が、そこには私達が期待したものは何もなく、綺麗な純銀の平らな表面が見えるだけであった。「うん、これは私があの時見たペンダントではありませんね。しかも、魔石のマナの流れもあれに比べて薄いものです」「……ふむ、クロウの嬢ちゃんが言うなら間違いないじゃろう。ついでで申し訳ないが、何故貴方はこのペンダントをおつくりになったのか、そして何故イハール殿を選んだのか? なども話していただけますかな?」 長は小次狼さんの言葉にゆっくりと頷き、窓から見える満月を眺めながらポツリポツリと語りだした。「そうだな、あれは百年前……。私が初めて人の心を知りたいと思った事から始めた事だった」 長のいや、ブラッド青年の体を借りたコバルトブルーの瞳が私達を見つめ、静かに語っていく。「私はレイシャが組織を抜け、何かぽっかりと胸に穴が開いたようなそんないたたまれない気分になった。……きっとそれは私のバンパイヤとしての人生で初めての気持ちだったと思うのだ」 悲壮感溢れる長のその表情、それは今まで私が見た事も無いものであった。「それがきっかけだったんだと思うが、私はふと思ったのだ。人になればその気持ちが理解できるのでは? と……。結果、私はこのペンダントを作り無事自分の悲願を達成することが出来た……」 合理主義者の長のこの行動、きっと本当の話だろう。(で、その理由が私って事……? そ、それって、つまり……?) 私は少し胸の鼓動が早まるのが自身で理解出来た。 (けど、私はエターナルアザーを、いや、長を嫌悪していたはずなのに、どうして……どうしてこんな気持ちなるの?)「ふむ、貴方が言いたい事はおおむね理解出来ました。が、イハール殿はこの事を承知なのですかな?」「無論だ、なにせ彼との契約なのだからな。ただ、彼は私と貴殿たちとの会話の記憶、即ち私の夜の記憶は引き
Terakhir Diperbarui : 2025-06-08 Baca selengkapnya