だが、追い打ちをかけたのはナタリナだった。 「エマ様、ご安心下さい。ミシェル様は、ロマンス本を大変気に入られたようで、続編が出たら必ず届けるようにと言付かっております」 「えっ!? ミシェル様も読まれたの!?」 「当然ではありませんか。使用人に配るものですから、まずは主人であるミシェル様が中身を確認されるのが筋です」 「それはそうだけど! 執事とか侍女長で良かったと思うよ!?」 「ミシェル様には、エマ様のお人柄や、難しい立場にいたことなどを知って頂くのに、ちょうど良い機会だと思いました」 ナタリナはもっともらしく言い返すが、彼女たちの顔を見るに、たぶん違う。 (ぜったい、僕のこと自慢したいだけだよね!?) エマはその本を読んだことはないが、ものすごく美化されてることだけは分かる。 だけど、エマが何を言っても、すでにミシェルの手に本は渡り、屋敷の使用人たちにも知れ渡っているのだ。 (ルシアン様がお屋敷の主人なのに、いいのかなぁ) 主人のあずかり知らぬ所で、ロマンス本が広がるなんて、良いわけない。 でも、この屋敷の実権を握っているのは、間違いなくミシェルだ。 彼が良しとするなら、ルシアンも反対はしないだろう。 (……ルシアン様には黙っておこう) 自分たちのロマンス本が、ミシェルをはじめ屋敷中に広がっていると知ったら、羞恥と気まずさで落ち込むかもしれない。 「もう……その話、ルシアン様にしたらダメだからね?」 「心得ております」 ナタリナが答えると、メイドたちも揃って頷いた。 その日は到着したばかりで慌ただしかったが、夕食は家族全員で摂るという、初めての経験をした。 エマはルシアンと二人きりで食事をしたことはあるけど、自分の家があるのも、夫の両親が揃うという状況も初めてで、面はゆい気持ちになった。 「エマ様は、果物がお好きとか」 「はいっ。サファイアベリーと、メ
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