Semua Bab あおい荘にようこそ: Bab 31 - Bab 40

64 Bab

031 大切なこと

 「ではでは文江さん。血圧測らせてもらいますです」 朝のバイタルチェック。つぐみが見守る中、あおいが直希の祖母、文江に腕帯を巻いて測定する。 あおいが使用している血圧計は、市販の測定器。つぐみは水銀式にこだわっているが、最近の電子計測器でもかなり正確な数値が出るようになっているので、あおいたちが使用する分には構わないと許可を出していた。「はい、終わりましたです。文江さん、今日も健康そのものです」「うふふふっ。ありがとう、あおいちゃん」「うっ……」 つぐみが口を押えてうつむく。「どうしたんですか、つぐみさん」「あ、うん……あおい、立派になったなって思って……」「ええええっ? 血圧測っただけでですか?」「うふふふっ。つぐみちゃん、毎日大変だったものね」  * * * あおいを連れて初めてバイタルチェックに行った日。 この日はつぐみが、各部屋で入居者の血圧を測っていた。 まずは私の動きを見ておきなさい、見て学ぶことも大切だから。 つぐみの言葉にうなずき、あおいはつぐみの動きを観察した。 体温、血圧を手馴れた様子で測っていき、そして前日の排便等を聞いて記入する。その後、体調に変化がないかを確認し、気になったことがあれば記録する。 そしてその間中、ずっと笑顔で接していた。 「じゃああおい、私の血圧、測ってみなさい」「あ……は、はいです!」 昼の休憩時間を利用して、食堂での測定講習が始まった。 腕帯を手に取り、つぐみの方を向く。「朝、私が測ってたの、ちゃんと見てたわよね。その通りにすればいいのよ。6人分の計測を見てたんだから、出来るはずよ。私を入居者さんだと思って、声掛けも忘れないようにね」「は、はいです…&helli
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-14
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032 下着事件

 「そう言えばそうですね。最近直希さんが洗濯してるところ、見てないです」 食堂であおいと菜乃花が、おやつの準備をしながら話をしていた。「そのことなんですけど……その話、私たちにも関係あるんです」「そうなんですか? 直希さんのお仕事が減るのは、いいことだと思いますです。直希さん、ずっと働き詰めですし」「そう、ですよね……考えてみたら、私たち三人がここで働くまでは、全部一人でしてたんですから」「休みもなかったと聞いてますです」「本当、働き者ですよね」「直希さんには、もっともっと自分の時間を持ってもらいたいです」「……つぐみさんと、ここがオープンしたばかりの頃に言い争ってたことがあるんです。そんなに何もかも一人でやってたら、いつか体を壊すって。つぐみさん、あの時かなり怒ってました」「直希さんは、何て言ってたんですか?」「俺は倒れたりしないって。それはもう、すごい勢いで」「何となく……想像出来ますです」「でも、つぐみさんも引かなくて。それでももし倒れたら、このあおい荘を誰がやっていくんだって。だからスタッフを雇って、効率よくしなさいって」「そういう意味では、今はつぐみさんの思ってた通りになってるんですね」「はい、確かに今はそうなんですけど……その時直希さん、言ったんです。このあおい荘は、自分がずっと思い描いてきた理想の施設なんだ。今ある他の施設では出来ないことを、やっていきたいんだ。それに賛同してくれる人、自分が心から信頼出来る人に出会うまでは、一人でやっていくんだって」「直希さん、そんなこと言ったんですか」「はい。それでつぐみさん、泣いちゃって……あなたが理想としている介護、それは理解出来る。でもその理想を共に背負ってくれる人になんて、簡単に出会える訳がない。あなたの理想は、献身を通り越した自己犠牲でしかないんだからって」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-15
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033 あおい荘の一大事

 「直希さん! 直希さん!」 あおいに寄り掛かったまま、意識をなくした直希。あおいは直希を抱き寄せ、何度も名前を呼んだ。「あ……あ……」 コップを落とした菜乃花は、呆然と直希を見ている。「菜乃花さん! おしぼりを持ってきてくださいです!」 いつもと違うあおいの厳しい口調に、菜乃花は我に返り、「は……はいっ!」 そう言ってカウンターに走った。「直希さん、しっかりしてくださいです。大丈夫です、私たちが何とかしますです」 直希の髪に指を通し、優しく撫でる。直希は苦しそうに、小刻みに息をしていた。「あおいさん、これを!」「ありがとうございますです。それからすいません、今すぐ東海林先生に電話してくださいです」「わ、分かりました」 おしぼりを額にそっと当て、汗を拭う。そのひんやりした感触に、直希が笑ったように思えた。「直希さん……こんなになるまで働いて……私が頼りないから……私がもっとしっかりしてたら……ごめんなさい、ごめんなさいです……」 あおいが肩を震わせ、直希を抱き締めた。 そしてしばらくすると小さく息を吐き、厳しい表情で菜乃花に言った。「菜乃花さん、先生はどうですか」「ご、ごめんなさい。まだつながらないんです」「分かりましたです。先に直希さんを部屋で寝かせるです。私が連れて行きますので、布団をお願いしたいです」「は、はい、分かりました。でもその……鍵はどこに」「ちょっと待ってくださいです。直希さん、失礼しますです!」 そう言って直希のスボンのポケットに手を入れる。そして中を探り、鍵を取り出した。「はいです菜乃花さん! お願いします
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-16
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034 あおいの入浴介助

  上は半袖シャツ、下はジャージを膝までまくりあげる。滑り止めの為、入浴介助用に購入したスニーカーを素足で履く。「では小山さん、お風呂ご一緒させていただきますです」 脱衣場。 車椅子の小山の前で腰を下ろし、あおいが笑顔で言った。「よろしくね、あおいちゃん」 そう言った小山の笑顔には、あおいに対する信頼が感じられた。 この信頼を裏切ることは出来ない。事故なく、小山さんに楽しい入浴時間を過ごしていただくんだ。 笑顔を絶やさずにあおいは、直希やつぐみ、そして講習でお世話になった教員の言葉を胸に、小山に声をかけた。「では服の方、脱がさせていただきますです」 そう言ってボタンを外し、上着から脱がせていく。 「介護の基本は声掛けよ。どんな時でもまず、声をかけること。勿論笑顔でね。でないと、いきなりヘルパーが体を触ったら、何をされるのかと不安になるでしょ?」  はいです……つぐみさん、大丈夫です……  つぐみの言葉を思い出し、次に何をするのかを丁寧に、そして笑顔で伝えていく。 上着が終わると、次にズボンにかかる。「では小山さん、少し車椅子を移動しますですね」 そう言って、車椅子を少し壁側に移動した。  * * *「きゃっ! な、なんですかこれ……」「ははっ、驚いたろ?」「はいです。思わず足が上がってしまいましたです」 直希に車椅子の扱いを教えてもらった時のこと。 庭に用意された車椅子に、あおいが乗っていた。 そして直希が車椅子を突然押すと、あおいは慌てて肘掛けを握りしめ、後ろに体重を乗せた。「どうだった? 今の気持ち」「……なんかこう……うまく言え
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-17
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035 ちっぽけなプライド

  あおいたちが仕事に追われている頃。直希は東海林の診察を受けていた。「どう? お父さん」 診察をひと通り終わらせた東海林が、不安そうに見つめる娘、つぐみに苦笑した。「大丈夫だよ。疲れが溜まっていたんだろう。それで弱ったところに風邪でももらった、そんなところだな」「よかった……」 父の言葉に、つぐみは脱力して大きく息を吐いた。「おいおい、いくら知り合いでも、患者さんの前でそんなに動揺するもんじゃないぞ」「うん……分かってる、ごめんなさいお父さん」「まあ、直希くんが相手なんだ、仕方ないとも思うがな。はっはっは」「もう……何よそれ……」「そういうことだから。直希くんも心配しないでいいよ」「ありがとうございました……じゃあ俺、仕事があるんで」 そう言って布団から出ようとする直希の頭を、つぐみが押さえつけた。「何馬鹿なこと言ってるのよ。今の話、聞いてなかったの?」「聞いてたよ。ただの過労だろ? それにほら、注射もしてもらったし、熱もじきに下がるから」「いい加減にしなさいよ、何であなたはそう……馬鹿なのよ」「ごめんな、つぐみ。でも俺が行かないと、夕飯の支度が……それに風呂だって」「もうみなさん、お風呂に入ったみたいだよ。それにほら、今は18時。もう食べてる頃だよ」「……でも、どうして……」「あなたね、あおいと菜乃花のこと忘れてるの? このあおい荘にはね、オープンした時と違って、優秀なスタッフが二人もいるんだからね」「あおいちゃんと菜乃花ちゃんが……」「もう少ししたら私も合流するから。だから直希は休んでなさい」「ただの過労だぞ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-18
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036 熱い視線

 「あ、あのその……直希さん、失礼します……」 夕食も終わり、あおい荘の一日の業務が終わろうとしている頃合いで、菜乃花が直希の部屋へと入ってきた。「ああ、菜乃花ちゃん。今日は色々とごめんね」「いえ、そんな……あのその、ちょっとお邪魔してもいいですか」「うん、勿論。入って」「それでは……お邪魔します……」 直希の枕元に座った菜乃花。手には土鍋を乗せたトレイが持たれていた。「直希さん、その……少しでも食べられますか? おかゆ、作ったんですけど」「菜乃花ちゃんが作ってくれたの? 助かるよ。薬のおかげで熱も下がったみたいなんだけど、そうしたら急にお腹が空いて」「よかったです。あのその……座れますか?」「うん。ちょっと待ってね」 直希が上半身を起こそうとしたが、力が入らずうまく起き上がれなかった。 菜乃花が背中に手をやり、ゆっくりと起こす。「ありがとう、菜乃花ちゃん。まいったな、これじゃ俺、介護されてるみたいだよ」「ふふっ……滅多に熱が出ない人は、少しの熱でもダメージがあるんですよ。空腹でしたら尚更です」「だね。こんなの久しぶりだよ。前に寝込んだのって、確か高校生の時……そうだ、受験前でちょっと無理してた時だ」「じゃあもう、10年くらい病気されてなかったんですね」「まあ、ちょっと熱が上がることはあったけどね。でも寝込んでしまったってのはなかったかな」「そうなんだ……直希さん、ご両親に健康に産んでもらったんですね」「そうかもね、ははっ」「でもね、直希さん。だからこそ、体調管理はしっかりしてもらわないと。いつも元気な人の方が、こうして突然倒れたりするんですからね。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-19
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037 困惑

 「直希さん、失礼しますです」 菜乃花が出てしばらくして、今度はあおいが部屋に入ってきた。 手には洗面器とタオルが持たれている。「えーっと、それはつまり……」「はいです。体を拭かせていただきますです」 そう言ってにっこり笑うあおいに、直希は諦めた表情で両手を上げた。「これもその……介助の練習、なのかな」「え? 何の話ですか?」「あ、いや、こっちの話」「ではでは直希さん、座ってもらえますですか」「了解。よいしょっと」 さっきと同じく、腹筋に力が入らないのか、うまく起き上がることが出来なかった。「失礼しますですよ」 あおいはそう言うと、正面から直希を抱き締めるように腕を回した。「……あ、あおいちゃん?」 重量感ある柔らかなふくらみが、直希の胸に密着された。あおいの髪が顔に触れる。 先ほどの菜乃花の時のように、直希が動揺した。「では……1、2の3です」 あおいの掛け声で、直希の上半身が起こされた。「どうでしたか直希さん。うまく出来ましたですか」 笑顔のあおいに、直希は視線をそらしながら「う、うん……うまくなったね」そう言った。「よかったです。これも先生と直希さんのおかげです」 そう言って嬉しそうに微笑むあおいに、直希はまた見惚れてしまった。「では直希さん、少しだけ待っててくださいです」 そう言って台所に向かうと、洗面器にお湯を入れて戻ってきた。「直希さん、ご自分で脱ぐことは出来ますですか?」「……あ、ああよかった。自分で脱いでいいんだね」「え?」「ああいや、こっちの話。大丈夫、ちょっと待ってね」 直希が上着を脱いでいる間に、あお
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-20
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038 思い出の歌

 「ねえばあちゃん、なんで父さんと母さんは死んじゃったの? なんで僕を置いていったの?」「ナオちゃん……」「僕が我儘言ったから? 先にじいちゃんとばあちゃんのところに行きたいって言ったから? だから父さんと母さん、怒ったの?」「そうじゃない、そうじゃないよ、ナオちゃん……」「……僕が悪いの? 僕が父さんと母さん、殺しちゃったの?」  * * *「……」 静かに目を開ける。 まだ体は熱かった。口の中も乾いている。全身に汗が纏わりついて気持ち悪かった。 だから思い出したくない過去を蘇らせてしまったのだ。 そう思い苦笑した。「……」 傍らに人の気配がした。ゆっくり首を傾けると、額からタオルが落ちた。「ごめんなさい、起こしちゃったかしら」 つぐみだった。月明かりの差す部屋の中、つぐみは枕元に座り、自分の顔を覗き込んでいた。「……つぐみ……ずっといてくれてたのか」「ずっとって訳じゃないわよ」「ははっ」 つぐみの答えは、ずっと傍にいたと言ってるようなものだった。「悪いな、こんな時間まで……今、何時だ?」「全くよ。私をこんな時間まで付き添わせるなんて、高くつくから覚悟しなさいよ」「だな」「今は夜中の3時半よ。どう? 少しは楽になった?」「どうかな……まだちょっと、息も熱いし……」 つぐみが額に手をやる。ひんやりとしていて気持ちよかった。「まだ下がってないわね。お水飲む?」「ああ、頼む。口の中が乾いて気持ち悪いんだ」「起きれる?」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-21
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039 明日香さんのお願い

  食堂に揃った入居者たちは、いつもと違う空気に困惑していた。 復帰した直希に声をかけようと思っていたのだが、隅のテーブルで言い争ってるつぐみと明日香が気になって、それどころではなかったのだ。 直希は膝の上にみぞれとしずくを座らせ、二人に朝食を食べさせている。  * * *「理由を教えてって言ってるのよ。全く、どうして分からないのかしら」「だからつぐみん、今は言えないって言ってるじゃない。いいじゃん別に。これまでだって、何度も二人を見てもらってるんだし」「ここは保育所じゃないんです。みんな忙しいし、直希だって昨日まで、熱出して寝込んでたんだから」「えええええっ? ダーリン、本当なの?」「ははっ……お恥ずかしい限りで」「なんであたしを呼んでくれなかったのよー。付きっきりで看病してあげたのにー」「その心配は無用です。ここには優秀なスタッフが揃ってますし、何より私がいるんですから」「ふーん。つぐみんってば、そんなところでポイント稼いでたんだー」「なっ……私は看護師、と言うか医者なんです。公私混同なんてする訳ないでしょ」「公私混同?」「あ、いえ……今のは違うわ。直希も何笑ってるのよ。私はただ、医療に携わる者として、直希についてただけなんだから」「パパー、ママとつぐみん、また喧嘩してるー」「してるー」「ははっ、そうだね。ほらほらしずくちゃん、ほっぺにケチャップついてるよ」「ありがとーパパー」「パパー、みぞれもー」「はいはい」「ちょっと直希、あなたも何か言ってやりなさいよ。なんで他人事みたいに涼しい顔してるのよ」「別にいいじゃないか。二人の面倒ぐらい、何なら俺が見るから」「そういうことを言ってるんじゃないの。そりゃね、知らない間柄でもないし、困った時はお互い様なんだから、協力するのはいいんだけ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-22
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040 西村さんのこだわり

  直希がトイレから戻ると、何やら物々しい雰囲気になっていた。「西村さん、馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ」 ラジオ体操を済ませた入居者たちが、再び食堂に集まっていた。そこで珍しく、貴婦人山下が声を荒げていた。「あなたみたいなスケベさんに、あの子たちの世話なんて任せられる訳ないでしょ。このあおい荘で犯罪なんて、勘弁してほしいわ」「と、とにかく落ち着きましょう、山下さん。はいこれ、食後の紅茶、砂糖多めに入れましたから」「そうですそうです。山下さん、こんな暑い日に興奮したら疲れてしまいますです」「ほっほっほ。山下さんは厳しいのぉ」「全く……」 大きく息を吐いた山下が、つぐみの出した紅茶に口をつける。「あら……つぐみちゃん、今日の紅茶、いつもとは違うわね」「え、ええ、そうなんですよ。これはこの前、生田さんの息子さんが持ってきてくれた分なんです。アールグレイです」「とてもおいしいわ」「あ……あははははっ」「つぐみ、何かあったのか」「な、直希、よかった戻って来てくれて。実はね」「ナオ坊や。みぞれちゃんとしずくちゃんの面倒、わしが見てもいいかの」「西村さんが? ああなるほど、そういうことね」 西村の言葉に、山下が思い出したようにまた声を荒げた。「だから西村さん、あなたはちょっと黙ってなさい」「山下さん山下さん、そんなに興奮してたら口から火、噴いちゃいますよ。ゴジラみたいに」「ゴ……うふふふふっ、直希ちゃんったらほんと、よくそんな面白いことがポンポン出て来るわね」「暑すぎて最近、頭に虫が湧いてるんですよ」「まあ……うふふふふっ」 どれがツボに入ったのか分からないが、山下が口に手を当てておかしそうに笑う。「ナオ坊、どうじゃな」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-23
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