そういえば、遥香が脳腫瘍と診断された時、医師が記憶を失う可能性があると言ってた。あの時遥香はとても心配して、二人の写真を全部一つのアルバムにまとめたのだ。遥香が目覚めた時は、ほぼ毎日そのアルバムを見てた。でも、いつから見なくなったのだろう?雄介は何だかよく分からなくなってきた。そういえば、最近遥香はあのアルバムを一度も取り出してない気がする。使用人はこの話を聞いて困った顔をした。「旦那様、お忘れですか?奥様のあのアルバムは燃えてしまいました」「燃えた?」雄介はようやく思い出した。前に帰宅した時、確かにゴミ箱で半分燃えた写真を見たことがあった。ということは、あの時燃えたのは、このアルバムだったのか!雄介は慌てて急いで言った。「写真が燃えても、ネガはきっとある!遥香はあんなに写真を大切にしてたんだから、きっと焼き直したはずだ。もう一度よく考えてみろ!」使用人は一生懸命考えて、やっと思い出した。「ああ、そうです!奥様がアルバムを金庫に入れていらっしゃいました!」雄介はもうじっとしてられず、すぐに金庫を開けに行った。彼と遥香の金庫の暗証番号は、以前は結婚記念日に設定してた。ところが驚いたことに、暗証番号が間違ってると表示された。遥香はいつ暗証番号を変えたのだろう?雄介の心に何となく不安が湧いた。でも彼は他の暗証番号もいくつか試してみた。自分の誕生日、遥香の誕生日、二人が初めて会った日、プロポーズした日、遥香が昏睡から目覚めた日……二人の思い出に関わる日付を片っ端から試したが、金庫は開かなかった。雄介は完全に慌てた。どうしてか、遥香が自分から遠いところにいるような気がした。雄介はもう我慢できず、業者を呼んで金庫をこじ開けさせた。開けてみると、中はほとんど空で、アルバムが一冊だけあった。以前遥香が二人の写真を保存してたアルバムだった。雄介はアルバムを見た瞬間、明らかに安心した。中身を確認する間もなく、慌ててアルバムを持って病院に戻った。「遥香」病院で、雄介はベッドの遥香に優しい笑顔を向けた。「俺たちの昔の写真を持ってきたんだ。これを見れば、俺が君をどれだけ愛してたか分かる」遥香は、さっき雄介が出て行った間に、医師から自分が記憶を失ったことと、雄介が自分
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