角をわずかに捲っただけで、焼け焦げた片手が現れた。辰見はその左手の薬指に嵌められた指輪を一目で見つけた。それは、間違いなく彼と晴海の結婚指輪だった。喉が詰まり、彼は何度も血を吐いたあと、視界が暗転してそのまま気を失った。目を覚ますと、辰見は一言も発さずその場を離れた。三十分後、彼が車の中で手首を切っているのをアシスタントが発見し、急いで病院へ運び込んだ。処置が早かったため命に別状はなかったが、辰見は一週間意識を失ったままだった。ようやく目を覚ましたとき、彼は「晴海」の名を呼びながら目を覚ました。体を起こすとすぐに布団をはね除けて外へ飛び出そうとしたが、足がもつれてベッドから真っ逆さまに転げ落ちた。彼は涙を流しながら床に座り込み、しゃくり上げながら言った。「晴海……僕が悪かった。お願いだ、戻ってきてくれ……!」里子が彼を抱き起こしながら、心配そうに言った。「たかが一人の女で、あんた一体どこまで自分を壊す気なの!お父さんも私も、肝を冷やしたわよ!」しかし辰見は母の言葉などまるで耳に入っていなかった。虚ろな目が母の顔に向けられる。「母さん、晴海は?晴海を、もう一度見せてくれ……」父母は顔を見合わせたが、最後は母が重い口を開いた。「もう埋葬したよ。焼き場に持っていく手間が省けたわ」「母さん……晴海は、れっきとした嫁さんだよ。なのに、亡くなっても悲しくないのか!?」「私は最初からあの子を嫁だなんて認めたことないわ。淑絵でも柔でも、あんたにふさわしい子は他にいくらでもいるじゃない。子どもも産めないあの子の何がそんなにいいの?」辰見は目を見開き、怒号を上げた。「僕は……彼女を愛してるからだ!!!」叫び終えた彼はすぐさまボディーガードを呼び、両親を屋敷から追い出した。これ以上母親の言葉を聞けば、自分が何をしでかすかわからなかった。これまで彼は、母親が晴海を少し苦手にしていることには気づいていたが、同居していたわけでもなく、自分が彼女を大事にしていればそれで良いと思っていたため、それほど深く考えてこなかった。だが今日になってようやく気づいた。自分の母親は、晴海に対して、ここまで冷酷だったのかと。これまで彼女がどれだけ肩身の狭い思いをしてきたのか、想像するだけで胸が引き裂かれそう
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