彼はあの日、あの時に戻って、結末を書き換えたいとさえ願っていた。 それは隼人にとって、生涯消えることのない後悔だったからだ。「お前が溺れているのに気づいて、俺も海に入った。でも、静真がお前を助け上げ、船に乗せて連れ去っていくのを、ただ黙って見ていることしかできなかった。そうして、長い年月をすれ違ってしまったんだ」隼人の声は重く、吐息さえも深かった。その言葉には悔しさが滲んでいた。「先にお前を見つけたのは俺だったのに。静真はなんて運がいい男なんだ」月子の目尻から涙がこぼれ落ちた。彼女は勢いよく隼人の胸に飛び込んだ。静真がいなくても、自分は助かったのだ。もっと早く隼人と知り合えていたかもしれない。静真を愛することもなかったかもしれない。ただ、あのほんの数分の差で、すべてが違ってしまったなんて。月子は隼人の引き締まった腰に腕を回し、強くしがみついた。「バカ……どうして、もっと早く来てくれなかったのよ!」彼女の泣き声を聞いて、隼人の理性も崩れ落ちた。彼もまた強く彼女を抱き締め、掠れた声で宥めるように言った。「すまない、月子。俺がもっと早ければよかったんだ」感情が激しく高ぶり、月子はもう言葉が出なかった。背中を撫でる彼の手の温もりだけを感じている。隼人は言葉を続けた。「あの日、いつもの場所にお前がいなくて、俺はお前を探しに行った。でも見つけた時には、お前はすでに静真に助けられた。あの頃の俺は愚かで、恋という感情さえ知らなかった。ただ、お前と知り合う機会を逃したことが残念だと思っただけだった。あの日以来、お前を見かけることはなくなった。やがて忘れていくだろうと思っていたのに、ふとした瞬間に思い出してしまう。そして、お前と静真の結婚式で再会した。俺が海外へ行こうと決心したのは、あの日だ」あの時が、月子にとっては隼人との初対面だった。彼の冷ややかで近寄りがたい雰囲気に圧倒されていただけで、そんな裏事情があったなど知る由もなかった。「海外に行って仕事に没頭すれば、お前を忘れられると思っていた。なぜお前の結婚を見てその日のうちに発つことにしたのか、自分でもよくわかっていなかったし、お前が特別な存在だとも思っていなかった。でも、時折お前の夢を見るようになり、海を見るたびに無意識にお前を思い
Read more