「本当、昨日はすいませんでした……」「いいよ、もう。ほら、顔を上げて」 花壇の前で頭を下げる兼太に、菜乃花がそう言って小さく笑った。「私もね、ちょっと意地悪だなって思ってたんだ。あれが事故だってのは分かってる。勿論、確認もせずに入ってきたのは駄目だけど……でも兼太くん、あれから何度も謝ってくれたのに。 なんでだろうな。兼太くんの慌てる顔を見てたらね、ちょっと意地悪してみたくなっちゃったんだ」「意地悪って、そんな」「ふふっ、ごめんなさい」 そう言って微笑む菜乃花に、兼太の顔がまた赤くなった。 そして今しかない、そういった思いが、兼太の中に強く沸き上がってきた。「あ、あの……それでなんですけど、菜乃花ちゃ……菜乃花さん」「……ちゃんでもいいよ、別に」「え……」「子供っぽく見えることは、自分でも分かってるから。それに兼太くん、初めて会った時からずっと、私を年下だと思ってたんでしょ?」「そ、それは……はい、ごめんなさい」「中学生のね」「ああいや、だからそれは」「ふふっ、いいってば。別にもう怒ってないよ」 そう言って花に手をやり、優しく微笑む。「私はずっとそうだった……早く大人になりたい、子供っぽいって思われるのは嫌だ、そう思ってた……でもね、何でだろう。兼太くんから菜乃花ちゃんって言われるの、嫌じゃないんだ」「菜乃花ちゃん……」「だからね、それでいいよ、兼太くんは」 そう言って微笑む菜乃花に、兼太は拳を握り締め、真剣な眼差しを向けた。「菜乃花ちゃん、俺と……俺と付き合ってくれませんか」
Last Updated : 2025-09-12 Read more