深夜。 蒸し暑さに、つぐみが目を覚ました。 枕元に置かれた時計を見ると、2時を少しまわっていた。「ほんと、暑いわね……」 汗を拭い、布団から出たつぐみが窓際に立ち、カーテンを少し開ける。「私……本当に来ちゃったのね、直希のところに……」 そう思うと、口元が自然と緩んだ。両手を口に重ね、小さく笑う。 * * * 直希の幼馴染、東海林つぐみ。 子供の頃から、気になったことは口に出さないと気が済まない性分で、それが元でいつも周囲とトラブルになっていた。 男子からはいじめられ、女子からも敬遠される存在だった。 自分は正しいことを言っているのに、なぜこうなってしまうのか。 幼いつぐみには、それが理解出来なかった。 しかしそんな彼女にも一人だけ、友達と言える存在がいた。 それが直希だった。 直希だけは、口うるさい自分に嫌な顔ひとつせず、いつも傍にいてくれた。 いじめられそうになった時も、かばってくれた。 そんな直希のことを、異性として意識しだしたのはいつからなんだろう。 つぐみはまた、小さく笑った。 考えるまでもない、あの時だ。「直希……ちゃんと眠れてるかな……」 月明かりに照らされた庭の池をみつめ、そうつぶやく。 耳を澄ませば、波の音がかすかに聞こえた。「静かね……」 その時、食堂の方から物音が聞こえた。「え……こんな時間に、誰かいるの……まさかとは思うけど直希、朝食の準備してるんじゃないわよね」 カーディガンをはおると、つぐみは扉を開け、食堂へと向かった。 * * *「&
Last Updated : 2025-05-25 Read more