つぐみと菜乃花の喧嘩を治めた後。二人はあおい、明日香に連れられて部屋へと戻っていった。 一人残された直希は部屋に戻り、布団に寝転び天井を見つめていた。 本当なら、あおいを送り届けた後で、栄太郎の様子を見に行くつもりだった。 しかし、それどころではなくなってしまった。 栄太郎のことも心配だったが、大丈夫だと言ってくれたつぐみの言葉を信じ、今日はあおい荘のことだけを考えよう、そう思った。 そして夜。 様々なことが頭に浮かび、さながら脳内は、これまでの半生を振り返るイベントの様相を見せていた。 そして。 考えれば考えるほど、これまでの言動に嫌気がさしてきた。 * * * 昨夜、あおいに告白された。 卒業式の日、つぐみに告白された。 みぞれとしずくの父親になってほしい、そう明日香に言われた。 そして今日。 菜乃花から二度目の告白を受けた。 これまで、罪人である自分にそんな資格はないと、彼女たちの想いを拒んで来た。しかし昨夜、あおいからその罪を許され、そして罰を受けることになった。 幸せになるという罰を。 もう、今までのような言い訳は出来ない。 彼女たちの想いと向き合い、結論を出さなくてはいけない。 そう思うと、自分でも驚くぐらい混乱するのが分かった。 ある意味、十字架を背負っていた時の方が楽だと思えるぐらい、彼女たちの気持ちが重くのしかかってきた。「なんだよこれ……」 どれだけ自分は、不幸に依存してきたのか。 不幸を望んでいるが故に、バランスを保っていた自分。そんな自分が滑稽に思えた。 そして今。自身の答えが誰かを傷つけることになると思うと、頭が痛くなった。吐き気がしてきた。 誰も不幸にしたくない。みんなに笑顔でいてほしい。 自身を顧みず、人の幸せを望むことがどれだけ楽な生き方だったかを、思い知らされているようだった。
Last Updated : 2025-11-01 Read more