ただ――仁志は、ふと横目で星を見た。表情は一つも変えずに。星は、自分とは違う。血なまぐさいやり方を好まない。このまま怜央を殺してしまうのは、たしかに少々もったいない気もする。生かしておいて、ゆっくり痛めつけるのも悪くない――そんなことを考えながら、荷物をまとめつつ、今後の段取りを頭の中で組み立てていく。ある袋を整理していると、中に見慣れない物がいくつか入っているのに気づいた。不思議そうにそれを取り出した。「これは……何でしょうか」声に振り返った星は、仁志の手の中に、やたら凝ったデザインのロウソクが二本あるのを見て、固まった。次の瞬間、顔がぱっと真っ赤になる。あの日の工具店。あの店主の、やけに含みのある笑い顔がよみがえる。会計を済ませたあと、彼はこう言ったのだ。「もし気に入ったら、またおいで。次はまけてあげるから」そのときの星は、深く意味を考えなかった。だが今なら分かる。――あれは、最初からおまけを袋に紛れ込ませていたのだ。しかもこの二本、どう見ても普通のロウソクではない。一目で分かる、そういう用途の品だ。星は慌てて仁志の手からロウソクを取り返し、そのまま袋の中に押し戻した。だが、あまりにも動きが雑すぎて――袋の中身をまとめてひっくり返してしまう。床に転がる、ロープ。床に跳ねる、金属の手錠。そこにさっきの怪しいロウソクが加われば、連想する光景は一つしかない。星は、仁志の視線が、はっきりと変わったのを感じた。何か説明しようと口を開きかける。だが、どこから話せばいいのか分からない。なにせ、これらは本気で彼のために用意した物なのだ。結局、何も言えないまま、床に散らばった物を黙々と拾い集め、平然を装って言った。「……片づいたし、そろそろ行こっか」言うが早いか、仁志が何か言い出す前に、足早に部屋を出ていく。かなり歩いたあとでさえ、背中にひりひりするような視線を感じていた。振り向かなくても分かる。あの透きとおったまなざしが、ずっと自分に注がれている。ほどなくして、仁志も後を追ってきた。彼は何も聞かなかった。さっきの一件にも、一切触れない。おかげで、星はようやく胸をなで下ろした。二人が宿を離れ、前にも通った工具店の前を通りかかる。ちょうど店主が近所の人と立ち話をし
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