悠良はため息をついた。彼女はようやく理解した。伶は、こんなことまるで気にしていないのだ。気にしているのは、自分だけ。想像してみれば分かる。人妻である自分が、夫の宿敵とスキャンダルを流されたら......その時どんな状況になるかは、火を見るよりも明らかだった。そんな中、伶は気の抜けた調子で眉を上げた。「なんだよ、俺とスキャンダルになったくらいで、そんなに恥ずかしいことか?どれだけの女が俺と噂になりたいって思ってるか知らないのか?そんな世界の終わりみたいな顔して」悠良は、彼にこんな話をしても無駄だと分かっていた。彼には、絶対に分からない。「......別に」これでよかったのかもしれない。LSのプロジェクトプランがまだ終わっていないのに、今度は伶とのスキャンダル。今後、自分に向かってどれだけの波が押し寄せてくるのか想像に難くない。せめて、持ちこたえられる時間が長くありますように。「泊めてくれてありがとうございます。私はこれで。食事、足りなければキッチンにまだあるので」悠良は立ち上がり、食べ終わった食器を持ってキッチンへ。戻ってきたとき、ついでにソファの上の上着も持っていった。伶はダイニングチェアに座ったまま動かず、写真はすでに削除済みだということも、彼女には何も言わなかった。悠良が彼の家を出た直後、スマホにメッセージが届いた。史弥からだった。【会社に来て、会議だ】昨日、伶と一緒にいたことも、どこで夜を過ごしたのかも、一切訊いてこない。悠良も、何も訊かれなくてむしろ助かった。彼が余計なことを聞いてこなければ、自分も無理に言い訳を考えなくて済む。お互い干渉しないのが、きっと一番。彼女はタクシーでそのまま会社へ向かった。中では、社員たちがにぎやかにチームビルディングの話をしていた。「ねぇ、聞いた?明日チームビルディングがあるんだけど、LSの寒河江社長も来るらしいよ!」「それ最高じゃん!推しに会える〜!」「寒河江社長って、イケメンなんでしょ?」「ほんとに?白川社長も十分かっこいいと思うけど、それ以上ってある?」「2人ともタイプが違うのよ。白川社長はクール系、ただの冷たい人。でもそういう冷たさが逆にたまらないっていうか......」「寒河江社長
Baca selengkapnya