病院の帰り道、夕陽に照らされた道を龍と二人で歩く。 私は今日起こった不思議な出来事を、龍に話して聞かせた。「へー、すごい偶然ですね。 ……でも、よかった。そのおかげでお嬢の気持ちが少しでも軽くなったなら、大吾様も嬉しいでしょうね」 龍が嬉しそうな笑顔を私に向ける。 思い詰めていた気持ちが少しだけ晴れやかになっている自分に気づき、私も自然に笑みがこぼれた。「ありがとう……皆には心配ばかりかけてるよね」 私が落ち込んだように下を向くと、龍が少しムッとした表情になる。「何を言っているのですか? 皆お嬢のことが大好きで大切だから心配するんですよ。 お嬢、もっと笑顔を見せてください。その方が皆幸せですから」 龍が満面の笑みを見せるので、私もつられて微笑んでしまった。「そうだね、うん……そうする」 私が龍を見つめると、龍はすぐに視線を外す。「どうしたの?」 「なんでもありません」 龍が目を合わせてくれないので、私は悔しくて少しむくれた。「なら、こうしてやるっ」 龍の脇をこちょこちょする。「ひゃ、や、やめてださい。ひっ、ひひ」 龍は体をうねらせながら、必死に笑いを押し殺している。 昔から龍の弱点の一つだ。私だけが知る、龍の秘密。「ごめん、ごめん。そういえば、龍の弱点って他にはないの?」 私はいたずらっ子の表情で、龍を覗き込む。 すると、なぜか龍はあきれた顔をして、私のことをじーっと見つめてきた。「それは……自分の胸に手を当てて、よーく考えてみてください」 「何よ、いじわる」 何だか嫌味なその言い方に、腹が立った私は龍にそっぽを向いた。 そして、さっさと歩き出す。「あ、お嬢! そんなに先に行かれては危ないですよ!」 慌てた様子のその声に、私はため息をつく。 本当に龍は過保護なんだから。 勢いよく振り返ると私は笑顔を見せる。
Terakhir Diperbarui : 2025-07-11 Baca selengkapnya