Home / 恋愛 / あおい荘にようこそ / Chapter 61 - Chapter 70

All Chapters of あおい荘にようこそ: Chapter 61 - Chapter 70

129 Chapters

061 夫婦喧嘩

  朝食後のラジオ体操が終わると、文江は早々に部屋に戻っていった。 残された栄太郎は、庭の喫煙所で頭を抱えている。「あ、あのその……直希さん、みなさん、それじゃ私、いってきます」「あ、ああ菜乃花ちゃん。何だかごめんね、朝からバタバタしちゃって」「いえ、それはいいんですけど、その……文江さん、大丈夫なんでしょうか」「大丈夫大丈夫。じいちゃんばあちゃん、夫婦歴長いからね。こういうことはよくあるんだ。心配ないよ、菜乃花ちゃんが帰ってくる頃には、またいつもの二人に戻ってるから」「そう、ですか……分かりました。じゃあみなさん、いってきます」「うん、いってらっしゃい」「菜乃花、実行委員、頑張ってね」「はい。つぐみさん、ありがとうございます」 そう言って、菜乃花が高校に向かった。「ふう……」 菜乃花の姿が見えなくなると、直希は大きくため息をついた。「何よ直希、菜乃花が行った途端に」「あ、いや……菜乃花ちゃんは今、色んなことに挑戦しようと頑張ってる。だから余計な心配をかけたくないんだよ。俺、うまいこと言えてたかな」「全く……そんなことだろうと思ったわよ。まあ、菜乃花は大丈夫なんじゃないかしら。あの子、直希の言うことに疑いを持ったりしないから」「そっか、よかった……」「にしても、ちょっと大袈裟じゃないかしら。文江おばさんだって、そんなに引きずる人じゃないでしょ」「だといいんだけど……いや、今回はつぐみの勘、外れてると思うぞ」「そうかしら」「ああ。じいちゃんばあちゃん、確かによく喧嘩するんだけど、俺が間に入ったら、結構簡単に仲直りしてくれてたんだ。それでも駄目だったのは、一回だけで」「それってまさか」
last updateLast Updated : 2025-07-14
Read more

062 地雷だらけの戦場で

  廊下で腰砕けになった栄太郎。呆然と見つめる直希、あおい、生田。 小山の部屋から顔を出したつぐみも、ぽかんと口を開けたまま固まっていた。「……」 開け放たれた扉から、文江がゆっくりと姿を現す。そして栄太郎を見下ろすと、廊下を揺るがす大声で怒鳴った。「出ていけえええええっ!」「ふ……文江さん?」 いつも穏やかで優しい、そう思っていた文江のあり得ない姿に、あおいも衝撃を受けていた。「落ち着け、落ち着けって。な、何が気に入らなかったんだ? わしが山下さんと、その……話をしてたのが気に入らなかったのか?」「この……唐変木っ!」 栄太郎から枕を奪い取り、もう一度投げつけた。「そんなことぐらいで怒るんだったら、あんたはとっくの昔に死んでるだろ!」「だ……だろうな……」「この街の女……何人泣かせたと思ってるんだ、この色情狂!」「お、おいおい、そんなこと、今ここで言わんでも」「……でもあんたは、いつも私のところに帰ってくる……なんだかんだ言っても、最後にあんたが戻ってくるのは私のところだった。だから私も、そんなあんたを受け入れてた……今更そんな色目を使ったぐらいで、どうこう思ったりしないよ!」「じゃ、じゃあ、何を怒ってるんだ、ばあさん」「私はあんたのばあさんじゃない!」「え……」「私はあんたのばあさんじゃない! 妻だろ! 毎日毎日ばあさんばあさん、私がこの何十年、どんな気持ちでその言葉を聞いてきたと思ってるんだ!」「お、お前だってわしのこと、じいさんって呼ぶじゃないか」「あんたに合わせてるんだよ! 直希が物心ついた時から、あんたは私のこ
last updateLast Updated : 2025-07-15
Read more

063 別居

 「じいちゃん、いつまで落ち込んでるんだよ」「あ、ああ……すまんな、直希」 直希の部屋に泊まることになった栄太郎は、直希と二人、テーブルを囲んでビールを飲んでいた。「わしは……どうしたらいいんだろうな」「いやいや、俺に聞かれても困るよ。と言うか、どうするかは決まってるだろ。明日もう一度、ばあちゃんに謝って」「謝ってもなぁ……一晩ぐらいじゃ許してくれそうにない顔だったろ」「流石、夫婦歴50年ならではの意見だよな。ばあちゃんの怒りのゲージ、じいちゃんには見えてるんだ」「……あんなに怒ったばあさん、あれ以来だな」「街をまるごと巻き込んだ、伝説の大喧嘩」「はああっ……」 大きくため息をつくと、栄太郎はテーブルに顔を埋めた。「まあでも、なんだかんだで50年連れ添った二人なんだ。確かに今は熱くなってるけど、大丈夫だって」「でもな、あれだけ外面を気にするばあさんが……人前では完璧に猫をかぶってるばあさんが、このあおい荘であれだけぶち切れたんだぞ」「じいちゃんが踏んだ地雷の数だけ、ばあちゃんの仮面がはがれていったからね」「直希お前……ちょっと楽しんでるだろ」「うん、実は。ちょっとだけね」「こいつ」「ははっ。と言うか、久しぶりに元気なばあちゃんを見れて、嬉しかったかな。何だかんだでばあちゃん、俺と住むようになってから自分を抑えてたし」「……」「俺がじいちゃんばあちゃんの家に転がり込んで、二人の生活を変えてしまった。本当ならじいちゃんだって、もっと好き勝手にしたかったと思う……女遊びとかギャンブルとか」「おいおい、間違ってもばあさんの前でそんなこと、言わんでくれよ」「言わないよ
last updateLast Updated : 2025-07-16
Read more

064 深い闇の中で

 「お前、ガキの頃よく言ってたよな。自分が親を殺したんだって」「……」「お前はガキの頃から、わしの家に来るのが好きだった。若いやつらがよく来てたから、一緒に遊んでくれるのが嬉しかったんだろう。うちに来ればいつも、新藤さんのお孫さんですか、かわいい坊ちゃんですね、そう言われて悪い気はしなかったはずだ。 息子は……直人は、本当にわしの息子なのかと思うぐらい、クソ真面目なやつだった。お前への教育も厳しかった。だからお前は、口うるさい親のいる家より、甘やかしてくれるわしの家の方が好きだった」「……」「それであの日だ。夏休みに入ってすぐのことだった。わしの家に泊まりに来る前日になって、直人の工場でトラブルが起こった。そのせいで、直人たちがしばらく身動き取れなくなった。 わしの家に泊まる気になっていたお前は、大泣きしたそうだな。父さん母さんの嘘つき、嫌だ、絶対明日、じいちゃんばあちゃんの家に行くんだって聞かなかった。まあ、小学生になったばかりのガキだったんだ、仕方ないと言えば仕方ない。 そんなお前に根負けした直人からの連絡で、次の日わしはお前を迎えに行った。お前ときたら、そりゃもう嬉しそうだった。何日か遅れて来ることになった直人たちの顔も見ずに、喜んでわしの車に乗った」「そしてその日の夜、家が火事になって……」「ああ。連絡を受けてわしが行った時には、家は火に包まれていた」「……」「お前が駄々をこねて、直人たちを置いてわしの家に来たのは事実だ。だがな、そのことと家が火事になったことは、何の関係もない。ましてあの時のお前は、学校に入ったばかりのガキだったんだ。あの時のことを悔やんでしまうのは分かる。でもな、お前がいようがいまいが、あの日家が火事になるのは、避けられない運命だったんだ」「そう……かな……」「こんな言い方は直人たちに悪いと思うが、でもわしは、お前だけでも
last updateLast Updated : 2025-07-17
Read more

065 秘密の女子会 

  その頃文江の部屋には、あおいとつぐみが来ていた。「ごめんなさいね。あおいちゃんやつぐみちゃんにまで、迷惑かけちゃって」「いえいえ、とんでもないです。文江さんのことで迷惑だなんて、一度も思ったことありませんです」「と言うか文江おばさん、大丈夫なんですか」「うふふふっ。心配かけてごめんね、つぐみちゃん」「いえ、その……私はいいんです。今までだって、栄太郎おじさんとの喧嘩、何回も見てきましたし」「文江さん文江さん、そんなにいっぱい、栄太郎さんと喧嘩してましたですか」「そうねえ。まあ50年も一緒にいてるんだし、それなりにね」「いえいえ文江おばさん。普通の夫婦は、そこまで喧嘩してないと思いますよ。そうなる前に、離婚してると思います」「離婚ねえ……あの人と一緒にいて、不思議とそれだけは考えたこと、なかったのよね」「そうなんですか?」「どんなことがあっても、最後は私のところに戻ってくる。それが分かってたからかしら」「文江さん、本当に栄太郎さんのこと、信頼してますですね」「信頼……はしてないわね。どっちかって言ったら、馬鹿息子を見てるって感じかしら」「……文江おばさん。それ、かなり辛辣ですよ」「だってあの人、本当にそうなんだから。今の年になっても私、まだ子育てが終わってない気分だもの。ナオちゃんの方が、よっぽど自立してるでしょ」「それはそうかも、ですけど……でも、50年連れ添った夫と孫を比較してる時点で、栄太郎おじさんの株が大暴落してるんですけど」「うふふふっ。ねえ、それより教えてほしいことがあるの。こうやって、二人が私の部屋に泊まってくれることなんて、またあるかどうかも分からないし」「何をですか?」「二人はナオちゃんのこと、どう思ってるのかしら」「ええっ? ちょ、ちょっと文江おばさん、なんでそ
last updateLast Updated : 2025-07-18
Read more

066 文江の願い

 「はあっ……」 あおいの追求がようやく終わり、つぐみが大きなため息をついた。「大体、今日文江おばさんの部屋に泊まるのは、こんな話をする為じゃないでしょ。栄太郎おじさんとの仲直りの為に、私たちに何か出来ないか、それを聞きにきたんじゃない」「そうでしたそうでした。お泊まりが楽しいので、すっかり忘れてましたです」「全く……」「うふふふっ」「……文江おばさん?」「ごめんなさいね。私たちのせいなのに、他人事みたいに感じちゃって。つぐみちゃん、あおいちゃん。心配しなくても大丈夫よ。だってこれぐらいの喧嘩、ナオちゃんは知らないだろうけど、実はよくやってたのよ」「そうなんですか?」「ええ。でも……ほら、昔一度だけ、大喧嘩した時があったんだけど、つぐみちゃんは覚えてるかしら」「……ええ。この街を二つに割った戦争ですよね」「うふふふっ、つぐみちゃんは本当、大袈裟ね」「いえいえ、大袈裟じゃないですって。あの時は本当に、街の空気が変になってたんですから」「そんなにすごかったんですか」「そうよ。なんたって、あの生田さんが乗り込んできて、頼むから振り上げた拳を下ろしてくれって、栄太郎おじさんと文江おばさんに頭を下げたぐらいなんだから」「……文江さん、それはちょっと凄すぎますです」「それでも二人共引かなかったの。相手が謝るまで、絶対許さないって」「それでその、直希さんが泣いて、二人を諫めてくれましたですね」「ええ、そうなんだけどね……でもあの時ナオちゃん、私たちにこう言ったの。『僕の家族は二人だけなんだ。二人がもし別れるって言うなら、僕はこの街から出て行く。そして誰も知らないどこかで、父さん母さんのところに行く』って」「ふ、文江おばさん、それ本当なんですか。私、初めて聞き
last updateLast Updated : 2025-07-19
Read more

067 共白髪

  翌日。 朝食時も、食堂は微妙な空気のままだった。 栄太郎と文江は、昨日と同じく別々のテーブルに座っている。 文江は山下や小山たちと楽しそうに話をしているのだが、栄太郎はと言えば、無言でうつむき、力なく料理を口に運んでいた。 そんな栄太郎を気遣って直希が声をかけるが、栄太郎は上の空で「ああ……そうだな……」と適当に相槌を打つだけだった。 そしてその空気は生田と西村にも伝染し、二人共うなだれたように食事を摂っていた。 食堂は、女たち三人の笑い声が支配し、男三人がその声に怯えているといった、異様な空気に満ちていた。 菜乃花は今日も、早くから学校に行っていた。 つぐみとあおいはそんな空気の中、生田や西村に声をかけ、フォローをしていた。 ラジオ体操が終わると、直希は栄太郎と一緒に出掛けていった。 出かける時、つぐみに「昼もじいちゃんと外で食べてくるから。悪いけど、任せていいかな」そう言ってきた。 つぐみは了承し、今日一日直希に休暇を出したのだった。  * * * 直希と栄太郎が帰ってきたのは、入居者たちの入浴が終わった16時頃だった。「ただいまー」 直希が両手に大きな荷物を持ち、玄関に入ってきた。「おかえり直希。あれ? 栄太郎おじさんは?」「ああ、うん、ちょっとな……悪いんだけどつぐみ、ばあちゃんを呼んできてくれないかな」「文江おばさん? さっきお風呂からあがって、お部屋に戻ったばかりなんだけど……」「頼むよ。それからこれ……ばあちゃんに、この服に着替えてきてほしいんだ。理由は俺が後で説明するって、言っておいてくれないかな。そして用意が出来たらその後で、みんなも呼んできてほしいんだ」「入居者さんたち?」「うん。それと勿論、つぐみとあおいちゃんもね」 直希が何をしようとして
last updateLast Updated : 2025-07-20
Read more

068 それぞれの思い

  深夜。 目が覚めたあおいが時計を見ると、3時を少しまわっていた。 布団に入ったのは23時過ぎだったが、中々寝付けなかった。何度も何度も寝返りをうち、その度に時計を見ていた。 最後に時計を見た時は1時をまわっていたので、まだ2時間ほどしか眠れていない。 あおいの脳裏には、あおい荘のスタッフや入居者、一人一人の顔が浮かんでは消えていた。「……」 起き上がりカーテンを開けると、雨が降っていた。夜のニュースでは、台風が近付いているとのことだった。 昼過ぎ、栄太郎と文江が記念写真を撮っていた時にはあんなに晴れていたのに、それからしばらくして、空一面を分厚い雲が支配していったのだった。  ――まるで今のあおい荘の様だ。  そう思い、あおいは小さくため息をついた。 このあおい荘に来てから、毎日が本当に楽しい。家にいた時に感じられなかった、自らの足で歩き、自らの意思で生きている、そんな実感が確かにあった。 入居者もスタッフも、自分のことを本当に可愛がってくれる。 自分のことを温かく見守ってくれて、自分がここにいることを肯定してくれる。 自分を認めてくれる。 ここに来てから、本当に色んなことがあった。 自分の人生は家が全て決める。そんな現実から解放され、自分の意思で、ヘルパーになることを志した。 初めて会った時、入居者6人の顔と名前を覚えるだけでも大変だった。しかし毎日触れ合っていく中で、各々の個性を知り、それぞれの人生を知る出来事がたくさんあった。そしてその度に、距離が近付いていくことに喜びを感じた。 たくさんの出来事、たくさんの事件。その度に悩み、どうすれば解決出来るのか、自分に何が出来るのかを考えた。そして自分の思考の先にはいつも、直希の存在があった。 直希がいれば大丈夫。つぐみの口癖だった。いつも直希に厳しく当たるつぐみだが、彼女は誰よりも直希のことを信頼している。そして事実、これまでの騒動は直希がいたからこそ解決出来
last updateLast Updated : 2025-07-21
Read more

069 失意の底で

 「菜乃花ちゃん、菜乃花ちゃん!」 扉の前で、直希が声をかける。 部屋に駆け込んだ菜乃花は鍵をかけ、直希の呼びかけにも答えなかった。「……」 ため息をついた直希が振り返ると、入居者とスタッフたちが心配そうに直希を見つめていた。「菜乃花……」 小山がそうつぶやき、肩を落とす。あおいは小山の手を握り、「大丈夫、きっと大丈夫です」と声をかけ、哀しげな眼差しを扉に向けた。「すいませんみなさん、ご心配をおかけして……もうすぐ夕食の時間ですので、とりあえず一旦解散ってことでお願い出来ますでしょうか」「それはいいんだが……直希、菜乃花ちゃんのことは」「心配してくれてありがとう、じいちゃん。菜乃花ちゃんのことは俺に任せて。それよりほら、そろそろスーツ、脱ぎたいんじゃない? 体、かちこちに固まってるよ」「ナオちゃん、何だか悪いわね……私たちのせいでこんなことに」「何言ってるんだよ、ばあちゃん。菜乃花ちゃんのことは、二人の喧嘩と何の関係もないだろ。それより……仲直り出来てよかったね。今日からまた二人で、仲良くしてて欲しいな。今日の夕飯、ばあちゃんの好きな鯖の生姜煮だからね、楽しみに待ってて」「直希くん、それじゃ私たちも部屋に戻るよ。何か手伝えることがあれば、いつでも声をかけてくれていいから」「ありがとうございます、生田さん。その時はよろしくお願いします。山下さん、それから西村さんも、じいちゃんばあちゃんの仲直りに協力してくれて、ありがとうございました。これからも二人のこと、よろしくお願いします」 入居者たちが、各々の部屋に戻っていく。廊下には直希とつぐみ、あおいと小山が残った。「小山さん。申し訳ないのですが、最悪の場合その……鍵を開けて入らせてもらってもいいですか」「ええ、それはいいんだけど…&hel
last updateLast Updated : 2025-07-22
Read more

070 踏みにじられる決意

  その頃直希は食堂で、一人の少女と話をしていた。 少女の名は川合美咲。菜乃花と同じクラスの同級生だった。「それで菜乃花ちゃんのことを心配して、わざわざ来てくれたんだ」「あ、はい……菜乃花とはその、同じ園芸部なんです。でも、菜乃花はあまり人と話さない子だから、私も特別仲がいいって訳じゃないんです。でも……今回のこと、あんまりだって思って」「ありがとう川合さん。でも菜乃花ちゃん、帰ってから部屋に入ったままで、俺たちもまだ話せてないんだ」「菜乃花……大丈夫かな」「川合さん、こちらをどうぞです」 そう言って、あおいが紅茶をテーブルに置いた。「あ、ありがとうございます」「菜乃花さんのお友達ということは、私にとっても大切なお客様です。雨の中、こんな遠いところまで大変だったと思いますです。どうかこれを飲んで、温まってほしいです」「すいません、その……いただきます……」 両手でカップを持ち、ひと口飲む。「あったかい……それに甘い……」「はいです。砂糖、多めに入れましたです」「それで、その……新藤さん、ここって一体」 そう言って美咲が辺りを見渡す。カウンターの中では、文江と山下が慌ただしく料理を作っている。「ここは、簡単に言えば老人ホームです。菜乃花ちゃんもここで、俺たちと一緒に働いてるんですよ」「老人ホーム……菜乃花、そんなところに住んでたんだ」「ちなみに今、テーブルで野菜を切ってる人、あの人が菜乃花ちゃんのおばあちゃん」「ええっ! そうなんですか?」 美咲は慌てて立ち上がると、小山に向かって頭を下げた。小山はうなずき、「孫と仲良くしてくれて、ありがとうね」そう言って笑った。
last updateLast Updated : 2025-07-23
Read more
PREV
1
...
56789
...
13
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status