視線が交錯したその一瞬、二人の瞳から偽りの色が消え失せた。まるで仮面をつけていた者が、不意に素顔を晒してしまったかのように。天音は床に散らばったコーヒーを見て、一瞬頭が真っ白になったが、すぐにスタッフを呼んで片付けさせた。汚れなかった軽食を美咲に渡し、彼女の心配を適当にあしらった。だが、脳裏にはさっきの視線が焼き付いて離れない。洵は役者でもないのに、なぜあんなにも鋭く心に突き刺さる目をするの?洵もまた、視線をパソコンの画面に戻したものの、あの瞬間の空白から抜け出せず、何が起きたのか理解するのに二秒を要した。そして、事態はおかしな方向へ進み始めた。不意の視線の交錯に加え、天音が同じラウンジにいるという事実が、彼の集中力を削いだのだ。白い蛍光灯が彼の目元を照らしている。洵は黒いマスクをしているが、その秀でた眉の形ははっきりと見て取れた。傷隠しの眼鏡も相まって、普段の刺々しい冷酷さは鳴りを潜め、どこか冷ややかで知的な、近寄りがたい雰囲気を醸し出している。洵は、天音の視線が自分に向けられているのを肌で感じていた。以前なら完全に無視できたはずが、今はその気配に思考を乱された。洵は不快げに眉を寄せ、マウスを強く握りしめて、無理やり意識を仕事に向けようとした。陽介が何度か洵に話しかけたが、彼は完全に無視を決め込んでいる。さっき天音の話をしつこく聞かせたせいで嫌気が差したのだろうと判断した陽介は、洵への「冷戦」を受け入れ、彼もまた口をつぐんだ。陽介は、洵と天音の間に流れる不穏な空気に全く気づいていない。陽介が天音の方を振り返ると、ちょうど彼女が視線を外したところだった。陽介はこれを好機と捉え、挨拶に向かった。そして、天音がここにいる経緯を知った。やはり思った通りだ。天音は友達思いで、わざわざ空港まで見送りに来て、世話まで焼いている。「世話焼き」という言葉と天音が結びついたことに、陽介は衝撃を受けた。これまで、他人を世話する天音など想像もできなかったからだ。ギャップが凄まじい。陽介の中で、天音に対する印象は決定的に変わった。たった二つの出来事で、これまでの悪印象が覆されたのだ。陽介は湊の一件を持ち出し、天音に感謝を伝えた。天音は陽介の態度から、彼を籠絡するのが美咲と同じくらい簡単だと確信した。彼女は仕
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