この日のスタッフ会議の議題は、あおい荘で初めてのクリスマスをどう迎えるかだった。 子供の頃は、こういった季節季節での行事を楽しみにしていた物だった。保育園や幼稚園でも、先生たちが行事の意義を教えてくれて、その話に魅了され、各々が心の中で物語に思いを馳せてもいた。 しかし年齢を重ねていく中で、日々の慌ただしい生活の影に隠れていき、気が付くと「もうそんな時期なんだ」と思い出す程度になっていく。 直希は季節の移り変わりや、古くから伝わる風習や伝統を大切にしたいと考えていた。それはどの施設でも同じで、季節ごとに飾り付けや催し物を利用者と共に行うことで、コミュニケーションも深まり、変化の少ない生活の中に刺激を与えることが出来るからだった。 * * *「サンタ役は当然、直希よね」「いやいやつぐみ、当然って何だよ」「あら、サンタは男でしょ。それとも何? 直希は私たちにサンタの衣装を着せて、それをいやらしい目で楽しみたいのかしら」「……あおいちゃんや菜乃花ちゃんもいるんだし、冤罪を吹っ掛けるのはやめてくれ」「ふふっ。それでみなさんへのプレゼントは……このリストね」「あ、はい。私とあおいさんで、みなさんが喜んでくれるんじゃないかと思う物を書き出してみました」「山下さんには映画のDVD、まあ順当よね。それから小山さんには……あら、菜乃花手編みのマフラーなの? いいわね、これ」「は、はい……部屋では編めないので、学校で少しずつ編んでるんです。 おばあちゃん、ここに来て本当に元気になりました。直希さんやつぐみさんには、本当に感謝しかありません。足の方も、毎日リハビリを頑張ってくれてますので、少しずつですけど、歩けるようにもなってきました。だから、その……このマフラーをつけて、外を一緒にお散歩出来たらいいなって思って。あと手袋と毛糸の帽子、これはあおい荘からのプレゼントとしてあげたいと思ってます」
Last Updated : 2025-09-02 Read more