「え……」 つぐみが声を漏らした。 俺はあおいちゃんが好きだ、そう告げられると信じて疑っていなかった。 真面目な直希のことだ、告白もした幼馴染の自分に伝え、けじめをつけようとしているのだろう、そう思っていた。 直希からのプロポーズ。 つぐみは自分の耳を疑った。 壊れつつある精神が幻聴を聞かせたのではないか、そう思った。「今……なんて言ったの、直希」「俺と結婚してくれ、つぐみ」 もう一度告げられた直希の想い。その言葉に、体から力が抜けていくのが分かった。 つぐみは何も答えず、もう一度ゆっくりとうつむいた。「……つぐみ?」 そして小さく息を吐くと、今度は勢いよく顔を上げた。「何を言ってるの? あなたは今日、あおいと会ってたのよね。そこで告白して付き合うことになった。その報告をする為に、私をこんな場所にまで連れて来たのよね」「あ、いやその……違うぞ」「……」 直希の目は、嘘をついているようには見えなかった。想定外の言葉につぐみは混乱した。「でも……直希はあおいのことを」「ああ、好きだよ。今でも大好きだ」「だったら」「でもそれは、人として尊敬してるって意味だ。勿論その……女の子としても意識してなかった訳じゃない。それに……事実俺は、あおいちゃんに告白もされていた」「……」「だから真剣に考えた、悩んだ。でもな、考えれば考えるほど、悩めば悩むほど、俺の中でつぐみ、お前のことが大きくなっていったんだ」「何よそれ。私のこと、馬鹿にしてるの?」「ああいや、気に障ったのなら謝る。でもそうじゃなくて、俺が言いたいのはそうじゃなくて」
Last Updated : 2025-11-21 Read more