Semua Bab お嬢!トゥルーラブ♡スリップ: Bab 51 - Bab 60

69 Bab

【第1部】 第28話 龍の気遣い①

 下校の時間。  私はさっさと帰ろうと、急いで教室を出た。 すると、私のあとを必死で追ってくるヘンリーの気配を感じ、そっと振り返る。  視界に入ってきたのは彼と、彼にべったりと寄り添うシャーロットの姿。 見たくないという思いとは裏腹に、澄んだ瞳でじっと見つめるその眼差しに、私は負けた。  結局、皆で帰るはめになってしまった。  ヘンリーに腕を絡め、密着するシャーロット。  その様子を横目で見ながら、私は心の中でため息をつく。 こんなことがこれからずっと続くのかな……結構、しんどいんですけど。「お嬢、ご気分でも悪いのですか?」 私の様子が気になったのか、龍が声をかけてきた。「ううん、大丈夫。……ね、今日の夕飯は何?」 「え? あ、はい。雑穀米、茄子のお味噌汁、サバの塩焼き、酢の物でございます」 「美味しそう! 龍の作る料理が一番よね、楽しみにしてる」 「光栄です」 私は明るく振舞った。 落ち込んでいるなんて思われたくない。もちろんヘンリーへの気持ちも知られたくない。ましてや、嫉妬してるなんて絶対に知られるわけにはいかない。  ……今さら、ヘンリーのことが好きだなんて。 それに、ヘンリーにはシャーロットがいるし……ヘンリーはこの世界の人じゃない。  いつか、必ず別れが訪れる。  これ以上好きになったら、いつかきっと辛い思いをすることになる。  この気持ちは封じ込め、忘れてしまったほうがいい……。 思考を巡らしていた私は、前をよく見ていなかった。「お嬢っ! 危ない!」 突然、龍に力強く引き寄せられた。 よく見ると、進行方向には電信柱が……。どうやら、私はそれに向かって歩いていたらしい。 龍が止めてくれなかったら、思いきりぶつかっていただろう。  私としたことが情けない、考えごとばかりしているからだ。 ほっとしたのもつかの間、私は肩を落とし落ち込んだ。「大丈夫ですか? 心配させないでください」 龍が真剣な眼差しを私に向ける。「うん……ごめん」 意気消沈する私。  ふいに龍が私の手を取った。「え?」 私は驚き龍を見つめる。  すると、彼は照れくさそうに下を向いた。その頬はほんのり、赤い。「行きますよ」 そう言うと、龍は私を引っ張って歩き出す。引かれるままに、彼の後についていく。  突然の龍の行動に戸
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-18
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【第1部】 第28話 龍の気遣い②

 その夜、私は自分の部屋のベッドに横たわり、考えにふけっていた。  天井を見つめながら、今までのことを脳裏に浮かべていく。 いったい、ヘンリーはなぜ私のもとに現れたのだろう。  なぜ時を超えてまで、この時代に、この国に、私の前に?  何か大切な目的があるのではないだろうか。そうでなければ、こんなこと起こるわけない。 人の強い想いが、ときに奇跡を起こす。 もしかして、この出来事も人の想いが関係しているとか……。  そのとき、ふいに中村透真のことが頭をよぎった。 やはり、どう考えても二人が無関係とは思えない。  二人の共通点……それは私。  彼に出会って、ヘンリーに出会った。 二人が同時期に私の目の前に姿を現す。  そして二人は瓜二つ。 こんな偶然って……。「よし! 決めた」 私は勢いよく立ち上がった。  夕食を終えた皆は、居間でゆったりとくつろいでいた。 祖父は新聞に目を落とし、龍はそんな祖父の肩を揉んでいる。ヘンリーは寝ころびながら漫画に夢中だし、その背中をアルバートがマッサージしていた。  シャーロットは目を輝かせテレビを見ている。 本当に我が家は、賑やかになったものだと感心しながら、私はヘンリーへ視線を送った。「ヘンリー、ちょっといい?」 全員の視線が、一斉に私へと注がれる。 最近の私たちの気まずい雰囲気を察していたのか、皆かなり驚いた表情をしていた。  その中でもシャーロットの視線が鋭く、私に突き刺さる。「……うん」 ヘンリーは少し躊躇った様子を見せたが、素直に頷いた。 私は内心ほっとした。  少し不安だったのだ。ヘンリーが嫌な素振りをしないか、と。  最近はお互いうまく話せていなかったから。でも、そんな心配は不要だったようだ。  私はヘンリーを連れ、近所にある公園へと足を運んだ。 家から
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-18
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【第1部】 第29話 繋いだ手の温もり①

 もう既に日は暮れ、辺りは暗く静まり返っていた。 いくつかの街頭の灯りだけが、夜の闇に包まれた公園を照らしている。  見知った風景も夜の闇に溶け込むことにより、いつもと違う場所のように感じてしまうのはなぜだろう。  私の怖がりが顔を覗かせ、軽く恐怖心が湧いてきた。  しかし、隣にいるヘンリーの存在のおかげか、私は平静を装うことができた。 なにげなく視線を向けると、ブランコが視界に入る。  私はゆっくりとブランコへ歩み寄り、そっと腰掛ける。すると、ヘンリーもそれに習い隣のブランコに腰掛けた。 ふと空を見上げると、一番星が大きく光り輝いている。  私のその星に目を奪われた。 なんだか、あの夢を思い出す……あの時も、星が綺麗だった。「……ヘンリーはさ、なんでここへやってきたの?」 私が静かにそう問いかけると、ヘンリーは首を傾げた。「え? ……さあ、僕にはさっぱりわからないや」 薄笑いを浮かべ、下を向くヘンリー。そこにいつもの元気はなかった。  私は思い切って、彼のことを打ち明けてみることにした。「ずっと黙ってたんだけど……私、ヘンリーと同じ顔の人、知ってるの」 「僕と同じ顔?」 ヘンリーは目を丸くして私を見つめる。「うん、ヘンリーが現れる少し前、私はその人に助けられた」 私はヘンリーに彼との経緯を説明していく。  ヘンリーはただ静かに私の話に耳を傾けてくれていた。「それで、私考えたんだ。  二人が似ていることには、何か意味があるんじゃないかって。  ……だから、一度彼に会ってみない?」 ヘンリーは始め驚いた表情をしていたが、しばしの沈黙のあと神妙な顔で頷いた。「……うん。僕もその彼に会ってみたい」 真っ直ぐに向けられる瞳。  その視線を受け止め、私は笑顔で頷き返した。「わかった、じゃあ今度連れて行く」 ふと、ヘンリーの真剣な眼差しが、じっと私に向けられ続
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-19
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【第1部】 第29話 繋いだ手の温もり②

「り、龍!?」 遠くから、龍がこちらへ向かって物凄い勢いで走ってくるのが見える。「……また、龍の邪魔か」 ヘンリーがぼそっとつぶやき、肩を落とす。「はあ、はあっ、お、お嬢っ。あんまり、心配させないでください!  こんな夜更けに、このような男と長い間二人きりなんて……。  私は許しませんよ!」 なかなか帰ってこない私を心配し迎えにきたらしい龍は、目の前でぜぇぜぇと苦しそうに息をしている。 よほど私のことが心配だったのかな。  本当に、いつも心配ばかりかけて申し訳ない。と私は少し反省する。「ご、ごめん。もう帰るつもりだったんだ。話も終わったし、帰ろう!」 私は赤くなった顔を見られたくなくて、龍の背中を押していく。 なんだか、少し残念な気持ちもあるけれど……。  さりげなくヘンリーの方へ顔を向けると、彼は頬を膨らませながら私をじっと見つめている。 拗ねてるんだ、可愛い。  ヘンリーのむくれた表情に、私は可笑しくて笑ってしまった。「ヘンリー、帰るよ」 呼びかけに反応したヘンリーは、嬉しそうに私のもとへ駆け寄ってくる。「流華、待って」 そっと私の手を取ったヘンリーは、嬉しそうに笑う。「あ……うん」 握られた手の感触に、私は俯いた。  恥ずかしくて、うまくヘンリーの顔を見ることができない。 そっか、いいな、こういうの……と握られた手を見つめ、一人ほくそ笑む。 その様子に気づいた龍は、慌てた様子で私たちの方へ振り返った。「貴様っ! また性懲りもなく、お嬢から離れろ!」 龍はヘンリーに掴みかかろうとするが、それをするりとかわしたヘンリーはあっかんべーをする。「なんだよ、龍だって手繋いでたろ? ずるい!」 ヘンリーが言っているのは下校時のことだろう。  龍が私の手を取り、繋いで帰ったことを根に持っているようだ。 それを指摘された龍の頬が赤くなり、慌
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-20
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【第1部】 第30話 奇跡①

 次の休日。  私はヘンリーを連れ、中村透真のもとへ向かっていた。 龍にだけは事情を話し、アルバートとシャーロットを引き留めておくようにお願いした。 あの二人は常にヘンリーに付きまとってくるので、今回も放っておくと必ず付いてくるだろう。  それは困る。  龍も付き添いたかったらしいが、私がお願いすると渋々承諾してくれた。 彼の父親にも承諾を取ってある。  勝手に誰かを連れて行くのは、礼儀に反すると思ったからだ。  すんなりと承諾してくれ、有難かった。「いつもご苦労様です」 病室の前にいる黒いスーツの男性に挨拶をする。  男性は私の後ろにいるヘンリーのことを一瞥し、頷くと病室のドアを開けてくれた。 中村透真と知り合い、しばらく経ってから知ったことだが、彼はどうやらとんでもないお金持ちらしい。  いつでもボディーガードのような人が病室の前に立っている。 彼らには私のことがもう周知されているらしく、いつも顔を見るだけですぐに通してくれる。  今回はヘンリーのことも既に聞かされているようだった。「失礼します」 病室へ入ると、中村透真はいつも通りベッドで横になり眠っていた。  父親は来ていないようだ。「……っすごい、本当に僕そっくり」 彼を見たヘンリーは側へ駆け寄り、顔をまじまじと見つめる。「私だって本当に驚いたんだから」 「痛っ」 突然ヘンリーが頭を抱え込む。「どうしたの? 大丈夫?」 私はヘンリーを支えながら顔を覗き込んだ。「う、うっ……」 辛そうに顔を歪めたヘンリーがしゃがみ込んでしまう。「ヘンリー! ヘンリーっ、どうしたの!?」 突然ヘンリーの意識は途絶え、その場に倒れてしまった。 「……流華?」 ヘンリーの目がゆっくりと開いていき、その瞳が私を捉える。「ヘンリー! よかった、目が覚めたのね」
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【第1部】 第30話 奇跡②

 ヘンリーの話によると、倒れてから目覚めるまでの間に長い夢を見たそうだ。  その夢の内容は、私がこれまでに見ていた夢にそっくりだった。 私が途切れ途切れに見たあの夢を、ヘンリーは一気に詳細に見たというのだ。 夢の中でいつも私の隣にいたあの男性は、ヘンリーの前世だという。  そして、前世で私はヘンリーの恋人のお姫様だった。 二人は隣国の王子と姫で、国同士が和睦を結び、争いもなく二人は平和に暮らしていた。  交流していく中で、次第に二人は惹かれ合い恋に落ちた。  しかし、ある日を境に和睦は崩れ、二つの国は争いを始めてしまう。  二人は敵国同士となってしまった。 そんな中、二人の想いは変わらず、お互い惹かれる想いを止めることはできなかった。  そればかりか、日に日に二人の愛は大きくなっていってしまう。 両親、国や国民、全てから反対され、それでも二人は愛を貫く道を選んだ。 しかし、周りからの圧力は強く、とうとう追いつめられた二人は、心中することを決意した。 お互い結ばれぬ運命ならば、死を選ぶ……それほど熱い想いを二人は秘めていたのだ。 姫は私で、王子がヘンリー。 時は流れ、王子はヘンリーに生まれ変わったが、その時代に私はまだ生まれていなかった。  王子の姫への強い想いが、ヘンリーをこの時代にタイムスリップさせたのだ。 私がいるこの世界へ。 「君に会いたい一心だったんだよ。  僕は君に早く会いたくて生まれ変わったけれど、君はのんびり屋さんだったのか、この時代まで生まれてこなかった。  僕に記憶はなくても、君への想いだけは心の奥に残っていたんだ。  王子の強い想いが起こした奇跡なのかもしれない。それはわからない、けど……。この時代へ、僕は君に会いにきた。それだけは、はっきりとわかる。  そして、また巡り逢い……流華、僕は君を愛したんだ」 ヘンリーが語る話を、私は目を丸くして聞き入っていた。  どこか、おとぎ話を聞いているような感覚だ。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-22
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【第1部】 第30話 奇跡③

「でも、私はあなたのこと思い出せない……記憶が、ないよ」 そう言いながら、私は泣いていた。涙がぽろぽろと瞳から溢れてくる。  これは、姫の想いがそうさせているの?「いいんだ、記憶が無くたって。  だって……僕は君を好きになった。記憶が無くたって好きになったんだ。  君は? 僕のこと、好きになってくれないの?」 ヘンリーは私の涙を指先でそっと拭いながら、優しく微笑む。「……好き。好きに、なったよ」 私はついこぼしてしまった自分の言葉に驚く。  言うつもりなんてなかったのに。「流華、本当?」 ヘンリーの顔が嬉しそうに華やいだ。「いや、ちがっ。あの、違うっていうか、なんていうか」 私は恥ずかしくて、視線を逸らし懸命に弁解を試みる。が、どうやらヘンリーには通じていない。「嬉しい、すごく! 生まれて初めてだよ、こんな気持ち。好きな人と両想いになれるって、こんなに幸せなんだね!」 幸せそうな、可愛らしい笑顔を向けてくるヘンリー。  そんな彼を私は恨めしそうに見つめた。「そんなに嬉しそうにされたら……私、もう嘘つけないじゃん」 「何で嘘つく必要があるの?」 「だって、ヘンリーはいつか、きっと……」 それ以上は悲しくて言えなくなった。  ずっと心の奥で考えていたこと、封印していたこと。『ヘンリーはいずれこの世界からいなくなる』 そのフレーズが頭をよぎると、胸が痛んだ。  動悸がして、苦しくて……私は眉を寄せ、胸を押さえる。 ふいにヘンリーが私の頬にキスをする。「流華、そんなに僕のことを想ってくれるの? 嬉しいな。  僕はそれだけで、この世界に来た意味があったよ。だって、僕の世界では君に出会うことさえなかったんだから。  君に会えて、こうして想いが通じるなんて……こんな幸福ないよ。僕は幸せだ」 さっき私が思ったことは、当然ヘンリー自身も考えたことがあるだろう。  それでも、ヘン
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-22
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【第1部】 第31話 図に乗る王子①

「で、あの青年はヘンリーの生まれ変わりだった、ということですか?」 「ええ、そうみたい」 家に帰った私を、龍が首を長くして待ち構えていた。  心配そうに見つめてくる龍のパワーと目力に根負けした私は、病院で起こったこと、判明したことを説明していく。 病院のベッドで眠っている私の恩人、中村透真はヘンリーの生まれ変わりであること。  そして、ヘンリーと私は前世で恋人同士、悲しい結末を迎えてしまったという事実。  姫の生まれ変わりである私に会うため、ヘンリーがこの時代にやってきたこと。  同じ人間が出会ってしまったことによる拒否反応?が起こり、ヘンリーは意識を失い、その刺激によってヘンリーの記憶が全て蘇ったこと。 龍は驚きながらも、真摯に私の話に耳を傾けていた。 帰ってきて早々廊下で話し込んでいた私たち。そこに上機嫌な様子のヘンリーがやってきた。「ねえ、流華、一緒にお風呂に入ろうよ」 唐突に後ろから優しく抱きしめてきたヘンリーが、私の耳元で甘く囁く。「な、何言ってんの!?」 戸惑い慌てる私の様子を、嬉しそうに眺めるヘンリー。「何、恥ずかしがってるの?  僕たちは愛し合ってるんだから、いいじゃん。  元恋人同士だったんだし、今だって両想いなんだから。  流華は恥ずかしがり屋さんだなあ」 私の頬にヘンリーが顔をすり寄せる。  お互いの気持ちが通じ合ってからというもの、ヘンリーは前にも増して私への愛情表現が激しくなっていた。「貴様……本気で殺されたいようだな」 鬼の形相と化した龍が、ヘンリーを睨みつけながらじりじりと詰め寄ってくる。「龍、ちょっと待って。冗談だから、ね、ヘンリー」 私は龍の怒りを鎮めようと、懸命にヘンリーに目配せした。「え? 冗談じゃないよ。僕はいつも本気だよ」 ニコニコと私を純粋な瞳で見つめるヘンリー。龍のことなどまるで目に入っていないようだ。  その綺麗な瞳に、私もつい見惚れてしまう。 い
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-23
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【第1部】 第31話 図に乗る王子②

 しばらくすると、虚ろな目で前をぼーっと見つめる龍が突然動き出した。  壊れかけのロボットのように歪な動きで立ち上がると、フラフラと歩き出す。「龍……大丈夫?」 私は心配になり、声をかけた。  すると、蚊の鳴くような小さな返事が返ってくる。「は、はい。少し、一人にさせてください」 何とも力のない声だ。  龍はこちらを一度も振り返ることなく、背を向け去っていく。 その背中は、いつもの力強さは感じられず、どこか小さく寂しげだった。 こんな腑抜けたような龍、初めて見たかも……大丈夫かな。 私が龍のことを見つめる隣で、ヘンリーが大きなため息をついた。「はぁ、龍、ショックだったんだろうなあ。  まあ、しょうがないことだよ。流華は僕が好きなんだから、ねー」 私に微笑みかけるヘンリーは、すごくご機嫌な様子だ。  一体何を言いたいのかわからず、私はヘンリーを不思議そうに見つめた。 すると、突然ヘンリーが私にキスをする。「ちょ、何、いきなりっ」 「え? だって流華が僕を見つめるから、キスしたいのかと思った」 「そんなわけないでしょ。なんでもかんでもそんな風に結び付けないでよ」 「流華……冷たい」 ヘンリーが寂しげな表情で私を見つめてくる。 そんな瞳で見つめないで!  私はそういう捨てられた子犬みたいな目に、すごく弱いんだから。「ごめん、私もヘンリー好きだよ。それにキスだって……嫌じゃない」 これは本心。「本当? やった! キスしてほしい?」 「……うん」 ここは素直になった方が絶対可愛い、よね? 私が上目遣いでヘンリーを見つめると、勢いよくヘンリーの唇が私の唇を塞いだ。  この時を待っていたかのように、ヘンリーは私の唇に貪りついてくる。「……っ」 私は息が出来なくて、キスから逃れようとする。「流華、好きだよ」 私の動きを封じ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-23
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【第1部】 第32話 若頭の悩みの種①

 そして、やっぱりというかなんというか。  シャーロットは、早速私たちの関係に気づいたようだった。「ねえ、あなたたち、もしかしてできちゃったの!?」 ヘンリーと仲良く縁側に座り、星空を眺めていた私はその声に振り返る。 後ろに佇んでいたのは、青い顔をしたシャーロット。  わなわなと口を震わせ、丸い瞳でじっとこちらを見据えている。 できちゃったって、なんだか聞き方がオヤジ臭いな。見かけはすごく可憐で可愛い美少女なのに……。  私があきれた目でシャーロットを眺めていると、ヘンリーは私に寄り添いながら嬉しそうにニコニコと微笑んだ。「そうだよ、流華と僕は相思相愛なんだ。  だから、シャーロット、もう僕のことはあきらめてね」 ヘンリーはわざとらしく悲しそうな目をして、眉を寄せた。申し訳なさそうな表情をしながらシャーロットに暴言を吐いている。  これはもう、彼女にとっては暴言以外の何ものでもないと私は思う。 シャーロットは俯き黙り込む。  握りしめられたその手は、震えていた。「あの、シャーロット……」 私は声をかけようとしたが、何を言えばいいのかわからず言葉が出てこなかった。  だって私が何を言っても、きっと彼女には嫌味にしか聞こえないと思うから。 躊躇っていると、シャーロットは勢いよく前を向いた。  その鋭い眼光が私に突き刺さる。「そんなの! そんなの私、認めない!  私は正式なヘンリー様の婚約者よ。流華さんなんて、本来なら出会うこともなかったはずの存在じゃない!  それに……二人はいつかお別れしなきゃいけないのよ。  二人は同じ世界の人間じゃないんだからっ!」 そう叫ぶシャーロットの目には涙が滲んでいた。  悔しそうに顔を歪めた彼女は、その場から走り去っていく。「シャーロット様!」 途中から姿を現し、この現状を静かに見守っていたアルバートが彼女を追いかけていく。  私はただ呆然と、二人が去った方向を見つめていた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-24
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