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บททั้งหมดของ あおい荘にようこそ: บทที่ 141 - บทที่ 150

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141 姉妹

 「……あなたがこの半年、どんな日々を送ってきたのか分かったような気がするわ」「……」「それで、ここからが本題。あおい、あなたはこれから、どうするつもりなのかしら」 改めてしおりが、厳しい表情であおいを見据えた。「今だけは許してあげます。あなたの本当の思い、聞かせなさい」「私は……」 しおりから発せられる強い圧を感じながら、あおいが口を開いた。「姉様。私はこれまで、父様や兄様、姉様に守られて生きてきました。何不自由ない風見家の中で、それが当然であるかのように思い、疑問に感じたこともありませんでした。 確かにその……いつも兄様や姉様と比べられて、みじめに感じたこともありましたです。でも、それでも私は、この風見家での生活に不満などなかったです」「嘘ね」「嘘ではないです」「いいえ、嘘よ。私はあなたの姉として、ずっとあなたを見てきました。確かにあなたは、何不自由なく生きてきた。でも時折見せる、もっと自由に生きてみたい、そんな憧れにも似た思いをしているあなたを、何度も見てきました」「それは……」「そういう意味では今、あなたは望んでいた生活を実現出来た」「ありがとうございます、姉様……それで続きなんですが、私は父様から、縁談を持ちかけられました。その時私の中に初めて、自分はなんて不幸なんだろう、そんな気持ちが生まれましたです」「……」「これまで、たくさんの恩を受けてきましたです。私のような者に、これ以上にない幸せを与えてくれた風見家。それなのに私は、あの人との縁談を勧められた時、風見家に対して、憎しみの気持ちが生まれたような気がしましたです。それはただの我儘なのに」「我儘ですか」「はいです、我儘です。これまで風見家から受けてきた恩を、少しでもお返し出来る機会だと言うのに、私は
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142 風見家の三兄妹

 「姉様、煙草吸われてましたですか」「仕事仕事の毎日だし、ストレス発散って思ってたら、いつの間にかね」「駄目ですよ姉様。煙草を吸ってると、心筋梗塞になりますです」 あおいの言葉に、しおりが煙を一気に吐き出した。「ごほっ、ごほっ……あなたねえ、喫煙者に向かってなんてことを」「でもでも、栄太郎さんもそうでしたです。左肩とか痛くありませんか? 私は姉様に、死んでほしくありませんです」「……飛躍しすぎよ、あおい」 そう言って煙草を揉み消すと、先ほど信一郎が使ったベルを鳴らした。「なん……ですか?」「ふふっ」 再びドアが開き、あおいの兄、風見家の跡取りである幸一郎が入ってきた。「あおい、久しぶりだね」「兄様! お久しぶりです!」 幸一郎の姿に、あおいが嬉しそうに声を上げた。「その様子だとしおり、あおいが勝ったみたいだね」「そうね。ひとまずは、だけどね」 そう言ってしおりが椅子から立ち上がり、あおいの隣に立った。 幸一郎は椅子に座り、穏やかな笑みのまま、二人に向かって言った。「じゃあ……始めようか。これから僕たちが成すべきことを」 その言葉にしおりがうなずく。 あおいはきょとんとした顔で、幸一郎としおりの顔を交互にみつめた。「あおい。今回のことはね、僕からしおりに頼んだことなんだ」「兄様が、姉様に」「うん、そう。しおり、まずは今までの経緯を教えてあげてくれるかな」「分かったわ。あおい、これから言うことは、風見家の次期当主であるお兄様、森園グループ後継者の妻である私、そしてあおい。私たちの未来についてのことだから。そう思って聞いて欲しいの」「未来について、ですか……でもそれならば、父様にも入って頂かないと」「親
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143 介護問答

 「やっと本題ね」「そうだね。でもその前に」 そう言って幸一郎が内線で、椿にコーヒーを持ってくるよう頼んだ。「ソファーに座ろう」 幸一郎がしおりとあおいに促す。「ええ。でもお兄様、少しだけ時間、貰えるかしら」 言うか言わないか、しおりはあおいを抱き締めた。「ね、姉様? あの、その……」 やはり来たかとあおいが赤面し、声を漏らす。 しおりはそんな言葉にお構いなく、キス攻撃を始めた。「ひゃっ……駄目です姉様、おやめくださいです」「何を言ってるのかしら、この可愛い子猫ちゃんは……あなたがいなくなって、私がどれだけ寂しい思いをしたと思ってるの? あなたが何を言おうとキス、気が済むまでさせてもらいますから」 頬に、額に、しおりの口紅がつく。あおいが羞恥に身悶えると、「もぉ~、そんな反応されたら私、もっと可愛がってあげたくなるじゃない!」 そう言って、更に強く抱き締めた。 耳を甘噛みすると、あおいが「ひゃん」と声を漏らす。その仕草にしおりの目は爛々と輝き、あらぬところにまで手をやった。「に、兄様……姉様を止めて……止めてくださいです……」「はははっ。すまないけど、しばらく好きにさせてやっておくれ。この半年、しおりはずっと我慢してたんだから」「そ、そんなぁ」「あおい、あおい……私の子猫ちゃん!」  * * * しばらくして椿が、コーヒーを持ってきた。「ありがとう、椿さん」「お話がいい方向に向かっているようで、何よりです」 椿がそう言って笑う。そして顔中にキスマークが残るあおいを見て微笑むと、頭を下げて部屋を後にした。 怒涛のキス攻撃に動揺したあおいだ
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-04
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144 スタッフ・家族・利用者

 「死ぬことだけが、みなさんに残された仕事……」「そう。言ってみれば彼らは、もう必要ない人なの。それどころか、この社会を支えている人たちの重荷になっている」「そんな……」「事実そうでしょう。今の日本で、親の介護が理由で仕事を辞めている人が、どれだけいるか知ってる?」 あおいの脳裏に節子の娘、安藤の疲れ切った顔が浮かんだ。「私が目指す介護。それはね、利用者の為の物じゃない。家族の負担を減らすことが全てなの」 同じようなことを、あおいはつぐみから聞いたことがある。確かにこの高齢化社会において、家族の負担は大きくなっていく一方だ。 しかしあおいは、しおりとつぐみの言葉が、決定的に違うことを感じていた。 つぐみは言った。利用者と家族、どちらも救わないといけないのだと。「でも、彼ら利用者を受け入れるには、この国のシステムはあまりにも未成熟なの。だからね、私たちはそこにメスを入れようとしているの」「……どのようにですか」「あおい荘の、月々の費用はどれぐらいなのかしら」「は、はいです。食費も光熱費も全て込みで、月7万円です」「7万? あなたそれ、本当なの」「はいです。それで全てです」「全く……何よそれ。新藤直希って男は一体、何を考えてるのかしら」「直希さんは……それでいいんだって言ってましたです。お金儲けが目的で始めたのではないからと」「そういう話じゃないのよ。仕事という物はね、正当な対価があってこそ成り立つものなの。家に住んで、食事も三食。好きなだけ電気も使って、何かあった時にはヘルパーも使える。それだけのことをしてるのに、全く儲けがない。と言うか、不足分は新藤直希が自分で出している。それはね、仕事ではなくただの自己満足なの」「そんなことはありませんです。直希さんは本当に、みなさんの幸せを願い、あおい荘を立ち上げたのです」
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-05
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145 理想論と現実論

 「新藤直希がしていること。それはただの偽善よ、あおい」 しおりの言葉に、あおいが表情を変えた。「彼がしていることは、目の前で困っている人に施しを与えているだけ。どこまでも自己満足。それじゃこの問題を解決出来ない」「そんな……いくら姉様でも、今の言葉は受け入れられません。直希さんは、直希さんは本当に、みなさんの笑顔の為に頑張っていますです」「頑張ってないとは言わないわ。勿論、彼は彼なりに頑張ってるのでしょう。実際、彼のおかげで助かった人たちもいるのでしょう。でもね、新藤直希のやり方で、一体どれだけの人が救えるのかしら」「……」「10人? 20人? 彼がどれだけの資産を持ってるのか知らないけど、もしそれが尽きたらどうするの?」「でも、それでも……直希さんのおかげで今、あおい荘のみなさんは笑顔になってますです」「7人、だったかしら。ふふっ、おままごとね」「姉様!」「しおり、ちょっと言葉が過ぎるよ。そんな言い方をしても、あおいがますます頑なになってしまうだけだ」「……そうね、その通りね……ごめんなさい、今の言葉は撤回するわ。でもね、撤回はするけど、それが真実なの。彼がどれだけ身を粉にしても、彼のやり方では多くは救えない。ほとんどの人たちの涙を消すことは出来ないの」「……」「それでも彼が、あおい荘に入れないほとんどの人たちに背を向けて、自分の周りだけで楽しい世界を作ると言うのなら、それでもいいんだけど」「直希さんは……そんなこと考えていませんです。直希さんなら、直希さんなら必ず、一人でも多くの人の涙を消し去ろうとするはずです」「……話が少し熱くなってきたね。それに脱線もしている。この話はここまでにしよう」 幸一郎がそう言うと、しおりは両手を上げて、「それもそうね」と笑った
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-06
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146 あおいの街に

 「ここがあおいちゃんの街か……」 駅に降り立った直希が、真っ白に染まった街を見てそうつぶやいた。「いいところだな。純粋で真っ白なあおいちゃんって感じがするな」 そう言って笑うと、携帯を手にした。 指定された番号を押すと、すぐに応答があった。「あおい荘の管理人をしてます、新藤直希です。今、駅に着きました」 すると直希の前に、黒塗りの車が静かに現れた。「……用意のいいことで」 出てきた男が扉を開くと、直希は一礼して中へと入った。「……」 車には運転手と、黒服の男が助手席に座っていた。 雪景色の中を、車が静かに進んでいく。そしてしばらく進んだ頃に、直希が口を開いた。「ここが……あおいちゃんの生まれ育った街なんですね」 すると運転席の方から、穏やかな声がした。「あおいお嬢様は……正にこの街そのものです。幼少の砌〈みぎり〉よりお仕えしてまいりましたが、あおいお嬢様は本当に真っ白で、純粋な方に育ってくれました」 嬉しそうに語る、年老いた声。その口調に、緊張感が少しやわらいだような気がした。「子供の頃のあおいちゃんは、どんな感じだったのですか」「今も昔も変わっておられません。ただただ無垢で、私共が触れてはならないような、世間の穢れに決して侵されない、気高く美しい方でございます」「……」「ですが先ほど、少しお顔を拝見させていただきましたが、あおいお嬢様、少し変わられたように感じました」「どのように、でしょうか」「目に力がございました。あのような力強いあおいお嬢様、見たことがありませんでした」「……」「この街を出られてからの半年で、何があったのかは存じません。ですがこの半年は、あおいお嬢様にとって本当に素
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-07
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147 遭遇

 「あおいの姉、森園しおりです」 扉を閉めたしおりが、直希の前に進む。「はじめまして。新藤直希です」 立ち上がった直希と握手を交わし、しおりは直希に座るよう促した。 直希の前に座ったしおりは、煙草を取り出して「構いませんか?」そう尋ねてきた。直希は苦笑し、自分も煙草を取り出した。「あなたもお煙草、吸われるのですね」 そう言って、しおりが電子ライターで火を点け、直希にも差し出した。「ええ。でも最近ちょっとあって、今がやめ時なのかと悩んでるところです」「そうですね。何しろ煙草を吸っていると、心筋梗塞になるそうですから」 しおりの言葉に、直希は煙を吐き出してむせ返った。「ふふっ……ごめんなさい、少し意地悪だったかしら」「……あ、あおいちゃんから聞いたんですね」「ええ。直希さんのおじい様もそうだったからと。私もあおいに言われた時、あなたと同じようになりました」「なりますよね、普通」「それで……この街はいかがですか」「いい街だと思います。穏やかで優しくて……あおいちゃんはこんないい街で育ったんだ、そう思うと妙に納得してしまいました」「ふふっ、私も同意見です」「まあでも、もう少し暖かい方が、俺的には助かるのですが」「寒いのは苦手ですか?」「ええ。夏の生まれだからかもしれませんが、寒いのは苦手ですね。暑いのは平気なのですが」「その暑い季節に、あなたはあおいと出会った」「……」「この辺りは真夏でも、そんなに気温は上がりません。きっとあの子には辛かったと思います」「ですね。俺があおいちゃんと初めて会った時、彼女はあおい荘の前で倒れてました」「なるほど。中々に刺激的な出会いだったのですね」「彼女、熱中症になりかけてました。あおい
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-08
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148 偽善

 「森園さんと共に、この業界を変えると」「私のことは、しおりで構いません。可愛い妹の恩人なのです。フランクにお付き合いしたいですから」「……しおりさん、でいいんでしょうか」「ええ」「ではしおりさん。業界を共に変えていくとのことですが、それは具体的に、どうしようと思われているのでしょうか」「あなたの介護に対する思いは、あおいが熱く語ってくれました。どんなことにも真っ直ぐ向き合い、冷静に判断する能力に長けた子です。おかしな勘違いはしていないと思います」「何を言ったのかは、気になるところですが」「ですが先ほど申しましたように、あなたの経営するあおい荘では、20名ほどの人間しか利用出来ない」「ええ」「私共と協力し、事業を大きく広げる気持ちはありませんか」「……事業の拡大、ですか」「ええ。あなたはこの世界から、哀しみを消し去ろうとしている。あおいの言葉から、私はその様に感じました。ですが今のやり方では、全ての高齢者や家族の苦しみを癒すことは出来ない。 私共は今、この業界を変える為に行動を起こしています。あおいがここまで傾倒するあなたに、是非協力していただきたいと思ってます」「……」 直希は目を閉じ、しおりの真意を探ろうとした。 そして静かに煙草を消すと、ゆっくりとしおりに視線を移した。「それは……資金面で俺に協力する、ということでしょうか」「ええ」「ですが共同経営となると、今の俺のやり方にも意見が入ってくる。そういうことですよね」「勿論そうなります。ただ資金を援助するだけで、経営方針に口を挟まないなんてこと、あるはずがないですから」「あの……ですね、金なら俺もそれなりに持ってまして、少なくとも今のあおい荘の規模の施設なら、いくつか経営することは可能なんです。わざわざしおりさん、と言うかあおいちゃんの家
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-09
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149 幸せとは

 「あははははははっ」 直希の言葉に、しおりが大声で笑った。「失礼、ふふっ……偽善と言われてそんな返し方をした人、初めてだったもので」「屁理屈をこねてすいません」「この言葉は、人によっては『悪』よりも嫌な言葉なんです。自分の行いを全否定されているような気持ちになります。偽りの善行だと言われている訳ですから。それを……ふふっ、人の為の善だなんて、思いもよらない返しでした」「まあ、屁理屈の塊みたいな返しですけどね。ですが……言葉遊びは置いておいて、俺の行動は、まだその偽善にすら至ってないと思ってます」「と言いますと」「善であれ偽善であれ、善という言葉がつく以上、同じステージにある物だと思ってます。例え偽善を、偽りの善だと揶揄する人がいたとしても、その行為で幸せになる人がいる以上、俺にとっては尊敬すべき行為です。ですが俺の行動は……人の為になっているかどうか、よく分かってません。 俺はただ、自分がしたいことをしているに過ぎません。あおいちゃんが、そんな俺のことを評価してくれているのは嬉しいです。ですが俺自身がまだ、自分の生き方を模索中の身なんですから」「……」「あおいちゃんから聞かれているかもしれませんが、俺は幼い頃に両親を亡くしました。それからずっと、考えていたことがあります。幸せとは何なのか、運命とは何なのだろうかと」「ご両親のことは、伺っております」「この世界の価値として、経済的な幸福というものがあります。どんな綺麗事を囁こうとも、経済が成り立っていないと幸福は実現しにくい。この世の中、お金がないと出来ることも限られてきますから」「その通りだと思います」「ですが、お金で全てが手に入る訳じゃない。現に俺は両親を亡くした。うちの家は、両親が工場を経営していて、一般の家庭よりは恵まれた生活をしていたと思います。小さかったのであまり覚えてはいませんが、それでも俺自身、自分が不幸だと思ったこ
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-10
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150 姉の思い

  直希の確信に満ちた言葉に、しおりは言葉をなくした。 この男はこれまで、たくさんの絶望に触れてきた。そしてその度に決意し、行動してきた。 介護の世界に足を踏み入れ、自分も数多くの修羅場を目にしてきた。何度も心が折れそうになった。 恐らく彼は、自分より過酷な現実を目の当たりにしてきた筈だ。しかしそれでも挫けることなく、自分の理想の為に走り続けている。 その集大成が「あおい荘」なんだ、そう思った。「ふふっ」 しおりが自嘲気味に笑う。「何か……おかしかったでしょうか」「いえ、ごめんなさい。あなたを笑った訳ではありません。そうですね……どちらかと言えば、過去の自分に笑われている自分……そんな自分が滑稽に思えた、というところでしょうか」「……」「あなたの介護に対する考えは、理解出来ました。その上でもう一度お聞きしますが、私共と手を取り合うことには」「この業界の為に出来ることがあるのであれば、協力は惜しみません」「でも、俺のすることに口は出すなと」「言葉にするとかなり乱暴ですが……俺の軸になる部分については、そうなると思います」「そうですか」「一人一人の生き様を、俺は心に刻みたいと思ってます。俺は利用者さんたちと、深くつながりたい。ただ俺のやり方では、しおりさんがおっしゃるように多くを救うことは出来ません。 ですがしおりさんには、多くを救うことが出来る。考え方に違いはあるかもしれない。でも根本のところではきっと、俺たちはつながっています。そうでなければ、この世界に入ろうなんてこと、考える訳がない。だから……お互いに協力しあって、一人でも多くの方の笑顔を守っていきたいです」 そう言った直希の笑顔に、しおりは動揺した。 この男の器は……計り知れない。 この私が飲み込まれそうだ。
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-11
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