興奮が続く中、花見大会は始まった。 あおいと菜乃花が慌ただしく場内を動き回り、皆に酌をしていく。 気になった直希が立ち上がろうとするが、その度に「今日はまかせてくださいです」と何度も断られた。 落ち着かない直希につぐみは、「任せたのは直希でしょ。ほら、もっと落ち着いて。私たちも楽しみましょう」と笑った。 今回の花見大会。直希に任されたあおいと菜乃花は、企画の段階から入居者に協力を申し出ていた。 施設での催しごとに利用者も協力する。そこに必ず意義がある、そう思っての行動だった。 今回は女性入居者に協力してもらった。次の企画の時は男性陣に依頼するつもりだった。 料理は菜乃花と小山、文江が担当した。 山下は「桜」にまつわる映画の紹介をする。 そして節子は「花見」そのものについて語った。「花見の起源には諸説あるんじゃが、奈良時代には始まっていたとされている。もっともその頃は貴族の間での風習で、花も桜ではなく梅だったようさね。 それが平安時代になって、桜へと変わっていった。その頃から桜は、日本人にとって特別な花となっていった。 花見と聞いて有名なものと言えば、太閤秀吉の「醍醐の花見」や「吉野の花見」と言ったところかね。その頃には桜というもんが、武士の生き様、哲学に重ねられていたとも言える。 桜の如く、散り際も美しく……そう言う意味では、果たして私らはこの場にふさわしいと言えるかどうか」 その言葉に、入居者たちから笑いが起こる。「いやいや節子さん、それに皆さんも。そこは笑っちゃいけないところでしょ」「じゃが」 節子が直希の言葉を遮る。「今日の小山さんを見てるとね……老いてなお生に執着し、青年の様に前を向き、日々を戦い生きていく。そんな生き方もありと思うさね」 節子がそう言うと、入居者たちから力強い拍手が沸き起こった。「生涯青春。あおい荘に住む私たちは、これでいこうと思うさね!」 節子が笑顔で、直希
Last Updated : 2025-12-01 Read more