All Chapters of 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!: Chapter 141 - Chapter 150

154 Chapters

私の天使!推しのヴァレンティンの誕生!

 「さあ、アデリナさん……後もう一息ですよ!頑張って……!」 「アデリナ様!頑張って下さい……!」 頑張れ……ませんけど? とある一室のベッドで力む私。それを手助けする平民の助産師。 横でホイットニーが私の手を握って励ましてくれている。 出産は鼻からスイカを出すようなっ痛さって聞いたことあるけど……全然違う!! 痛い!!痛すぎるからあ!!! 「ひえっ、も、無理! 無痛分娩を……無痛分娩を希望します!!」 「何ですか、それ。出産には自然分娩しかありませんよ、アデリナさん。」 なんて事だ……! いくらここが中世ヨーロッパ風の世界観だからって、出産方法くらいは自由選択できるようにして欲しかったよ!! だが耐えた。推しのため。 私の推しのヴァレンティンのため……!! 「おぎゃああ」 そうしてついに誕生した………! ヴァレンティン。愛ラブ、ヴァレンティン! やっぱり想像通りに可愛いヴァレンティン! 私の推しのヴァレンティンがついに!! 「よく頑張りましたね、アデリナさん。」 出産の手伝いをしてくれた助産師がそう言って、産まれたばかりのヴァレンティンを私の腕に抱かせてくれた。 生きてる。呼吸してる。新しい命…… 私とローランドの子供……… ……って!私のバカ!! あんな不倫クズ野郎を思い出す必要なんかないわ!! 「ヴァレンティン。貴方は私が守るからね。」 ローランドがいなくても、私には愛しのヴァレンティンがいる。 二人で生きていけ
last updateLast Updated : 2025-09-05
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私の天使!推しのヴァレンティンの誕生!

 城を出た私達は、クブルク国の最も最南部・へルックという田舎町に移り住んでいた。 元王妃だとバレたら色々と面倒なので偽名を使い、平民を装いながらの生活。 赤い屋根の可愛い二階建ての家を買い、そこでヴァレンティンも合わせて四人で暮らし始めた。 ホイットニーは町の洋食屋で働き、レェーヴは自警団で雇われ警備の仕事をしていた。 私の貯金があるから仕事はいいと言ったのに、ホイットニーもレェーヴも、ヴァレンティンに可愛い服や靴を買ってやりたいと言う。 それに加えて子育てに不慣れな私を二人がサポートしてくれる。 もちろん二人も不慣れだったけど、三人いれば何とやらだ。楽しく育児ができた。 ありがたかった。 だけど私は時々、夢を見た。 「アデリナ。信じてくれるかは分からないが… 私にとってお前は大切な存在なんだ。 心から————」 初めて結ばれたあの夜の、ローランドの顔。 ローランドの声。 抱きしめてくれた腕の強さ。温かさ。 元々よく熱を出すから常に体温の高い男だったけど、すごく温かくて、なぜか守られているような気持ちになった。 それから毎晩のようにローランドは私を執拗に求めてきていた。 義務のはずなのに必ず私を大事な人みたいに扱ってくれた。 ヴァレンティンを妊娠したと言った時のあの、嬉しそうな顔。 妊娠中の子煩悩のような、おかしな行動…… リジーが現れてからの……… あの時のローランドの心底呆れたような瞳と溜息、態度……… 寝室でリジーを呼ぶ、ローランドの声……… あれ? 私……本当は傷ついていたの? あんな風にローランドに裏切られて、本当は悲しかったんだ。 「&hell
last updateLast Updated : 2025-09-05
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ローランドの激情

 アデリナが消えた。 私に何も言わずに。 勝手に離婚届を用意して。ホイットニーとレェーヴと共に。 あの夜、拘束を解いて部屋に来る様にと言ったのに、何故かアデリナは来なかった。 懲りずに熱を出してしまった私は仕方なく寝室にランドルフと調査官の官僚を呼び、容疑者のリジーを呼んだ。 彼らと共にリジーを尋問していたのに。 その場に、無実だと証言するようアデリナを呼んだのに。彼女は来なかった。 その後も私はあの事件の捜査に忙しく、暫くアデリナに会えずにいた。 そうしたら……このザマだ。 離婚届と共にアデリナの……アオイの怒りの手紙が添えられていた。 《ローランド。 貴方がリジーに恋したのは分かっているのよ。 あの夜、彼女と一緒の寝室にいたわよね? だからもう私を捨てる気なのね。 いいわよ、そっちがその気なら離婚してあげる。 どうせ、ローランドは私の事なんか少しも好きじゃなかったものね? 今まで迷惑かけたわね。だけどもう自由よ。 これからは貴方が本当に愛するリジーと、末長くお幸せに。 アデリナ・フリーデル…… 元妻のアデリナより。》 名前を言い直した執筆の跡。 手紙と離婚届を受け取った私は怒りに震えた。 誰が……誰を愛してる、だって………!?  誰がお前の事を少しも好きじゃないだって!? 「アデリナ……いや、アオイ…… 私が愛してるのはお前だ………!! なのにどうして……! なぜ、私の元を去った!? 一体どこに行ったって言
last updateLast Updated : 2025-09-06
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ローランドの激情

 時は遡る——————。 リジーという平民の看護師が王宮に現れてから、妙な噂が流れ始めた。 「アデリナが…あのリジーとかいう看護師を虐《いじ》めている、だと?」 「はい……。何でも、あのリジーとかいう看護師を王妃陛下がお茶会に呼び出して、芝生に突き飛ばしたとか。 診察で、侍医が見ていない間に二人きりになると、王妃陛下がリジーに対して酷い罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせるのだそうです。 何でも陛下と親しくするのが許せないという理由で……」 自室に戻り、仕事着だった私の着替えを手伝いながらランドルフが報告を続ける。 「は………。馬鹿らしい。 親しくも何も、リジーはただの看護師だ。 診察時に侍医の側にいるだけ。 なのにそんなリジーにアデリナが嫉妬? そんな作り話。私が信じると思うか? ランドルフ。お前もその馬鹿げた噂を信じているのか?」 「いえ。 信じておりません。 ……以前の王妃陛下なら分かりませんが、今の王妃陛下はその様な低俗な真似は決してなされないはずです。」 「ふむ。ランドルフ。 お前もいつの間にかアデリナを信頼できるようになったのだな。」 「はい。恐れながら… 確かに以前は王妃陛下に対して不信感しかありませんでした。 ですがあの方は突然変わられました。 まるで別人のように……」 そうだ。アデリナは確かに変わった。 体はアデリナそのものだが、魂は別者だ。 アオイが入っている。 今もそれは、私だけの秘密だ。 それはアオイを守る上で必要な事だ。 「そうだろう。 だから、そんな噂は全くの作り話だというのだ。 それに…&h
last updateLast Updated : 2025-09-06
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ローランドの激情

 ランドルフが頭を下げて部屋を出て行った後、私はテーブルの上にあるアオイの髪飾りを眺めた。 子供を妊娠する前、何度かこの部屋でベッドを共にした時に忘れていった置き土産。 今はお腹が膨らみ、無理させてはいけないと行為を控えている。 実はすごく我慢している……… アオイが私と親しくするリジーに嫉妬してだと……? そうだったら、どれだけいいか。 あの者は驚くほど鈍い。 また、私も簡単にその言葉を言えない。 これまで人を愛した事がなかったから、直接その言葉を伝えるのが恥ずかしくて仕方ないのだ。 だから遠回しに伝えているのに、ちっとも察してくれない。 それに癒しの力を持っているからなのか、私の気持ちのせいなのか、アオイと一緒にいるだけで体調が良くなる。 髪飾りを手に取り、彼女の気配を感じながらキスをする。 まさか私がこんな気持ちになるなんて。 アデリナとはずっと冷え切った夫婦生活を送るのだと覚悟していた。 だが、今はどうだ。 アデリナの体でありながら、魂はアオイという不思議なあの者。 いつも驚くような行動をするあの者から目が離せなくなっていた。 そしていつの間にか彼女に惹かれていた。 そうだ。もう認める。 私は間違いなく、アオイを愛している。 いつの間にか私は本当にアオイを愛していたのだ。 あれほど知りたがっていた愛を……私はついに知った。 それはとても甘く、切なく、時々苦しく、そして彼女の全てが愛おしく、全力で守っていきたいという想いの芽生えでもあり。 彼女が私に向けてくれる好意や、優しさ、温かさ、素直さ、健気さに、心から安らぎを覚える事ができた。 愛とはお互いを敬い、助け合い、思い合う気持ち。 これが愛。それはまるで奇跡そのもの。 それにアオイの目を通して、少しずつ気づかされた事がある。 
last updateLast Updated : 2025-09-07
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ローランドと危険なヒロイン

 リジーとかいう女はやけに馴れ馴れしい。 「陛下……触診いたしますね。」 「なぜだ?なぜお前が触診を?」 そう言って侍医を見るが、彼はなぜかぼんやりしながらこの異常な事態を眺めている。 普通なら王の体をたかが一介の看護師ごときに触らせはしないはず。 妙だな……… しかもリジーは私の脈を見ながら、まるで誘惑するかのような目線を向けてくる。 体を触る手つきもどこか、男に手慣れた女のようで…… 「もういい。…私の体調に変わりはない。」 「あっ……!そんな、どうしてっ……」 彼女の手を振り解く。 それからすぐにシャツのボタンを止め、リジーと侍医に下がるように言った。 あの女の視線や仕草は一体何なのだ? ……気持ち悪い。あんな風に、知らない女に触られたくはなかった。 アオイ以外の女に……… ◇ 「どうやら元々、王妃陛下をよく思っていなかった大臣をはじめとした、数人の官僚らが噂を流しているようです。 その中でも特に、王妃陛下の侍女であるセイディ様が悪質な噂を流していると。 一方で、王妃陛下の功績を認めた者達、王妃陛下に携わるメイド達が主に王妃陛下の擁護をしているようです。 逆に大臣や官僚、ホイットニー以外の王妃陛下の侍女達が、なぜかリジー擁護派に回っています。 つまり今の宮廷は、王妃陛下派とリジー派で完全に二分されている状態です。」 調査を終えたランドルフが私の前に立ち、複雑な表情で結果報告をする。 「なるほど。 大臣や官僚となると、さしずめあの、タウゼントフュースラー伯爵辺りが首謀者だろうな。 奴は昔から金にがめつく、アデリナが財務庁の帳簿を厳しくチェックしてるのが気に食わなかったようだし&hell
last updateLast Updated : 2025-09-08
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ローランドと危険なヒロイン

 王宮ではリジー擁護派が、これまで以上に過剰に彼女を擁護するようになった。  まるで彼女を崇拝する信者のように。  あの、傲慢で平民などには目もくれなかったセイディまでが、彼女を崇めるようになった。 何も知らない兵やこれまでどちらの派閥でもなかった官僚達までも…… リジーを見る目つきが皆、歪で妙だ。  あの者は一体………? 「陛下。この度、この私がリジーの後見人となりました。  つきましてはリジーをぜひ、陛下の側室にして頂きたく……」 ついにタウゼントフュースラー伯爵までもがおかしな発言をする様になった。  この国の法律は一夫一妻制で、いくら王族と言えど側室を持つ事は禁止されている。  もし妃が子を持つ事ができない場合は、妃と離婚して新しい妃を迎えるか、血族から養子を迎えるか。そう決まっている。 それを分かっていながら何故……? やはりこの者も目がおかしい。  虚で、まるで操られているかの様な…… その夜、なぜか私の部屋にリジーが勝手に入っていた。 「……リジー!?一体ここで何を!?」 「あ、ローランド様。  お聞きになりました?  私が側室候補になった事を……  そこで侍医《せんせい》からローランド様の脈を見るようにと言われました。  侍従長様からお部屋の鍵をお預かりして、こうして待たせて頂いていたのです。  体調が悪かったとお聞きしまたが、大丈夫ですか?」 ベラベラと喋りながら私に近づいて触ろうとするリジーの手を、思いっきり振り払う。 「私に触れるな……!それに私に許可もなく勝手に部屋に入ってきて、覚悟はできてるんだろうな?  侍医も侍従長も厳しい罰が必要だな……!」 「ローランド様っ……」 「それに、私をローランドと呼べるのはアデリナだけだ…!」 そこで固まっているリジーをギロっと睨みつける。  確かに最近この女のせいで多忙が続き、体調が悪かった。が、そんな大事なことまで筒抜けとは。 
last updateLast Updated : 2025-09-08
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ローランドの執念

 アオイを守るため、リジーが本性を現し、悪事を働いている決定的証拠を掴むまでわざと泳がせる事にしたのだが。 「ローランド様っ!」 看護師とは程遠い服を着たリジーは懲りずにアオイの目の前で私に抱き付き、しかもアオイに何かされたかの様に振る舞い始めた。 周囲は騒ぎ、衛兵や官僚達はリジーの弱々しい演技にコロッと騙されて、私の目の前でアオイの悪口を吐いた。 ランドルフは事の成り行きを、今は我慢の時ですと目で訴えて首を横に振った。 調査続行のために。 だがついに私の怒りは頂点に達し、アオイの前で悪口を言った奴らを叱り付けた。 すぐにでもリジーを城から追放したいほど怒りに震えていたが、アオイがリジーを罰する事は嫌がるだろうと思い、それ以上追及しなかった。 だが内心、私は荒れに荒れていた。 ……私のアオイに。私の妻を貶めようとするとはいい度胸だ。 リジー。お前の悪事の証拠を掴んだら、徹底的に追い詰め、このクブルク王宮に来た事を後悔させてやろう……!! そうして遂にあの事件が起きた————。 「陛下……!王妃陛下がリジー様に毒を… リジー様を暗殺しようとなさったと…!!」 ————やられた!!! 急いで駆けつけると、タウゼントフュースラー伯爵が勝手に兵を率いて、アオイを拘束していたのだ。 ————誰が勝手にアオイに触れてもいいと言った? 大臣と兵どもを切り刻んでやりたかったが、やはり彼らの目には生気がなく、どこか虚だった。 しかもその目はアオイに集中し、怒りに満ちていた。 このままでは本当にアオイと子供が危ない。 兵の側にいても危険なだけだ。 そうだ……被疑者という扱いにしておいてあの北棟に閉じ
last updateLast Updated : 2025-09-09
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ローランドの執念

 そうして私は心を鬼にし、アオイを北棟に閉じ込める様に言った。 アオイ……今は我慢してくれ。 お前に不便がないよう、部屋では快適に過ごせる様言っておくから…… 今その事をアオイに説明できない。 この状況だと、誰がアオイに危害を加えるか分からないからだ。 むしろ私がリジーに大人しく従ってると周囲に思わせておく方が、まだアオイは安全なはずだ。 悪いとは思ったが私を呼び止めるアオイを振り切り、毒に倒れたというリジーの元へ…… 彼女の自作自演の証拠を見つけに向かった。 一週間後、毒から回復したリジーが目を覚ました。 だがリジーが目覚めると同時に、私の方が疲労と熱で倒れてしまった。 早くリジーから自白を引き出し、アオイの無実を証明したいのに。 だからランドルフ達に頼み、容疑者としてリジーを招集するようにと命令しておいたのだ。 私の部屋ならあの女は必ず逃げずにやってくるだろう。 今回の件でアオイが犯人扱いされる決め手となった、アオイの髪飾り。 あれについてはリジーが私の部屋に来たあの夜に盗んだと思われる。 それにはやはりリジーの手垢が残っていた。 着色をつけた手形と、髪飾りに付いていた手垢が一致した。 それからリジーの部屋に用意されていた解毒薬の残った瓶。すでに使用されているのは、操られた侍医がリジーに飲ませたのだろう。 初めからリジーは死ぬ気などなかったのだ。 これらを叩きつけ、後はアオイから無実だと言わせれば…… だが、あの時どうやらリジーは部屋に入る直前にアオイに何かを吹き込んだらしい。 その場にアオイが来ていた事を知らないまま私達はリジーを徹底的に問い詰め、やっと自白させた。 それから仕事とリジーの件に忙殺されている間に、アオイがいなくなってしまったのだ。 離婚届と手紙を残して。 ……どうして
last updateLast Updated : 2025-09-09
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ローランドの執念

 初めは怒りに震えた。 けれどアオイの消息が不明のまま、時間だけが虚く過ぎていった。 後から後から、アオイにちゃんと説明した上で、愛してると伝えればよかったと後悔ばかりが募った。 言葉足らずだった自分を何度も悔いた。 私がリジーを愛するはずがないと。 あんな風に私のアオイを罠に嵌めた女など、誰が愛すると言うんだ。 あんなに性格の腐っている女を、私が愛することは一生ない。 私が生涯愛するのはアオイ。お前だけだ。 私を懸命に愛してくれて、私の子を身籠ってくれたお前だけなんだ。 幼い頃、体の弱かった私は両親に愛されず、寂しい思いをしながら過ごしてきた。 だが病気で寝込んだ私を何だかんだ言いながらも世話を焼く、アオイに何度も癒された。 人から優しくされるということを、人の温かさというものを、そして不器用ながらも愛というものを、アオイ。お前に教えて貰ったんだ。 やっと愛を知ったのに。 人を愛する事ができたのに…… アオイは実家にも戻ってないという。マレハユガ大帝国の皇帝に、娘を見つけなければ殺すと脅された。 あんなにアデリナを嫌っていた母上までも。 何やらアオイの素直さが気に入ったらしい。 しかもサディークのあの王太子までもが彼女の失踪の噂を聞きつけて、文句を言ってくる。 「我が国が和平条約を結んだのは王妃陛下です。 王妃が無事に戻らなければ……条約は破棄させて貰いますよ。」 うるさい。お前に言われなくても、必ず見つける。 だが、一体どこに消えてしまったんだ……  クブルクの大規模な軍を使い、アオイ達の捜索を開始してはいるが、一カ月経っても何の手掛かりも掴めなかった。 そこで神殿にも協力を依頼した。 「陛下。貴方がしっかり王妃陛下を捕まえておかないから」 呆れたようにイグナイトが溜息を吐いた。 「分かっ
last updateLast Updated : 2025-09-10
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