神田雪子(かんだ ゆきこ)は有名なほど手の届かない女で、生まれてこのかた23年間、誰一人として彼女の心を射止めることはできなかった。8歳年上の白野裕司(しらの ゆうじ)と出会うまでは。彼はとにかくエネルギッシュで、しつこく付きまとってくるタイプだった。交際一周年の記念日、裕司に口説き落とされて初めての関係を持ち、それ以来車の中や料亭の個室、はたまた林の中でも、彼女は毎度のように屈服させられていた。がらんとした自習室で雪子が指導教授にオンラインで課題報告をしていると、ふと裕司の手が忍び込んできた。「裕司!今論文の報告中よ!何してるの?」「声を出すな。こんなシチュエーションは初めてだろう?他人の目がある場所でやる方がずっと刺激的だろう。試してみないか?」情事の後、雪子は全身が痛くてぐったりし、意識朦朧としたまま裕司に別荘まで運ばれた。目を覚ますと、彼の姿はもうなかった。携帯には彼からのメッセージが残されていた。【会社に用事が入った。ゆっくり休め】雪子はシャワーを浴びた後、友人から新しくオープンしたカラオケクラブに誘われる電話を受けた。だがクラブに着き、ある個室の前を通りかかった時、彼女は見覚えのある後ろ姿を目にした。それは紛れもなく裕司だった。今頃会社にいるはずの彼は、仲間たちに囲まれていた。その中の一人が笑いながら言った。「裕司、お前のあの身代わり、あと数日で25歳の誕生日だろ?また別れるつもりか?」雪子の足がぴたりと止まった。裕司の淡々とした声が響いた。「ああ、5日後だ」仲間たちはどっと笑った。「ったく、お前は本当に酷い野郎だな。あの娘はお前に本気で尽くしてるのに、まさか年齢で線引きしてるなんて思いもよらないだろうよ」「そうだよな。ここ数年で何人と付き合ったと思ってるんだ?みんな25歳になったらすぐ別れて、娘が泣きながら自殺しようとしても平気なんだから!」「仕方ないだろ。だって裕司は一途な男でさ。あの時夏目星(なつめ ほし)が死んだのが25歳だったから、星に似た娘を探しては25歳まで付き合って別れるんだ。永遠に25歳の娘はいないが、25歳の娘はいつでもいるからな……」ドアの外で、雪子の顔から最後の血色が消えた。どうやって家に帰ったのか、彼女自身もわからなかった。携帯を取り
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