Alle Kapitel von 神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる: Kapitel 231 – Kapitel 240

256 Kapitel

第230話 輿入れ準備

    「ランダリエでしか手に入らない材料もございますゆえ。それに、尊き聖樹であるエマ様が、帝国民に侮られてはなりません! 一国の姫にも匹敵するお輿入れでなければ!」 「ナタリナ様の仰るとおりですわ~!」  スースも、熱のこもった声で同意する。 「先代皇帝のご側室だった聖樹様も、ランダリエの宝飾品で権威を見せつけたと伺っております! ここは何事も万全に!」  気合いと熱意に押されて、エマは彼女達の言うままに頷いた。  エマはいま、仮縫いの法衣に着替え、衣装担当となったスースの質問に答えているところだ。  ナタリナはエマの仮縫いの様子を眺めつつ、分厚い書類に目を通している。 「エマ様。宝飾品については、王妃様と王太子妃様より婚礼祝いを頂いてますから、当面は大丈夫そうですよ」 「うん。お二人は、ブローチとかブレスレットとか、使いやすいものばかり贈って下さったよね」  エマはもう王族の婚約者ではないのに、王妃と王太子妃から贈り物を頂くなんて思わなかった。本当に、ありがたいことだ。 「そういえば、ダリウ殿下からも、文箱と筆記具一式を頂いて、嬉しかったな」 「あの文箱! 表面には、聖樹の印である大樹が描かれてましたわ~!」  スースが楽しそうに答える。  さりげなく宝石が使われていて、とても綺麗な文箱だった。  スースはワクワクしながら、エマを見上げる。 「デイモンド伯は、どのような指輪を贈って下さるのでしょうか?」  結婚指輪は、お互いに準備して式で交換するのが慣わしだ。  エマはルシアンと話し合い、自分の瞳の色を映した宝石を、相手に贈ると決めていた。エマは王太子妃が紹介してくれた宝飾工房に、黄水晶の指輪を注文済みだ。他にも、長年仕えてくれたナタリナへ贈るブローチを、他の工房へ注文している。 「きっとルビーだよ。ルシアン様の瞳は、宝石みたいに綺麗だから」 「それを言うなら、エマ様だって宝石みたいですわ~」 「もうっ」 「フフッ。結婚指輪ですもの。極上のものを選
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第231話 言葉を交わすより先に

     シーシに急かされて、エマは仮縫い衣装からから普段着の法衣へ着替える。  毎日、一休みするひまもないほど忙しいが、エマの顔には笑顔が浮かんでいた。    + + +  そしてあっという間に、一ヶ月が過ぎた。  ルシアンは約束通り、エマの発情期が始まる直前に戻ってきた。  まっさきにエマの私室へやってきて、喜びに目を輝かせる。 「エマっ!」 「ルシアン様っ」  待ち望んでいたルシアンに会ったとたん、エマの躰からブワッと香りが放たれる。  ちゃんと抑制剤を飲んでいたのに、愛しいアルファの前では無意味だった。 「あぁ、エマッ」  ルシアンはエマを抱きしめて、熱い吐息を漏らす。  いつの間にかナタリナたちは部屋からいなくなり、エマはルシアンに抱き上げられて、ベッドに運ばれた。  言葉を交わすよりも先に、お互いの躰を求めて、激しく愛し合う。  忙しくて寂しさなんて忘れていたのに、ルシアンに触れると、躰が疼いて仕方なかった。 「ぁんっ! ルシアンさまぁっ」 「っ、エマ……エマっ!」 「ああぁんっ! ゃぁっ、も、もっとぉっ」 「ココがいいですか?」  ルシアンの熱棒が奥を穿つと、ビクンッと躰が跳ねる。  ずっと欲しかったモノが与えられると、エマは無意識に雄を締めつけた。 「クッ、エマ……締めつけすぎですっ」 「ぁぁんっ! ァァッ、る、ルシアンさまぁ」 「あまり煽らないでくださいっ……我慢できそうにありませんっ」 「やぁぁっ、抜かないでぇっ……ぉく、きてぇっ」 「エマッ!」  ルシアンの雄が、エマの蕾をグチャグチャに掻き回す。  エマの腰を掴み、激しく突き上げてきた。 「ひゃぁんっ、んぁっ、ぁぁっ、っ、ぁぁぁんっ!」  猛った熱棒に貫かれるたび、エマの昂ぶりが弾ける。  発情期のせいか、イクたびに腰の奥がジクジクと
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第232話 ナタリナへの贈り物

    「んっ、ぁぁっ……ルシアン様っ」 「貴方が不安に思う暇もないくらい、愛して差し上げます」 「ぁんっ」 「私と結婚したことを、決して後悔させません」 「っ、あぁぁんっ、んぁぁ」  甘い声が、胸を震わせる。  エマの躰を包むフェロモンと、蕾を掻き回す熱に震えながら、エマは再び快楽の淵へと落ちていった。 + + +   結婚式の前夜、エマが最終の確認を終わらせるころには、夜が更けていた。  明日は早朝から準備に取りかかるため、今夜はルシアンと別々に休む。  シーシとスースが寝所を整え、ナタリナが就寝前にハーブティーを運んできた。 「エマ様。お疲れでしょう。こちらは安眠効果のあるお茶ですので、どうぞ」 「ありがとう、ナタリナ」  エマはベッドの中でクッションにもたれて、カップを受け取る。  重要な儀式の前は、緊張で寝付きが悪くなるので、いつもこうしてお茶を淹れてくれるのだ。  エマはハーブティーを飲み、ホッと息をつく。  ナタリナはベッド脇の椅子に腰掛けて、エマに微笑んだ。 「エマ様。体調はいかがですか?」 「大丈夫だよ。ナタリナたちが気遣って、休ませてくれたから」 「それは良かったです。明日は大切な日ですから、万全の体調で臨みませんと」 「うん」  エマの側仕えは本当に優秀で、テキパキと動きながらもエマへの気配りを忘れない。  一ヶ月の詰め込み教育と結婚式の準備で忙しかったが、エマが参ってしまわないように、適度に休憩を入れてくれた。 (指揮を執ってるナタリナの方が、もっと忙しいのに)  有能すぎるエマの侍女は、己のことなど顧みず、エマをいちばんに優先する。エマが幼い頃からずっと側で仕えてくれた、忠実な侍女だ。 (それなのに僕は、ナタリナに贈り物一つできなかったよね)  自由になるお金もなく、王宮に移ってからも軟禁されていたので、
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第233話 結婚式の朝

    「あの……せっかくブローチにしたんだから、付けてね?」 「家宝を身に付けると!?」 「ほら、明日は結婚式だし」 「さようでございますね! 明日、エマ様の結婚式で付けさせていただきますっ!」  ナタリナが満面の笑みで頷く。  だけど、明日限りになるのは目に見えていた。 (せっかく、ナタリナに似合うように作ってもらったのに)  一度きりはもったいないので、エマは付け加えた。 「明日だけじゃなくて。新しいお屋敷に移ったら、ふだんも付けてみるのはどうかな? この意匠なら、ナタリナが僕の侍女だって一目で分かるでしょ?」 「エマ様からの、信頼の証ということですね! さすがです! 傷一つ付けぬようにいたしますっ」  ナタリナは眩しいくらいの笑顔で答える。  エマが思ってた反応と違ったけど、喜んでもらえたようなので、何よりだ。  無事にナタリナへ贈り物ができて、エマも安心して笑みを浮かべた。  + + +  結婚式当日の朝がやってきた。  エマは早朝から起き出して、軽い朝食を摂った後は、湯浴みを済ませる。  発情期の間はずっとルシアンと睦み合っていたわけで、体力回復のための休養日をはさみ、すぐに結婚式とくれば、今さらながら恥ずかしくなってきた。 「ねえ、ナタリナ。結婚前に閨を共にするのって、いいのかな?」 「よろしいのでは? 王族との婚姻は、子が産まれてからするものですし」 「でも、ルシアン様は帝国の方だから」  ランダリエの慣習は、当てはまらない気がする。  そこへ、エマの着付けをしていたスースがにこやかに告げた。 「大丈夫ですわ、エマ様。表向き、婚姻前の契りは好ましくありませんけど、エマ様はデイモンド伯爵様の番ですもの」 「スースの言うとおりです! 口うるさい貴族はいるでしょうけど、こちらが黙っていれば分かないことです!」  シーシがポニーテールを揺らして、にっこ
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第234話 ルシアンの花嫁

     アレシオン伯爵領の結婚式に参加したとき、花嫁のセレナ嬢は見惚れるほど美しかった。  一生に一度の、大切な儀式だからこそ、本人も周りも準備に力を入れ、晴れ舞台に臨むのだ。  化粧を終えたスースが、最後にエマの頭に花冠を乗せる。  今朝方、王宮の庭師が摘んだ白薔薇と鈴蘭を使い、ミナが冠に編んでくれたものだ。純潔と幸福を表す花冠は、花嫁への祝福の証である。 「エマ様。できましたわ~!」 「さすがミナですね! 大きさもぴったりで、とてもよくお似合いです~!」  スースとシーシが、歓声を上げる。  ナタリナも、うっとりした眼差しでエマを見つめた。 「本当にお美しいっ! 女神のようですわ、エマ様!」 「みんな、大げさすぎだよ」 「いいえ! 今日のエマ様は、まさに女神の愛し子! 始まりのオメガのようですわ!」  ナタリナが拳を握って語れば、双子も賛同する。 「女神イーリスの祝福を受けた、最初の聖樹のようです~!」 「光り輝く黄金の髪と瞳は、綺羅星のごとく!」 「神話の一場面が、具現したようですわ~!」 「エマ様の美しさに、誰もがひれ伏すのです~!」 「貴女達、よくぞエマ様の美しさをここまで引き出しましたね!」 「ナタリナ様っ!」 「光栄です!」  三人とも、瞳を輝かせながら、大興奮している。  エマは一歩後ろに引いて、はしゃぐ三人を眺めていた。 (他の人がいなくてよかった)  三人とも、昔からエマびいきが過ぎる。  エマはお世辞と思い、いつも話半分に聞いているが、姿見に映る自分は、たしかに綺麗だ。白の婚礼衣装に花冠だなんて、童話に出てくるお姫様みたいで、嬉しくなる。 (ルシアン様も、喜んで下さるかな?)  女装しなくても、ルシアンの横に並び立てるくらいには、着飾ることができた。  これなら見劣りせず、ルシアンに恥を掻かせることもない。  エマが
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第235話 最高の日に

     すぐには叶わないだろうと思っていたのに、こうしてあの約束が現実になった。 「覚えていて下さったのですねっ」  胸の奥が、じんわりと熱くなる。  涙がこみ上げてきて、あわてて瞬きをした。  ここで泣いては、せっかくの化粧が崩れてしまう。 「約束通り、貴方にお返しします。今、付けてくれますか?」 「はいっ」  差し出された小箱を、両手で受け取る。  リボンをほどき中を開けると、ペリドットのブドウが輝いていた。そのブドウを守るように添えられた青い羽根も、あの時より一段と輝いて見える。  震える手で掴むと、ルシアンが優しく声を掛けた。 「エマ、私が付けて差し上げます」 「は、はいっ」  自分ではうまく着けられそうになかったので、ルシアンに渡した。  ルシアンはスースに着ける位置を確認し、ちょうど法衣の首元のあたりに、ブローチを着けてくれる。 「まあっ! 素敵です、エマ様!」 「婚礼のお衣装とブローチが、ぴったり合ってます~!」 「さすがピエール殿ですわ~!」  ナタリナやシーシとスースが、はしゃぎ声を上げる。  姿見に映るエマは、たしかに法衣のデザインとペリドットのブローチが一つの絵のように完璧で、神聖な雰囲気を醸し出していた。 「よく似合っていますよ、エマ」 「ありがとうございます。ルシアン様」  初めて付けたブローチを、そっと指先で撫でる。  そして、ナタリナに視線を向けた。 「ナタリナ」 「はい、ただいま」  エマが頼むより先に、ナタリナはサッと動く。エマの文机から、青いリボンの小箱を取り出して、エマの手に渡した。 「ルシアン様。預かっていたものを、お返しします」 「ありがとう、エマ」  ルシアンはエマから小箱を受け取り、青いリボンを外す。  中から現れたのは、青い鷲のブローチだ。力強さと凜々しさを兼ね備えた、美しい意匠で、くちばしで摘まんだブドウの実が、きらきらと
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第236話 参列者たち

     エマは、唇をほころばせた。 「ミナ。綺麗な花冠をありがとう」 「もったいないお言葉です。エマヌエーレ様」  ミナは声を震わせて、続ける。 「ご結婚おめでとうございます。本日は誠に、大変お美しくいらっしゃいます」 「ふふ。ありがとう」  エマはミナに微笑み、ルシアンを見上げた。  ルシアンが眩しそうな瞳でエマを見ている。  しばらく見つめ合ったあと、神殿の間へゆっくりと向かった。  正殿の奥にある神殿の間は、王族のために造られた場所である。  天井は緩やかな円蓋を描き、壁面の白い石は柔らかな光沢を帯びている。中央には女神イーリスを象った古い浮彫が刻まれていた。   ふだんは、王族の誕生と命名に関わる儀式や、王権の誓約になどに使用される場所だ。祭壇が一つ、儀式の参列者が腰掛けるための長椅子は、左右に分かれて四列並んでいる。小さな部屋だが、王族の婚姻もここで執り行われ、エマは一度だけ、婚約式のときに入ったことがある。  だけど、神殿の間の扉が開かれたとたん、目を見張った。 「えっ?」  あのときとは、まるで様子が違っていた。  祭壇の前には、露をふくんだ瑞々しい薔薇が、色とりどりに飾られている。  参列席には、リンデンの花を付けた若葉の枝が添えられ、神殿の間は甘い香りに包まれていた。  柱には白と金の織紐が結ばれ、その先に小さな鈴と祈符が下げられている。風が通るたび、リンと美しい音色が響いた。  よく晴れた空から、太陽の明るい日差しが差し込み、今日結ばれる二人を祝福しているようだった。 「わぁっ」  エマは声を弾ませて、部屋の中を見回す。 (すごい……あのときと、ぜんぜん違う)  婚約式のときには花もなく、床にも何も敷かれていなかった。だけど今は、淡い象牙色の織物が長く伸び、その奥の祭壇の前に、聖樹の象徴である大樹が金糸で織り描かれている。  大樹へと続く道には、葉と光を模した文様が散りばめられ、
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第237話 幸せ者

     赤みを帯びた茶色の髪は、低い位置でゆるやかにまとめられ、深い緑を基調としたドレスは、動きやすさを考慮した装いになっている。  背筋をまっすぐに伸ばし、大きな瞳をきらきらと輝かせて、エマを見つめていた。  かつて、彼女の結婚式で、女神の祝福を贈ったことがあった。 「セレナ嬢?」 「エマ様っ! ご結婚おめでとうございます!」  アレシオン伯爵の一人娘、セレナ・アレシオンだ。 (あれ? この前、結婚式を挙げたばかりだよね? なんでここに?)  疑問に思うも、尋ねられる雰囲気ではない。  右側の参列席に視線を移すと、またもや意外な人物が立っていた。 (クロエ?)  どうやら、オスティン帝国の文官代表として参列しているようだ。  帝国の麗しい文官は、紺色のドレスに栗色の髪を結い上げ、濃い睫毛を揺らす。 「エマヌエーレ様。ご結婚おめでとうございます」  唇の動きだけで祝ってくれるが、その仕草が艶っぽい。  エマはペコッと頭を下げた。 (……あれ?)  クロエの奥に、黒髪の男性が見える。  誰だろうと視線を向けると、見知った顔がニヤリと笑った。 (えっ!? こ、皇太子殿下!?)  紅い瞳がエマを見つめている。  何で皇太子がここに!? 「エマ。すみません。どうしても来ると言って聞かなくて」  ルシアンが眉をしかめて、小声で謝る。 「い、いえ……良いんですか?」  帝国の皇太子が、ランダリエ王国の結婚式に参列するなんて、前代未聞である。  非公式の参列なのか、皇太子の装いは控えめで、深い藍色の上衣に身を包み、装飾もほとんどない。だが、黒髪に紅い瞳、堂々とした出で立ちは、一目でただ者ではない雰囲気を醸し出していた。  ルシアンを窺うと、諦めの表情で囁く。 「今日は、私の従兄弟として参列するそうです」 「そ、そうですか」  皇太子ではなく、従兄弟として。そういう意味だろうが、どちらに
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第238話 女神の祝福

    「女神イーリスの御名のもとに。そして、ライヒト神の御名のもとに誓います。  わたしルシアン・デイモンドは、  聖樹エマヌエーレ・イーリスを、唯一の伴侶として迎え、  いかなる時も敬う心を忘れず、尊厳と自由を守ります。  この命の続く限り、愛することを誓います」  オメガであるエマを尊重することは、帝国民にとって異例の宣言である。けれど、ルシアンは当然のように誓ってくれた。  真摯な眼差しと誓いの言葉から、ルシアンの本気が伝わって、心が震えた。 (ルシアン様は、本当に僕のことを、妻として迎えてくださるんだっ)  喜びで、目の奥が熱くなった。  神殿長が、柔らかな笑みを浮かべる。 「お二人の誓いを、女神イーリスの御前にて承認いたします。続いて、指輪の交換を」  祭壇に用意された、二つの指輪。  艶めくような大粒のルビーの指輪は、少し変わった意匠だ。台座の左側に、銀の獅子の横顔が彫られている。獅子が口を開き、牙でルビーを支えているように見えた。  もう一つの指輪は、太陽の雫を思わせる黄水晶が嵌め込まれている。こちらの指輪は金でできており、幅広の腕の部分に、大樹の意匠が彫られていた。  どちらも最高品質の宝石を使った、素晴らしい指輪だ。 (これが、夫婦の証になる、結婚指輪)  エマにはルシアンから贈られた豊穣のブローチがあるけど、この指輪を付けることで、夫婦であると周りに示すことができる。  最初に、ルシアンがエマの手を取り、ルビーの指輪を薬指へと通した。 「ルビー、すごくキレイです」  エマは思わず呟いた。  左指におさまったルビーの指輪は、ルシアンの瞳に似ていて、とても美しい。 「この指輪が、貴方を守ってくれますよ」 「はいっ」  エマは唇をほころばせた。  続いて、エマは黄水晶の指輪を手に取り、ルシアンの薬指に嵌める。  指輪に聖樹の象徴である大樹を描くことで、エマがただのオメガではなく、聖樹であると公に示
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第239話 エマの居場所

     エマが後ろを振り向くと、みな感激したように瞳を潤ませている。 「おお、これぞ女神イーリスのご加護っ」 「このような奇跡とは! 信じられんっ!」 「ほう、あれが聖樹というものか」 「エマ様、さすがでございます!」 (え? 何か、驚くようなことあったかな?)  エマは不思議に思いながらも、平然としている王太子妃に従って、祝福の儀を終えた。  儀式が終わると、あとは参列者への挨拶だ。  ルシアンとともに、国王と王妃の前に進む。  挨拶以外で言葉を交わしたことのない二人だが、王太子によく似た雰囲気で、優しい笑顔を見せてくれた。 「エマヌエーレ。女神イーリスは、貴方が選んだ道を祝福しておられます。どうか健やかに。幸せになりなさい」 「其方はよく務めを果たしてくれた。感謝している。達者でな」  短い言葉の中にも、祝福の思いが伝わってくる。  エマは礼を述べて、次に王太子夫妻の元へ進んだ。  先ほどエマに祝福を授けてくれた王太子妃は、参列席に移り、王太子に寄り添って立っている。  二人は慈愛の眼差しでエマを見つめ、お祝いの言葉をかけてくれた。  祝福の言葉をありがたく受け取り、エマは目を輝かせて王太子妃を見上げる。 「聖樹アウレア様。私の結婚式に女神イーリスの祝福を授けてくださり、感謝いたします」  エマは胸に両手を当てて、王太子妃に礼を述べた。  王太子妃は、にっこり笑って頷く。 「エマヌエーレ。デイモンド伯と、仲睦まじく暮らすのですよ」 「はいっ」 「帝国で辛いことがあれば、いつでもわたくしたちを頼ってちょうだい。ときどきは、実家に戻るつもりで、王宮に遊びにいらっしゃいな」 「えっ? 良いのですか?」  エマは戸惑いながら、王太子を窺う。  王太子は愛おしそうな眼差しでエマを見つめ、しっかりと頷いた。 「もちろんだ」 「貴方はずっと、わたくしたちの大切な弟なのですよ」 「ぁっ……」
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