星は、そっと男の額に手を当てた。体温は少し高い気がしたが、熱があると断言できるほどではない。ほんの少しだけ、胸のつかえが下りる。同時に、じわりと自責の念がわき上がってきた。D国はもともと湿気が多いうえに、昨夜は一晩中雨が降り続いていた。空気はぐっと冷え込み、床からも容赦なく冷気が這い上がってくる。そんな環境で、自分は仁志を床で寝かせた。彼でなくても、星自身がここで一晩横になれば、風邪のひとつやふたつひいてもおかしくない。この大事な局面で仁志の体調に問題が出れば、D国を出るどころか、追っ手から逃げ隠れすることすら難しくなる。星はそっと目を閉じ、深く息を吸い込んだ。しばらくしてから、もう一度目を開く。ベッドの布団をざっと整え直し、もう一度床で眠る仁志のそばへ戻った。何はともあれ、まずは彼をベッドへ移して、これ以上身体を冷やさせないことが先だ。とはいえ、仁志は背も高く、体格もしっかりしている。身長は雅臣とほとんど変わらない。最近ずっと体を鍛えているとはいえ、成人男性を抱き起こすのは簡単な仕事ではなかった。星は何度も体勢を変えながら、汗だくになってようやく彼の身体を引き起こす。そのときになって、ようやく仁志が目を覚ました。ゆっくりとまぶたが持ち上がり、かすれた声が漏れた。「……どうしたんですか?」その声はひどくかすれていて、いつもの澄んだ声音とはまるで違っていた。彼が目を開けたのを見て、星はぱっと表情を明るくする。「仁志、今どんな感じ?起きられる?とりあえず、ベッドで少し休もう?」彼の視線が、じっと星の顔に落ちる。その目の色は、どこかおかしかった。いつもの澄みきった光は消え、外のどんよりした空みたいに陰っていて、底には氷のような冷たさが沈んでいる。彼は低い声で答えた。「……そうですね」星は彼の腕をとって支え、ベッドへと移動させる。「仁志、まだ頭、すごく痛い?」彼は少し間を置いてから、ゆっくりとうなずいた。「ええ……」「薬、持ってきてない?いつも頭が痛くなったときに飲んでる薬とか、ないの?」しばらく沈黙が続いたあと、ようやく彼は口を開いた。「持病です。薬は効きません」「そうなんだ……じゃあ、とにかくゆっくり休んでて。あとで朝ごはん買ってくるけど、何か食べたいものある
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