後見権。それは、聖樹を管理し、処遇を決定する権限だ。 言い換えれば、聖樹の所有権である。 (そ、そんな……っ) エマは体を震わせた。 ランダリエ王家が持つエマの所有権を、皇太子に渡すと言うのだ。 (やだっ……せっかく、王子から自由になれたのにっ!) 顔を強ばらせるエマに、王太子が柔らかな眼差しを向ける。 「心配せずともよい。エマヌエーレ」 「ぇ……?」 問い返すよりも早く、皇太子がクロエから受け取った書面を読み上げた。 「聖樹エマヌエーレの後見権を、皇太子ティエリーが譲り受ける。以後、エマヌエーレの処遇と保護は、すべて新たな後見人の責任において行うものとする」 すでに署名と印章が入った書類が、中央の台へと置かれる。 エマは、反射的に一歩後ずさった。 すると、そっと後ろから抱きしめられる。 「大丈夫です、エマ」 「ルシアン様……?」 振り返ると、赤い瞳がまっすぐにこちらを見つめていた。 迷いのない、静かな眼差しだった。 その手の温かさに、こわばっていた体から、少しずつ力が抜けていく。 (……大丈夫、なんだよね?) 彼が、エマを傷つけるはずがない。 エマは唇を噛みしめ、成り行きを見守ることにした。 「さて」 皇太子が楽しげに声を弾ませる。 「此度の王家審問において、最も力を尽くした我が部下を、ここで称えるとしよう」 その視線が、まっすぐにルシアンへ向けられた。 「ルシアン・デイモンド伯」 「はい、ティエリー殿下」 「褒美を与える。聖樹エマヌエーレを、貴殿に下賜(かし)する」 「……えっ?」 エマは息を呑み、思わずルシアンを見上げた。 (僕が……ルシアン様のものに?) ずっと、願っていたことだった。 けれど、あまりにも突然で、喜びよりも驚きで狼狽える。 「エマ」 ルシアンが
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