した言葉に、龍が優しい声音で応えてくれる。「さっき、門の前で果歩さんが待ってて。……宣戦布告されちゃった」「え! 宣戦布告!?」 目を剥いて驚く龍に、微笑み返す。「龍のことあきらめないってさ。  でも大丈夫。私だって負けないもん。私の方が龍のこと好きだもん」 じっと見つめると、龍は軽くため息をついた。  そして、私のことを愛おしそうに見つめ返す。「きっと、お嬢には誰も敵いませんね。なんせ、最強ですから」 龍が可笑しそうに笑う。  私は少しムッとして、頬を膨らませた。「最強って、女の子に言う言葉?」「いえ、そういう意味では……。私の中で、最強って意味です」 彼の視線が熱を帯びる。「俺の心の中は、流華さんでいっぱいです」「龍……私の心もあなたでいっぱいだよ」 そんな言葉がつい漏れてしまった自分に驚き、慌てる。 キャラじゃない……よね。「な、何言ってんのかな? 私!」 恥ずかしすぎて、顔を背けようとする。  しかし、すぐに龍の大きな手が優しく私の頬を包み、視線を固定された。 龍の瞳が近づいてくる―― 私はそっと瞳を閉じた。「流華さん……好きです」 そっと囁くような声のあと、  ふわりと柔らかな唇の感触。 龍が優しく私の唇をついばんでくる。「んっ、りゅ、龍……」 一瞬止まった龍だったが、すぐにまた唇を重ねた。  今度は深く、彼の温もりがじんわりと伝わってくる。 私も龍の気持ちに応えたくて、必死に彼の背中に腕を回した。 すると。 突然、ベッドに押し倒される。「ちょっ、りゅ、龍!」 不意の出来事に、心臓が跳ね上がる。 どうしていいかわからず、私は龍をじっと見つめた。
last updateLast Updated : 2025-10-14
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【第2部】 第38話 強引な約束①

 そんなこんなで、龍との関係は順調、だったんだけど……。 毎日のように、私のもとを訪ねてくる人物が一人。「やあ、流華さん。今日も可愛いね」 下校の時間。  校門の前には、相変わらず爽やかな笑みを浮かべながら手を振る相川さんの姿。 私は大きくため息をつきながら、じろりと彼を睨みつける。「あの、毎日毎日、いい加減にしてください。  どれだけ会いに来られても、私の気持ちは変わりませんから」 スピードを上げ、彼の前を通り過ぎていく。「うーん、そうだねぇ。でもさ、ね、もう一度だけデートしようよ」 私はかなりの速度で歩いている、はずなのだが。  相川さんは余裕そうな表情を崩さず、歩調を合わせてきた。 ――くっ、この人も龍と同じで体力お化けか……。 横目で相川さんを見つめながら、心の中でため息をつく。 もうすぐ龍のいる場所に着いてしまう。  二人が出くわすのはまずい、そう思った私はふいに立ち止まった。「おっと」 動きに合わせ、相川さんもピタリと止まる。  ゆっくりと振り返り、真正面から彼を見据えた。「じゃあ、最後に一度だけデートしましょう。  それでキッパリ、あきらめてもらいます。それでよければ」 私の提案に、相川さんは顎に手を当て、しばらく考え込む。  しかし、すぐにニコッといつもの笑顔を浮かべた。「よし! OK! その最後の日に、君が僕を好きになればいいんだ!」 あっけらかんと言う相川さんを見つめ、私はがくっと肩を落とす。 なんて、前向きな……。  この人には、はっきり言わないとダメだ。「あの……」「じゃあ、そういうことで! また日時は連絡するよ」 言葉を遮るように、相川さんは笑顔のままくるりと背を向けた。  そして、そのまま駆け出す。 あっという間にその背中は遠ざかり、気づけばもう遥か彼方。「あ……」 
last updateLast Updated : 2025-10-15
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【第2部】 第38話 強引な約束②

 次の瞬間。 龍がふいに私に口づけた。  それは、唇が振れるだけの軽いキス。「わかってますよ、流華さん」 唇が離れると同時に、余裕のある微笑みを浮かべる。 もしかして――今までの態度は全部演技?  私をからかってたの?「……っ、龍ぅ」 ああ、まただ。翻弄される。 最近、彼の言動に振り回されることが多くなった。 ふいに私の方が龍を好きなんじゃ……と感じることがよくある。  彼の言動が気になってしかたない。 なんだか悔しくて、拗ねたように顔を背ける。 しかし、それは無駄な抵抗だったのかもしれない。 龍の指先が私の顎に触れ、再び彼の方へ引き戻されてしまった。「俺の、流華さん……」 熱のこもった瞳で名前を呼ばれ、心臓が波打つ。 うっとりと見つめ返す私の口から、彼の名が自然とこぼれる。「龍……」 龍は嬉しそうに目を細め、再び私に口づける。 それは、先ほどより深く……。  お互いの気持ちを確かめ合うような。 ねえ、龍。 私はもう、あなたに首ったけ……なんだよ。 知ってる?   そして——相川さんとのデートの日がやってきた。「じゃあ、流華さん、行きましょうか」 いつも通り爽やかな笑顔を向ける相川さん。  そして、そんな彼を鬼の形相で睨みつける龍。 玄関先で、二人の男が目に見えない壮絶なバトルを繰り広げていた。 二人の間に、火花が見えるのは気のせいだろうか……。  少し前、相川さんが私を迎えに家を訪れた。 対応したのは龍。  事前にデートのことは伝えてあったので、彼は驚くことなく冷静に振る舞っていた。 のだけど。いざ向かい合うと異様な緊張感が漂う。 私は息を呑んで、二人のことを見守っていた。
last updateLast Updated : 2025-10-15
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【第2部】 第39話 完璧なデート①

 相川さんはリード上手というか、  女性の扱いに慣れているな……と感心しきりだった。  デートの最初に訪れたのは、映画館。 到着すると、相川さんは迷うことなくチケットを手配し、ポップコーンとジュースを手渡してきた。  私はただ待っているだけ。 席までのエスコートも完璧で、映画を観終えたあともスムーズに誘導される。 決して待たせることなく、さりげない気遣いもパーフェクト。  もちろん、ゴミの後始末なども忘れない。  そして、お昼はフレンチレストランへ。 店の外観からして、かなりお洒落な雰囲気。  前面がガラス張りになっていて、開放的な空間を演出している。 店内は木を基調とした造りで、とても温かみのある雰囲気だ。  店へはいるとすぐ、観葉植物たちが来店客を出迎え、和ませてくれる。 マイナスイオン効果で、心も体も癒される。  案内された席に着くと、次々と豪華な料理が運ばれてきた。 すごい……どれも高そう。 食べたことのない料理の数々に、舌が悲鳴を上げる。  美味しいのかどうかさえ……もうよくわからない。  食事を終えると、私たちはそのまま出口へ向かった。 会計口で足を止めた私を見て、相川さんが可笑しそうに笑う。 彼は私の手を取ると、そのまま店の外へと導いていく。  どうやら、支払いは既に済まされているらしい。 何から何まで完璧……。  店の前で「少し待っていて」と告げた相川さんが、一度姿を消す。 しばらくすると、一台の高級車が目の前にやってきて、停車した。  それは、見るからに高そうな艶と輝きを放つ車―― いったい、いくらするんだろう。 車に目を奪われていると、運転席から相川さんが降りてきた。  目を丸くしている私を見て、彼は可笑しそうに笑う。 また、笑われた……なんだか悔しい。 ふくれっ面の私に向
last updateLast Updated : 2025-10-16
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【第2部】 第39話 完璧なデート②

 車はゆるやかなカーブを描きながら、道なりに走っていく。  私は窓の外に広がる景色に目を奪われた。 遠くにそびえる山々が、どこまでも広がっている。  空を見上げれば、透き通るような青空に、白い雲たちがふわりと映え。  下を見れば、湖の水面に陽の光が反射してキラキラと輝いていた。 窓を少し開けると、爽やかな風が車内に自然の匂いを運んでくる。 気持ちいい。 自然豊かな場所を選んで走ってくれているのだろうか……。 きっとそうだろう。  そういう気遣いを忘れない男だ、彼は。 ふと、相川さんへ視線を移した。 片手で軽くハンドルを握る姿。  普段と違い、珍しくサングラスをかけた横顔が、どこか男らしさを感じさせる。 窓から吹き込む風が、彼の髪を揺らしていった。 ……。 一瞬、見惚れてしまい、はっとする。 い、いかん! 何をやっているんだ、私は!  運転している人の横顔って、なんでか格好よく見えちゃうんだよね。 ドライブ効果、恐るべし。「何か?」 私の視線に気づいたのか、相川さんがふいに声をかけてきた。「い、いえ……。景色が綺麗だなって」 動揺を悟られないよう、必死に普通を装った。  相川さんは前を見据えたまま、優しく微笑む。「そうですね。自然が多いと、空気も美味しいですし。  ぜひ、満喫してください」 ちらりと私の方へ視線を向ける。 ……っ。  わずかに心臓が跳ねた。 はっ! また、私としたことが。  龍がいるのに!  ……いや、まて、落ち着け自分。これはあれだ。  状況に慣れていないせいだ。 そう、こういうシチュエーションに慣れていないだけ。 きっとそう! 気持ちを落ち着かせようと、景色に集中する。  すると、ふと龍の顔が浮かんだ。 ――ドライブ……してみたいな。
last updateLast Updated : 2025-10-16
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