Alle Kapitel von 神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる: Kapitel 241 – Kapitel 250

256 Kapitel

第240話 可愛いものに目がない

    「あ、あのっ。エマヌエーレ・イーリスですっ。本日は私たちの結婚式にご臨席いただき、誠にありがとうございますっ」  皇太子夫妻の前だと思うと緊張して、舌がもつれそうになる。  そんなエマに、オデットが楽しげに笑みを浮かべた。 「まあ、なんて可愛らしい方。婚礼衣装も、帝国のものと違って、素敵ですわ」 「あ、ありがとうございますっ。私は聖樹ですので、婚礼用の法衣になります」 「そのブドウのブローチも素敵だわ。ルシアンからの贈り物かしら?」 「はい。ルシアン様が贈って下さいました」  エマは首元のブローチにそっと指を這わせて、はにかむ。  すかさず、ルシアンが横から口を出した。 「私のブローチは、エマが選んでくれたのですよ。対になったブローチで、縁起物なのです」 「あら。ルシアンがそのように自慢するなんて、珍しいこと。よき伴侶を得たのですね」 「はい。私の唯一の番ですから」  ルシアンはさらりと答えて、エマを見つめる。  甘い眼差しに胸が高鳴るけど、オデットが思いがけないことを言い出した。 「エマヌエーレ。貴方の金の髪は美しいけれど、薄紅も似合うのでしょう?」 「ぇ……?」  エマは、きょとんと目を瞬かせる。 (あれ? 皇太子妃様って、僕が女装したときと、同じ髪色……?)  自然と、女装デートしたときのことを思い出した。あのときルシアンは、エマを「帝国の高貴な血筋」と説明していたはずだ。 (えっ? ちょっと待って……?)  目の前のオデットは、薄紅の髪を持つ皇太子妃だ。  それはつまり……ルシアンはエマを、皇太子妃オデットの妹であると、暗に告げていたのではないだろうか。 (えぇっ!?)  エマは慌てて、ルシアンの腕を掴む。 「る、ルシアン様っ!?」 「すみません、エマ。オデット様には事後承諾でした」 「よく似合っていたぞ? 姉妹だと言っても通じるだろう」  皇太子がニヤニヤ笑いながら、口を挟ん
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第241話 アレシオンの二人

     エマが微笑むと、ティエリーとオデットが短い言葉で別れを告げた。 「またお会いしましょう、エマヌエーレ」 「いつでも皇宮へ遊びに来い」 「はい。ありがとうございます」 「ティエリー様。休暇を終えたら、皇都へ伺います」  エマとルシアンは、神殿の間から退室する三人を見送った。  皇太子夫妻の姿が見えなくなると、ふっと空気が緩む。 (やっぱり、みんな緊張してたみたいだね)  次に挨拶に向かったのは、文官のユリックと、セレナ嬢だ。  皇族が退室したおかげで、かなり砕けた様子だった。 「エマヌエーレ殿。ご結婚おめでとうございます。実に素晴らしい式でした」 「ありがとうございます、ユリック殿」 「聖樹の奇跡を、この目で見られるとは思ってもみませんでした」 「奇跡……?」  さっきも騒いでいたが、何かあったのだろうか。  エマが首をかしげると、セレナ嬢が興奮した様子で語った。 「エマヌエーレ様の花冠が、ゆっくりと深紅に染まっていったのです! あれが女神様の祝福なのですね!」 「え?」  エマはパッとルシアンを見上げる。 (ミナの作ってくれた花冠が、深紅色に変わった?)  今すぐこの目で確かめたいけど、挨拶の途中で冠を取るわけにはいかない。  エマは曖昧に頷き、笑みを浮かべて誤魔化す。 「エマヌエーレ様! 本日は、ご結婚おめでとうございます!」 「ありがとうございます。セレナ嬢」  セレナ嬢は興奮した顔のまま、エマにお祝いの言葉をかける。  そして、エマの隣に立つルシアンをジッと見た。 「セレナ、失礼だよ」  セレナ嬢の後ろで、控えめな声が聞こえる。  よく見ると、ユリックとセレナ嬢の影に隠れて、フィリップが立っていた。 「あ、フィリップも来て下さったのですね」 「はい。団長から、夫婦で参列するようにと言われまして」  フィリップは騎士の礼装で、穏やかな笑みを
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第242話 側にいてくれた

     ルシアンに寄り添うと、大好きな声がエマを呼んだ。 「エマ。貴方の伴侶になれたことは、私の人生で一番の幸福です」 「ルシアン様っ」  思わずルシアンを見上げ、エマは瞳を潤ませる。  甘い眼差しに胸をときめかせていると、セレナ嬢がにっこり笑った。 「私達の杞憂でしたね。エマヌエーレ様、デイモンド伯。いつまでも仲睦まじくお過ごしください」 「ありがとうございます。セレナ嬢」  エマも笑顔で礼を述べた。  続いて、後ろの長椅子に移動すると、ルシアンの従者ノエルが待っていた。  ノエルは笑顔を浮かべて、エマとルシアンに頭を下げる。 「ルシアン様、エマヌエーレ様。このたびは、ご結婚まことにおめでとうございます」 「ありがとう、ノエル」 「エマヌエーレ様を、ルシアン様の奥方様としてお迎えできること、仕える者として、これ以上の喜びはございません」  熱のこもった言葉は、お世辞でもなさそうだ。  ノエルはニッコリと笑ってエマを見る。 「ルシアン様がご結婚を決意なさるとは、誰も思っていませんでした。エマヌエーレ様にはお礼申し上げます」 「ノエル。余計なことを言うな」 「お屋敷に戻られれば、すぐに分かることですから」  ノエルの返事に、ルシアンが眉をしかめる。  はっきり聞いたわけではないが、どうやらルシアンは独身を貫くつもりだったようだ。 (でも、ルシアン様は僕を選んでくださったんだ)  そう思うと、嬉しくなった。  ノエルに礼を言って、最後にエマの側仕えが待つ長椅子へ移動した。 「エマ様~、とても素晴らしかったです~!」 「女神の祝福を頂くとはっ! さすがエマ様ですわ~!」  はしゃぎ声をあげるシーシとスースの隣で、ナタリナが涙を浮かべている。  歯を食いしばっているようだが、エマを見つめる瞳は濡れていた。 「ナタリナ?」 「ッ……あの、小さかった、エマ様がっ! こうして望まれた方の元へ嫁が
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第243話 番の儀式

     エマの返事を受け、王太子はルシアンに問いかける。 「デイモンド伯。これよりそなたは、エマヌエーレを唯一のオメガとして番を結ぶ。この先、オメガを含む他の女性にも、反応することはなくなるだろう。構わぬか?」 「女性にも、反応を示さなくなるのですか?」  ルシアンは驚いたように目を見張る。  一般的に、アルファはいくらでも番を持てるし、アルファやベータの女性とも子を設けることができる。  王太子は神妙な顔で頷き、ルシアンに説明した。 「この番の儀式は、お互いを唯一とするものだ。帝国民であっても、効果は変わらぬだろう」 「……王太子殿下は、そうなのですか?」 「うむ。私はアウレア以外の者には、関心がなくなった。欲しいと望むのは、己の番だけだ」  きっぱりと答える王太子に、ルシアンが頷く。  その表情は、晴れやかだった。 「ならば、問題ありません。私が欲しいのは、エマだけですから」  ルシアンの甘い眼差しが、エマに注がれる。 (ルシアン様っ! 本当に、僕だけを望んでくださるんだ)  嬉しくて、またうるうるしてしまう。  王太子は穏やかな顔で、小箱の蓋を開けた。中身が見えるように、エマたちの前に差し出す。  柔らかな絹のうえに、小さな丸い珠が一つ入っていた。  乳白色だが、パールのような光沢があり、うっすらと金に染まっている。 「っ……これは」  ルシアンが驚いた顔で、珠を見つめた。  そして、エマを振り向く。 「この珠は、貴方のものですね?」 「はい……私の、聖樹の実です」  エマは頬を染めて頷いた。  聖樹の実……それは、聖樹と番になる者しか知ることのできない、特別な実だった。  厳重に管理され、番の儀式のときに、アルファへ差し出される。  二センチほどの大きさの実は、一見すると固そうにみえるが、口に含めば柔らかく溶ける。 「デイモンド伯。聖樹の実を食すことで、そなたはエマヌエーレの番となる
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第244話 ルシアンの母

    「奥方様が、このように美しい方だったとは!」 「閣下に釣り合う女性などいないと思ってましたが、さすが聖樹様ですっ!」 「おい、ジュリアン。お前、なんでもっと早く教えてくれなかったんだ!」 「俺は話したぞ!? 天使のような御方だって!」 「こら、お前達! 静かにしないか! 奥方様の耳に入ったらどうする!」  隊長格の騎士が諫めるが、興奮はおさまらないようだ。  馬車の中にいても、騒ぐ様子が聞こえてきて、エマはちょっと恥ずかしかった。 「ルシアン様。皆さん、僕のことを美化しすぎではないでしょうか?」 「そんなことはありませんよ。貴方が美しいのは本当のことです」 「でも、ルシアン様の方が美しいですっ」  エマはルシアンを見上げて、真面目に返した。 「ルシアン様の銀色の髪も、宝石みたいな瞳も、見惚れてしまいます」 「エマは本当に、可愛いことばかり言うのですね」  ルシアンは目を細めて、エマの唇にキスを落とす。 「んっ、ルシアン様」 「早く、屋敷について欲しいです。貴方が欲しくてたまらない」 「もうっ……デイモンド領までは、馬車で十日は掛かるのでしょう?」 「ええ。長旅になりますが、皇都よりはずっと近いので、辛抱していただけると助かります」 「もちろんです。ルシアン様と一緒の馬車旅は、初めてですね!」  エマはワクワクしながら、ルシアンを見上げる。  前は、エマの体調が悪く、馬車の中ではずっと寝ていた。そのため、今回はルシアンと初めての旅行気分なのだ。 「僕、外国に行くのは初めてなんです。ランダリエでも、アレシオン伯爵領やアズレーヌの街くらいしか行ったことがなくて。外の景色が新鮮で、楽しいですっ」 「気になるところがあれば、立ち寄ることもできますから。遠慮なく仰ってください」 「はいっ」  エマは頷いて、ルシアンに寄りかかる。  馬車の中は、二人きりだ。  ルシアンがエマの腰を抱き、優しい眼差しを向けてく
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第245話 後継者

    「レヴィネージュ伯爵家には、よくオメガが生まれるそうです。そのため、昔から薬草学に力を入れていて、オメガにも理解があります。母はデイモンド領で平民のオメガを保護して、仕事を与える事業も行っているので、領地自体が、オメガに対する偏見が少ないのですよ」 「そうなのですね。僕も受け入れてもらえそうで、安心しました」  オメガに優しい場所というのは、誇張でなく、本当のことなのだ。 「母も領民も、エマを歓迎しますよ。貴方はランダリエの聖樹ですから」 「聖樹と言っても、神殿で育っただけのオメガですよ?」 「貴方は、女神の愛し子でしょう?」  ルシアンが楽しげに笑みを浮かべる。  エマが唇を尖らせると、諭すように優しく言った。 「貴方は特別な存在です。そのように振る舞うべきですよ。それが、貴方の身を守ることにもなります」  ルシアンの声には、重みがあった。  デイモンド領ではオメガへの偏見がないにしても、帝国全体で見れば、やはり蔑視対象である。 (ルシアン様のお母様が、大公様との結婚を認められなかったのも……きっと、オメガだったからだよね)  エマがルシアンと結婚できたのは、エマがランダリエの聖樹だから。  帝国のオメガだったら、きっと正妻にはなれなかった。 (僕、すごく恵まれてるんだ)  エマは唇を引き結び、コクンと頷いた。 「分かりました。僕、ルシアン様が恥ずかしくないように振る舞いますね」 「あまり気負うことはないですよ。デイモンド領では、自由に過ごして構いません。社交界に出る必要もありませんが、もし行ってみたいと思うなら、万全の体制でエスコートします」 「社交界ですか?」 「貴族が集まって、社交を行う場です。皇族主催のものから、高位貴族の夫人が主催するものなど、様々です」 「あ、お茶会のようなものでしょうか?」  前に庭園でルシアンとお茶を楽しんだことを思い出す。  ルシアンは優しく微笑んだ。 「そうですね。貴婦人や令嬢たちは、そ
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第246話 デイモンド領のお屋敷

    「すごいですっ! おめでとうございます!」  エマは喜びに目を見開く。  公爵家の後継者になるということは、ルシアンの実力や功績が認められたということだ。 (さすがルシアン様っ! すごい!)  エマは思わず抱きついて、ルシアンを祝福する。 「本当にすごいです、ルシアン様っ!」 「貴方のおかげです」  ルシアンも、エマをぎゅっと抱きしめてくれた。  愛しさのにじむ声で、エマに囁く。 「この指輪は、大公家の証です。貴方を守ってくれますから、決して外してはいけませんよ」 「っ、はい、ルシアン様っ」  エマはしっかりと頷いた。  これ以上はない、強力なお守りだ。  ルシアンの想いが嬉しくて、胸がいっぱいになった。 「ありがとうございますっ! 僕、頑張りますね!」  ルシアンは、エマのために決意してくれた。  だからエマも、妻としての役目を果たすつもりだ。 (社交界なんて、初めてだけど)  聖樹だった王妃や王太子妃も、いまや立派な王族として務めを果たしている。  エマにだって、できるはずだ。 「その気持ちは嬉しいですが。まずは、デイモンド領での暮らしに慣れることから始めましょう」 「はい。ルシアン様のご実家ですから、楽しみです」  エマが答えると、ルシアンがちゅっとキスをしてくれた。 + + +  十日間の馬車旅は、長いようで短かった。  ランダリエの国境を越えるまでは、馬車の進む先々で、たくさんの祝いの言葉をもらった。  街では王宮の馬車に乗るエマを、平民たちが取り囲むようにして、祝いの言葉をかけてくれる。 「聖樹様っ、おめでとうございます!」 「聖樹様、バンザイ!」  護衛をする騎士たちは大変そうだったが、宿泊先の貴族の館でも歓待を受け、誰もがエマの結婚を喜んでくれた。  帝国に入ってからは、ルシア
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第247話 出迎え

     玄関前には使用人が一列に並んでおり、一斉に頭を垂れる。年配の執事を先頭に、侍女やメイド、下男に庭師の姿などが見える。  ルシアンが先に馬車から降り、次にエマの手を取って支えた。  エスコートされながら、ゆっくり降り立つ。  今日のエマは、外出用の法衣に薄手の外套を纏っただけの、簡素な装いだ。  しかし、金の髪は艶やかに光り、黄水晶の瞳は輝いている。 「ここが、ルシアン様のお屋敷なのですね」 「今日から、貴方の住む屋敷ですよ」  ルシアンが優しい声で答えた。  彼はいつものように、銀色の長い髪を一つに結び、藍色の薄い上着を羽織っていた。中は淡い生成りのシャツ一枚で、初夏らしい軽やかな服装だ。  ルシアンは、自分の家に帰ってきたからか、気楽な様子が見える。  そこへ、白髪交じりの執事が、にこにこしながら声を掛けてきた。 「お帰りなさいませ。旦那様。ようこそいらっしゃいました。奥様」  丁寧に頭を下げて、領主の帰還と、新たな主人を歓迎する。 「ご苦労。今日からこの屋敷に住む、私の妻だ。エマを迎える支度は整っているか?」 「はい。すでに部屋を整えておりますが、奥様の好みもおありでしょうから、最低限に留めました。今後は、奥様のご意見を伺いたく存じます」  どうやら、すでにエマのための部屋を用意してくれているらしい。 (一ヶ月しかなかったのに……すごいなぁ)  引っ越しの準備でさえ慌ただしかったのに、迎え入れる側のお屋敷の人たちはもっと大変だっただろう。  執事に礼を言おうと思った、そのとき。  使用人たちの列が、静かに左右に分かれた。  屋敷の正面玄関、その奥から一人の男性が姿を見せる。 「ルシアン、帰ったか!」 「っ、父上!」  ルシアンが驚いた声を上げる。  漆黒の髪に、深紅の瞳。精悍な顔つきに引き締まった体を持つ、壮年の男性。 (うわぁ……皇太子殿下に似てる!)  ひと目で、ソルティアン大公だと分
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第248話 新しい部屋

     見た目の美しさはミシェルに敵わないけど、ルシアンの心を掴むことはできたのだ。 「エマヌエーレ様」 「は、はいっ」 「ルシアンを番に選んでくださって、ありがとうございます」 「ぇ……?」  エマは驚いて顔を上げる。  どうして、もう番になったと知っているのだろう。  首をかしげると、ミシェルが唇をほころばせる。内緒話をするように口元に片手をあて、エマにそっと囁いた。 「匂いで分かります。あの子から、エマヌエーレ様の芳しい香りがしますもの」 「っ、そ、そうなのですか?」 「ご安心下さい。香りに敏感なのは、レヴィネージュの家系ゆえ。他の方には分かりませんから」  ミシェルの説明にホッと胸をなで下ろす。 「エマヌエーレ様。どうか、ルシアンと仲良くしてあげてくださいね」 「はいっ。あ、あの、私のことは、どうぞエマとお呼び下さいっ」 「まあ。よろしいのですか?」 「もちろんですっ。ミシェル様にも、仲良くしていただけたら嬉しいです」  エマはドキドキしながら、ミシェルを見つめた。  これから同じ屋敷で暮らすのだ。  それに、エマは本心から、この綺麗な人と仲良くなりたいと思った。  その想いが伝わったのか、ミシェルがにっこり笑った。 「こちらこそ。よろしくお願いします。エマ様」 「はいっ!」  エマが頷くと、ルシアンがそっと腰を抱いてくる。 「ミシェル。エマを出迎えてくれてありがとう」 「可愛い息子が、やっとお嫁さんを連れてくるんだもの。当然でしょう」  ミシェルが小さく笑いながら答える。  その隣で、大公がミシェルの肩を抱いて、ニヤリと笑った。 「俺のミシェルより美しい者はないと思っていたが、お前もなかなかやるな」 「何の自慢ですか。それに、エマはこの世の誰よりも魅力的です。美しさと可憐さを兼ね備えた、私の唯一の薔薇ですから」 「ほう、薔薇に例えるか。それなら俺のミシェルは……
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第249話 ロマンス本

     エマはソファーに座って、テーブルの上に配膳されるのを待つ。シーシとスースが慣れた手つきでお茶を淹れ、お茶請けのクッキーを添える。 「ありがとう、ミナ。シーシとスースも」 「どうぞ、ごゆっくりお召し上がり下さい」  双子はにっこりと笑い、一歩下がって控えた。  ナタリナもまた、エマの背後に静かに立つ。  エマはようやくお屋敷に到着した安心感から、ホッと息をついた。背もたれに体を預けて、温かい紅茶を飲む。 「すごく良い香りがする」 「こちらの茶葉は、デイモンド領で栽培しているそうですよ」  ナタリナの言葉に、エマは目を丸くした。 「え? 紅茶も作ってるんだ?」 「はい。ハーブティーにいたっては、数十種類あるそうで、体の調子などに合わせて嗜むと伺いました」 「そうなんだ。ミシェル様ってすごいんだね」 「エマ様。レヴィネージュ伯爵家は、帝国では薬草学の権威なんです~」 「レヴィネージュ伯爵家が販売する薬は、どれも効能が高いと評判で、侍医を持てない下級貴族からは、特に頼りにされているのですわ~」 「平民向けに、安くで手に入る薬もあるんです~」  シーシとスースが自慢げに話してくれる。  もともと、帝国の貴族令嬢である彼女たちは、こちらの事情に詳しいのだ。  エマはもっと話が聞きたくて、ナタリナを振り向いた。 「みんなも疲れたでしょ? 一緒にお茶したいんだけど……いい?」  使用人との同席は、貴族として行儀がいいとは言えない。  だが、エマにとっては、家族同然の側仕えだ。  ナタリナは眉をひそめたが、すぐに頷いてくれた。 「ここはエマ様の私室ですから。エマ様の希望通りにいたしましょう」 「うん! みんな座って。シーシ、お茶はたくさんあるでしょ?」 「はいっ! スース、カップを並べて」 「ええ。ミナは、座って。淹れ方をよく見ておくといいですわ~」 「ありがとうございます。スース様」  ミナは緊張気
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