彼はゆっくりと歩いてきた。星は智也と話していたが、視界の端に、すらりとした人影がこちらへ向かって歩いてくるのを捉えた。星が顔を上げると、そこには見慣れた人物がいた。星は時間を確認した。まだ二十分ほどしか経っておらず、料理は運ばれてきていない。仁志はまず星に軽く挨拶をすると、すぐにその視線を智也へと向けた。「橘さん。お邪魔ではありませんか?」二人は昨日すでに顔を合わせているため、改めて紹介する必要はなかった。智也は仁志がやって来たのを見て、礼儀として席から立ち上がった。智也は微笑んで言った。「いいえ。人が多い方が賑やかでいいですから」二人は二、三言、当たり障りのない挨拶を交わすと、それぞれ席についた。星は奥の席に座り、仁志はその隣に腰を下ろす。そして智也は、仁志の向かいに座った。なぜか、この席順を見ると、星はどうしても妙な違和感を覚えてならなかった。幸いなことに、仁志も智也もそれぞれ洗練された大人の対応ができるため、空気が冷え込むようなことはなかった。数分後、店員が料理を運んできた。星は仁志を見た。「私の頼んだものがあなたの口に合うか見てみて。まだ食べたいものがあるなら、追加で頼んでもいいわ」仁志は言った。「いいよ。君が頼んでくれたものは全部好きだから」二人の向かいに座る智也は、このやり取りを見て、その瞳を微かに揺らした。彼らはどうやら……親しげな雰囲気のようだ。智也の瞳の奥に、無意識のうちに複雑な感情が浮かび上がった。彼は星に少なからず好意を抱いており、大学時代には彼女に激しくアプローチしたこともあったが、当時の星は学業に専念しており、恋愛をする気が全くなかったため叶わなかった。今、ようやく星と再会できたことで、彼は再び星を振り向かせたいという期待を抱き始めていた。星と彼は趣味も似ており、仕事における共通の話題も多かった。星の自分に対する印象も、決して悪くないことを彼は感じ取っていた。今はまだただの先輩後輩の段階に留まってはいるものの、多くの恋人は友人関係から発展していくものだ。智也も、それほど焦る必要はないと考えていた。しかし今日、星とこの『溝口仁志』という男との接し方を目の当たりにして、智也の中に明確な危機感が自然と沸き起こってきた。昨夜、大学の同級生が星
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