翌日は何事もなく順調に過ぎ、天音が何か仕掛けてくるような気配もなかった。洵と陽介は、天音に過剰な関心を向けることはせず、チームと共に展示会場でひたすら機材の調整や進行の確認に追われていた。すでに予告は出ており、多くのゲーム系インフルエンサーによる先行プレイも済んでいたが、一般公開はこれが初めてとなる。洵と陽介は少なからず緊張しており、明日の本番で起こりうるあらゆるトラブルを想定し、限りなく完璧に近い状態を目指していた。午後四時を回ってようやく昼食の時間が取れた。洵はややうつむき加減で、スマートフォンに届く様々な通知を確認しながら箸を動かしている。すると、陽介が横からスマホを取り上げた。「食事に集中しろって」以前、洵は酒の飲みすぎで胃出血を起こしたことがある。若さゆえの回復力はあるものの、オカンのように世話焼きな陽介としては、どうしても心配せずにはいられなかった。「準備はもう大方片付いたし、あとは明日を待つだけだろ。今ちょっと見なくたってどうってことない」洵は聞く耳を持たず、すっと手を差し出した。「よこせ」彼は無表情になると目つきが鋭くなるため、怒っていると勘違いされることが多い。実際は怒っているわけではなく、単にそういう顔立ちなだけなのだが。陽介はスマホを自分の背後に隠した。「いいから早く食え……」言葉の途中で、視界の隅にある人影が映り込み、陽介の顔色が一変した。彼は即座に視線を戻すと、洵に目配せを送った。「天音さんが来たぞ」洵はピクリと眉を動かしたものの、陽介ほど大きな反応は示さなかった。彼は目の前に並んだ料理に視線を落とし、淡々と食事を続けた。「構うな、食え」その一言で、陽介の心はすっと落ち着きを取り戻した。自分が焦って取り乱しそうになっても、洵が常に泰然としているおかげで、すぐに冷静になれるのだ。洵には独特のオーラがある。ただ座っているだけでも、同世代の人間とは違う圧倒的な存在感と、年齢離れした落ち着きを放っていた。陽介は自分の過剰反応を反省し、食事を再開した。茶碗に顔を近づけるようにして尋ねる。「挨拶、する?」洵は短く答えた。「いらない」「でも、機嫌損ねてまた絡まれたら面倒だろ」洵は淡々と言い放った。「なるようになる。余計なことは考えるな」そんな洵の態
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