Alle Kapitel von 神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる: Kapitel 221 – Kapitel 230

256 Kapitel

第220話 ルシアンへの褒美

     後見権。それは、聖樹を管理し、処遇を決定する権限だ。  言い換えれば、聖樹の所有権である。 (そ、そんな……っ)  エマは体を震わせた。  ランダリエ王家が持つエマの所有権を、皇太子に渡すと言うのだ。 (やだっ……せっかく、王子から自由になれたのにっ!)  顔を強ばらせるエマに、王太子が柔らかな眼差しを向ける。 「心配せずともよい。エマヌエーレ」 「ぇ……?」  問い返すよりも早く、皇太子がクロエから受け取った書面を読み上げた。 「聖樹エマヌエーレの後見権を、皇太子ティエリーが譲り受ける。以後、エマヌエーレの処遇と保護は、すべて新たな後見人の責任において行うものとする」  すでに署名と印章が入った書類が、中央の台へと置かれる。  エマは、反射的に一歩後ずさった。  すると、そっと後ろから抱きしめられる。 「大丈夫です、エマ」 「ルシアン様……?」  振り返ると、赤い瞳がまっすぐにこちらを見つめていた。  迷いのない、静かな眼差しだった。  その手の温かさに、こわばっていた体から、少しずつ力が抜けていく。 (……大丈夫、なんだよね?)  彼が、エマを傷つけるはずがない。  エマは唇を噛みしめ、成り行きを見守ることにした。 「さて」  皇太子が楽しげに声を弾ませる。 「此度の王家審問において、最も力を尽くした我が部下を、ここで称えるとしよう」  その視線が、まっすぐにルシアンへ向けられた。 「ルシアン・デイモンド伯」 「はい、ティエリー殿下」 「褒美を与える。聖樹エマヌエーレを、貴殿に下賜(かし)する」 「……えっ?」  エマは息を呑み、思わずルシアンを見上げた。 (僕が……ルシアン様のものに?)  ずっと、願っていたことだった。  けれど、あまりにも突然で、喜びよりも驚きで狼狽える。 「エマ」  ルシアンが
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第221話 熱烈な求婚

    「本当にっ……自由に、なったのですね」  声が震え、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。  こんな未来が訪れるなんて、夢にも思わなかった。  嬉しくて、胸がいっぱいで、涙が止まらない。  差し出されたルシアンのハンカチを受け取り、エマは何度も瞬きをしながら涙を拭った。 「エマ。貴方に、この場で伝えたいことがあります」 「……はい」  顔を上げると、ルシアンが一歩前に出て、静かにエマの前へ跪いた。 「ぇ……ルシアン様?」  戸惑うエマの左手を取り、その甲へ、口づけが落とされる。  熱が一気に頬へ集まり、エマの心臓は早鐘を打った。  見上げてくる赤い瞳は、いつもよりもずっと真剣で、揺るぎない。 「エマ……初めてお会いした日から、貴方に惹かれていました」  ルシアンの澄んだ声が、甘く耳に響いた。 「可憐な花のように美しい貴方は、とても魅力的で、もっと近づきたいと思ったのです」 「ルシアン様……っ」 「貴方には婚約者がいたため、想いを告げることも出来ず……胸の内に秘めるしかありませんでした」 「っ……」 「ですが、思いがけず機会がめぐり……私の功績が認められ、皇太子殿下のお許しを頂くことができたのです」  とうとうと語られる言葉は、ルシアンの片思いを告白するものだ。  それは、王太子や皇太子の前で語るための言葉だった。  ルシアンがエマを欲する余り、手柄を立てたのだという筋書きで、二人の間には、何もなかったのだと示すためのもの。  けれどエマは、ルシアンの好意を知っていた。  初めのうちは、本気だと信じられなかったけど。 (でも、何度も、ルシアン様に愛でられて……)  エマは、愛される喜びを知った。  それでも、最後の一線を越えたことはない。  エマはルシアンの意図を察して、微笑んだ。 「エマ。貴方を愛しています。これから先も、何があろうと、貴方を守り続けると誓います」  ルシアン
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第222話 恋人のキス

    「エマ……ベッドへ」 「はい」  ルシアンに促されて、ベッドに座る。  その隣にルシアンが腰掛け、エマの腰を抱き寄せた。 「ぁっ、……ルシアン様?」 「エマ」  宝石のような赤い瞳が、煌めいていた。  銀の髪も、灯りにきらきらと浮かび上がる。 (あぁ……なんて美しいんだろう)  端麗な顔立ちに、甘やかな眼差し。  初めて会ったときから、惹かれてやまなかったアルファ。 (この方が、本当に僕のものになるの?)  エマは夢見心地でルシアンを見つめる。  ずっと願っていた幸せは、突然すぎて、まだ信じられない気持ちだ。  そんなエマの想いをくみ取るように、ルシアンが甘い声で囁く。 「私の、可愛いエマ」  そして、また唇が重なった。  今度はエマの唇を開くように、舌が入ってくる。 「んっ……ぁ、ぁぁっ」  ルシアンの舌が、エマの舌先に触れる。  ビクッと震えると、優しく舐められた。 「あぁっ、ァ、……ぁんっ」 (こんなキス、初めて……)  唇に触れるだけでなく、舌まで絡ませるようなキスは、初めてだった。  ルシアンの舌が巧みに動いて、エマの口を貪っていく。 「んぅ……ぁ、ぁぁっ」  口の中を味わうように、舌の裏まで舐められ、上顎をくすぐられる。  歯茎をなぞられ、角度を変えて、奥まで探ろうとしてきた。 「はぁんっ……んぁっ、ァァ……んんぅっ」  口端から唾液があふれて落ちる。  クチュクチュと音が響き、ルシアンの息づかいを直に感じて、胸がドキドキした。 (あぁ……これが、恋人のキスなの?)  触れるだけのキスと違って、なんて激しくて甘いのだろう。  だけど、懐かしさも感じていた。  いつだったか、ルシアンに愛される夢を見たことがある。 (あの夢が、現実になったんだ)  そう思うと嬉しくて、胸が高鳴った。
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第223話 いい匂い

     グチュグチュと響く水音も、いまはエマの快感を押し上げるだけだ。 (ぁぁ……気持ちいいっ……指、もっと奥に……っ)  ルシアンの前で、はしたなく嬌声を上げ、腰を振る。  乱れるエマを前に、ルシアンはその昂ぶりを口に含んだ。 「ひゃぁん! ぁんッ、ぃやぁぁっ、んぁぁっ!」  ルシアンの熱い口内に包まれ、舌で舐められると、もう我慢できない。 「ァァッ、やめっ、……気持ちっ……ぁ、ぃ、イク……っ!」  昂ぶりと蕾を同時に責められ、すぐにイってしまった。  それなのに、絶頂の余韻に浸る間もなく、ルシアンは指を増やした。 「ひゃぁぁっ! ぁっ、やぁぁんっ!」 「っ……我慢せず、イっていいのですよ」 「ぁぁんっ……ァァッ、はぁっ……ひゃぁっ!」  連続でイかされ、ビクビクと躰が跳ねる。  さらには、達したばかりの昂ぶりにねっとりと舌を這わせ、また絶頂へ追い上げる。 「ひゃぁぁんっ! あぁぁっ!」  もう脚を支えることもできず、エマはルシアンの髪を掴んで、かぶりを振った。 「やぁぁんっ、る、ルシアン、さまぁっ」 「ん……」 「はぁぁんっ」 (だめぇっ……気持ちよすぎるよぉっ!)  エマは涙をこぼしながら、快楽に啼く。  そうして昂ぶりと蕾をたっぷり愛撫されたエマは、すっかり発情していた。  腰がズクズクと疼き、躰がひどく熱い。額から汗を流し、首筋にも、お腹にも、全身に汗の粒が光る。  昂ぶりからは蜜があふれ、弄られた蕾はゆるみ、無意識にフェロモンを放っている。 (ぁぁ……もっと、イきたいっ) 「ぁ、熱いっ……んっ」  心も躰も、快楽に溺れてしまいそうだ。  早く満たされたいと、それだけで頭がいっぱいになる。 「エマ、可愛いですね」  ルシアンが、エマの頬を撫でる。  エマはその仕草にさえ、うっとりと目を細めて、ルシアンに甘えた。 「る、ルシアンさま……もっと…
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第224話 おねだり

     そんな考えが浮かび、エマは口に含んだルシアン自身にしゃぶりついた。 「ッ……エマっ」  名を呼ばれ、ちらりと顔を上げる。  ルシアンは熱い吐息を漏らし、目をすがめて気持ちよさそうな顔をしている。 (ぁっ……感じてくれてる?)  嬉しくなって、エマは先端をぺろりと舐めた。 「くッ……エマ、駄目ですっ」 「んっ、ゃぁっ」  グイッと髪を掴まれ、ルシアンの雄から引き離される。 「ゃ……どうして?」  エマはうるっと涙を浮かべる。  ルシアンも感じてくれてると思ったのに。 「エマ……体勢を変えましょう」 「?」  よく分からないけど、ルシアンがエマの腕を掴み、体を引き上げる。そのまま、くるっと向きを変えられ、後ろ向きにルシアンをまたぐ体勢になった。 「ぁ……」  エマの目の前には、ルシアンの雄が立派にそそり立っている。  待ちきれずに、またパクッと雄を咥えた。 「んっ……ぁんっ、っ、んむっ」  さっきと向きが違うけど、それも気にならない。  先走りをもらす熱棒を夢中で舐めていると、ふいに下半身に衝撃が走った。 「ひゃぁっ……ぁ、あぁぁっ!」  エマの昂ぶりを、ルシアンが咥えたのだ。  舌でべろりと舐められ、ビクンッと躰が跳ねる。 「やぁっ、ぁぁんっ、ルシアン、さまぁっ」  思わずルシアンの雄を口から離してしまう。 (ぁっ……ルシアン様のがっ)  まだ口に咥えようとするけど、ルシアンの愛撫が気持ちよくて、力が入らない。 「熱ぃ……ぁぁっ、気持ちいいっ……ぁ、あぁぁんっ」 「あぁ。ここも、悦んでますね」  ルシアンの声とともに、蕾に指が二本入ってきた。 「ひゃぁぁぁんっ! ァァッ、……あぁぁっ!」  昂ぶりを口で愛撫されながら、蕾を弄られる。  グチュグチュとイヤらしい音が響き、蕾はルシアンの指をきゅうっと締めつける。それに応えるように
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第225話 証が欲しい

     その眼差しだけで、蕾からトロッと愛液があふれる。エマもまた、ひどく興奮していた。  ルシアンがエマの膝裏をつかみ、グッと広げる。  愛撫だけで何度も達し、白濁と愛液にまみれた股間は、淫らな有様だ。けれどエマは、ルシアンの猛った雄を待ち望み、蕾をひくつかせた。 「エマ」 「ぁんっ、ぁぁ……はぁぁんっ」  ぐちゅ、と蕾に先端が押しつけられる。  熱く滾った雄が、入り口を確かめるように触れては離れ、なかなか奥まで来てくれない。 (やだっ……はやく……はやく、きてっ)  エマは首を振って、腰を揺らした。  自ら飲み込むように、先端へ蕾を押しつける。 「やぁんっ、……早くぅっ」 「おねだりできて、偉いですね、エマ」 「ぁぁんっ」 「ようやく……この瞬間を迎えられる」  ルシアンの口から、感極まるような声がこぼれ落ちた。  その瞬間、ルシアンがグッと一気に押し入った。 「ああぁぁぁぁーーっ!」  ガツン、と奥まで貫かれ、目の前がチカチカする。  衝撃で達したことに気付くより早く、ルシアンは律動を始めた。 「ひゃぁぁんっ! あぁぁっっ! ひぁぁぁ!」  ガツガツと腰を打ち付けて、躰ごと揺さぶられる。  待ち望んだ熱棒は、想像よりも激しくて、エマは悲鳴を上げることしかできない。 (やぁぁっ、は、激しいっ……ぁぁっ、きもちいいっ)  ルシアンの熱棒が内壁を擦るたびに、昂ぶりからビュッビュッと蜜がこぼれる。  口も閉じられず、快楽に喘ぎ、ルシアンにされるがまま悶えた。 「ひゃぁぁん、ぁぁっ、きもちいっ、……ぁぁ、もっと、気持ちいいの……っ」 「っ……ここは、どうですか?」 「あぁぁっ! ぃ、イイッ……ぁんっ、ひゃぁぁっ!」  激しく律動していた熱棒は、やがてエマの良いところを探すように、緩急をつけてきた。  自分でも知らなかった性感帯を突かれると、ビクビクと躰が震える。 「
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第226話 蕩けるような愛

     愛するアルファが、エマとの子を望んでいる。  それはオメガにとって、この上ない幸せだった。 (ルシアン様の子を、僕が産む……?)  エマは、そこまではっきりと考えたことがなかった。ルシアンと結ばれることは願っていたけど、その先の未来は想像したことがない。 (でも……僕は、ルシアン様の妻になるから)  ルシアンとの子を望んでも、誰も咎めない。  胸の奥から喜びがあふれて、エマはコクリと頷いた。 「はいっ。もちろんです。ルシアン様」 「では、私達の子を授かれるように……」  ルシアンは微笑み、また律動を始めた。 「ぁんっ……あぁぁっっ!」 「可愛いエマ。私の子を宿すまで、たっぷりと注いであげます」 「ひぅっ……!」  グリッと最奥を突かれ、躰が跳ねる。  昂ぶりから蜜があふれて、キュッと蕾を締めつけた。 「ここも、可愛がってあげますね」 「ひゃんっ! ぁぁんっ、だ、だめぇッ……!」  無防備だった乳首を、ルシアンが指の腹でスリスリと撫でた。 「ひぃっ! ァッ、あぁぁっ!」  ピンと勃ち上がった乳首は、これまでのルシアンの愛撫によって、敏感に育っている。  指先が触れるだけでゾクゾクして、たまらない刺激となった。 「ァッ、あぁぁんっ!」 「エマの乳首は、可愛いですね。こんなに悦んで」 「ぁぅっ……はぁぁんっ!」 「こっちも、まだ元気そうだ」 「ひゃぁぁっ、ぁぁっ、……き、きもちいぃっ!」  敏感な乳首をこね回されると、ビクビクと腰が震える。 (ちくびっ、きもちいっ……あぁぁっ)  快感に涙があふれ、胸を揉まれるだけで身悶えた。 「ひゃぅっ、ッ……ぁぁっ、あぁぁんっ」  気持ちよすぎて、蕾がジクジクと疼く。 (もっとっ……もっとぉ)  ルシアンが、ときおり昂ぶりを扱いてくる。  けれど、欲を放つたびに、もっと欲しくてたまらなくなった
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第227話 循環期までに

     エマが初めて、ルシアンと結ばれた日。  恋い焦がれたアルファを初めてその躰に受け入れ、愛の証を注がれたエマは、そのまま発情を迎えた。  きちんと抑制剤を飲んでいたにもかかわらず、躰は燃えるように熱く滾り、激しく悶え、ルシアンとともに溺れていった。  なんども体位を変え、グチャグチャに蕾を掻き乱され、昂ぶりから何も出なくなってもなお、ルシアンはエマを離さなかった。 「やぁぁっ、ァ……、ゃっ、ぁぁっ」  ルシアンの背にすがり、惚けた顔で、びくびくと震える。 「はぁぁんっ! んぁぁ……る、ルシアンさまぁぁっ」 「エマッ……ぁぁ、溶けそうだッ」 「ぁんっ、やぁぁんっ、ぁぁっ、あんっ……ああぁんっ!」  ガクガクと躰を震わせながら、エマはまた涙を流す。  力を失った昂ぶりは、それでもなおヒクヒクと震えている。 「ひゃんっ! ァッ、あぁぁっ……んぁぁっ!」 「はぁっ……エマ、分かりますか?」 「ァァッ……ひぁぁっ! ァッ、ぁぁっ」  ルシアンは、グチュグチュとイヤらしい音を立てながら、エマの蕾をかき乱す。 「貴方の蕾が……もうすっかり、私の形に、馴染んでいますっ」 「ぁぁんっ! はっ……はぃっ、ルシアン、さまぁっ」 「私のエマッ……愛しい人っ」 「はぁぁんッ、ぁぁんっ、ぁぅっ……ぁ、るしあん、さまっ」  もはや、お互いの躰を求めて愛し合うことしか、考えられない。  そうして、発情期が終わるまでの三日間、二人はほとんどをベッドの上で過ごし、全身で愛をたしかめ合った。  エマは、叶わぬ恋だと半ば諦めていたからこそ、ルシアンとの熱い逢瀬は夢のようで、愛欲に溺れてしまったのだ。  発情期を終えると、エマはかつてない疲労で、ぐったりした。  一方で、ルシアンは活力が漲り、はつらつと動いている。 (ルシアン様って、見た目以上に、体力あるよね)  頭を使う方が得意に見えるのに、体もしっかり鍛えている。その肉体美を思い出して、頬を
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第228話 たった一人の番

    「それに、私は何があっても、貴方を手放すつもりはありませんから」  甘い眼差しに、鼓動が早くなる。  ルシアンの唇が、そっとエマのそれに重なった。 「んっ」  甘くて優しいキスにうっとりする。  ちゅっちゅっとついばむ唇に、エマはフフッと笑みをこぼす。 「エマ」 「はい」 「貴方は私の、たった一人の番になるのですよ」 「んっ……は、はいっ。ルシアン様」  たった一人の番。  その言葉が、じんと胸に響く。  愛するアルファが、エマだけを選ぶと、そう言ってくれるのだ。 (僕が、ルシアン様の番になれるなんて……!)  求婚してくれたときも、その後も、何度も約束してくれた。  ルシアンの真摯な言葉で囁かれるたびに、涙がこみ上げてくるほど、嬉しくてたまらなかった。 + + +  そして、ルシアンは帝国へ旅立った。  エマは見送りを終えると、一ヶ月も寂しさに耐えられるだろうかと心配になる。 「ルシアン様……っ」  エマは、法衣の下につけていたペンダントを取り出した。  アズレーヌの街で買った、小さなルビーのペンダント。ルシアンの瞳の色に似ていたから、よすがにしようと、購入したものだった。  ナタリナが新しい鎖に取り替えてくれたので、再びルシアンに会える日まで、ずっと身につけていようと握りしめる。 (これがあれば、寂しさも紛れるかも)  しんみりとルシアンを想うエマに、ナタリナが声を掛ける。 「エマ様、そのように感傷に浸っている暇はありませんよ」 「え?」 「いいですか? デイモンド伯が次にやってくるのは一月後。その時に、お二人の結婚式を挙げることになっています」 「う、うん」  王太子から、これまでのことと、今後の流れについても説明を受けている。  エマが発情期を迎え、ルシアンと共に私室へ籠もっているあい
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第229話 婚礼衣装の仕立て

    「ルシアン様は、跡は継がないと仰ってたよ? 正妻の子もいるって聞いたし」 「エマ様、甘いですわ~! 聖樹でいらっしゃるエマ様を娶るとなれば、伯爵位で満足なさるはずがありません!」 「こたびの件で、帝国の反逆者を一掃した功労者ですよ~! 皇太子の側近としての手腕を見せつけたのですから!」 「公爵位を継ぐのに相応しいと、誰もが認めますわ~!」  シーシとスースが、ぐいぐい迫ってくる。  二人の言い分も分かるが、肝心なのはルシアンの意思だ。 「たしかに、ルシアン様の功績は大きいけど……」 「一番ですわ!」 「聖樹であられるエマ様の夫になるのですから、公爵くらいにはなって頂きませんと!」 「エマ様に釣り合いませんわ!」  二人は本気の瞳で訴える。  すべては、エマの立場を固めるため。エマのために、ルシアンの出世を望んでいるようだ。  二人の気持ちをありがたいと思いつつ、エマは微笑んだ。 「でもね、シーシ、スース。僕は、ルシアン様が伯爵でも公爵でも、どっちでもいいんだよ」 「どうしてですか~?」 「エマ様は、本来なら皇族にお輿入れなさるほどの、尊い御方ですのに~!」 「だって……爵位なんかなくても、ルシアン様が素敵だってことに変わりはないから」  エマは、頬を染めてはにかんだ。  身分や地位など関係なく、ルシアン自身を愛しているのだ。  ルシアンは、エマのたった一人の番。唯一のアルファなのだから。 「まああっ!」  シーシとスースは顔を見合わせて、頬に手を当てる。  琥珀色の瞳をキラキラと輝かせた。 「エマ様の仰る通りです~!」 「ええ! 爵位は関係ないなんてっ! さすがエマ様ですわ!」 「本当に、エマ様はデイモンド伯爵様を愛しておられるのですね!」 「えっと……う、うん」 「一月後に結婚式を挙げれば、エマ様は正式に、デイモンド伯爵様の奥方に!」 「金の聖女と銀の伯爵のラブロマンスが、
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