目の前に見えるのは真っ赤な炎……。 それが左右にチロチロと蠢いている様は、まるで『炎の精霊サラマンダー』の舌のように見える。 立ち込める煙と熱を帯びた灼熱の炎は、住み慣れていた私の屋敷が燃えていることを否応が無く実感させる。 そんな最中、窓からさしこむ月光とそよ風を受け、私の真紅のネグリジェが静かに揺れるのが見えた。 その揺らめきは、今の私の心情に思える。 そう、私の真正面には静かに佇む圧倒的存在がいるからだ。「……いつまでも、この私から逃げられると思うなよ?」 その声は静かだが、私は確かな怒気を感じてしまう。 パチン……。 まるでホタルの光のように放物線を描き、火の粉が私の目の前を跳ねるのが見える。 私は口の中に確かな渇きを感じながら「……逃げてはないわ。ただ、追い求めている理想が貴方と違うだけ」と、返す。 再び火の粉が複数跳ねる音が周囲から聞こえる……。「お前の理想と我の追及する美に違いがあると……?」 勢いを増した真紅の炎はまるで彼の憎悪を駆り立てる様に激しく燃え盛り、彼と私の間を遮る灼熱の壁となる。 「……他人からひたすら奪い続ける貴方達の行きつく先は、美は美でも滅び。即ち滅美よ……!」 やや僅かに間を置き、私は皮肉を込め言葉を放つ。 その私の言葉に対し、炎柱から覗き見える彼の端正な唇は少し歪んで見えた。 彼のまるでルビーのような真っ赤な瞳を見ると決して笑ってるようには見えない。「……どうやら、これ以上話し合っても無駄のようだね」 彼は静かにこちらに向けて怒気のこもった言葉を放ち、その敵意と共に鋭い牙をむき出しにし、更に鉄槍のような鋭い爪をこちらに向ける。 黒豹のように締まった体を緩やかに前かがみにし、闇夜よりも深い漆黒のマントが優雅にはためくのはなんとも様になっている。 いつでもこちらに飛び掛かれる臨戦態勢、ということだろう。 そのなんともいえない圧のためか、私の額から頬へ一筋の雫がゆっくりと伝うのが分った。 私はその緊張感から静かに生唾を飲み込こむ。(仕方が無い、やるしかないのかな……) 観念した私はため息と共に、腰元から愛用の武器を素早く抜刀し、それを正中線に静かに構える。 その刀身は真紅の棘のようであり、独特の怪しい輝きを静かに放っていた。 その獲物の名は【レッドニードル】、私の愛用のレイピア
Terakhir Diperbarui : 2025-05-16 Baca selengkapnya