突然のナースコールに、食堂にいた直希とあおいの表情が変わった。「山下さんのお部屋からです」「山下さん……多分押し間違いだと思うけど、この前のこともあるし……あおいちゃん、悪いけど行ってきてもらえるかな。これ、鍵ね」「はいです、行ってきますです」「俺が行きたいところなんだけど、節子さん、離れてくれそうもないし」「大丈夫です、任せて下さいです」「頼むね。それと……前みたいなことになってるようなら、その時は呼んでくれていいから。あおいちゃんはまだ、あのモードになった山下さんのこと、よく分かってないと思うから」「はいです。では行ってきますです」「お願いするね」 * * *「……山下さん、失礼しますです」 扉を開けると、山下のすすり泣く声が聞こえた。「山下さん! どうかしましたですか!」 中に入り、部屋を確認する。しかし山下の姿が見当たらない。「……山下さん? どこにいますですか」「……あ、あおいちゃん……ごめんね、こんなことで呼んじゃって……悪いんだけど、こっちに来てもらえないかしら……」 声はトイレからしていた。あおいが扉をノックし、「失礼します」と言って扉を開けると、そこには便器に座り泣いている山下の姿があった。「山下さん山下さん、どうされましたですか」「あおいちゃん、来てくれてありがとね……あおいちゃんが来てくれてよかったわ……直希ちゃんだったらどうしようって思ってたから」「……」 あおいが床に視線を移すと、水浸しになっているのが見えた。 山下がトイ
Last Updated : 2025-08-23 Read more