悠良はもう彼と口喧嘩をやめた。「大久保さん、二日ほど出かけるから。その間、私たちのご飯は作らなくていいからね」大久保はうなずき、「気をつけて行ってらっしゃい」と声をかけた。「うん」その時、ユラが悠良の足元に駆け寄り、頭をぐいぐいと擦りつけてくる。悠良は視線を落とし、ふわふわの頭を撫でた。「大丈夫、二日だけだし、すぐ戻ってくるから」ユラは足元でくぅんと鳴き、不満そうに見える。伶も宥めるように声をかけた。「この二日、ちゃんと家でいい子にしてろよ。もしイタズラしたら覚悟しろ」ユラはまた堪えきれずに鳴き声を漏らした。悠良は思わず口を挟む。「ちょっと、いい加減脅かすのやめてくれる?」「脅かしてない。事実を言っただけだ」「......くぅん」ユラはしょんぼりとうなだれ、また小さく鳴いた。悠良はぱしんと伶の肩を叩いた。「もうやめてよ。怯えさせちゃったじゃない」そう言ってから、再びユラの頭を撫でながら耳元で囁く。「さっきのは嘘だから安心して。彼がユラに何かしたら、私が代わりに殴ってやるんだから」ユラはぱっと顔を上げ、興奮気味に二声吠えた。まるで悠良の言葉に賛同しているかのようだ。悠良はつい伶の方を見やり、顎を軽く上げる。「見た?ユラが賛成してる」伶は呆れ顔で二人を一瞥し、立ち上がった。「ユラまで連れて行くつもりなのか?」ユラはその言葉を聞くなり、尻尾をぶんぶん振りながら悠良を見上げる。悠良はその視線に負けそうになりつつも、頭を撫でて言った。「ごめんね、今回は仕事だから連れて行けないの。でも大丈夫、できるだけ早く帰るし、美味しいものを買ってきてあげるから」そう言い残し、悠良は伶と共に家を後にした。車に乗ると、光紀がすぐさまアクセルを踏み込む。伶は窓越しに、門口からずっと車を見送るユラに目をやった。「だから言ったろ、あんまり構うなって。あいつは冗談を本気にするんだ。家でのんびり暮らしすぎて、世の中の厳しさなんて知らないんだから。外で働かせてみたら、すぐ分かるさ」悠良は彼の足をぱしんと叩いた。「ちょっと、頭おかしいんじゃない?自分が働くのは勝手だけど、犬まで巻き込む気?」伶は痛みに顔をしかめ、唇から低い唸り声を漏らす。「なんか最近、犬より扱い悪く
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