玲奈は新垣グループのビルの前に車を止め、長い間待っていた。多くの社員が会社を出て来るのを見かけたが、智也の姿は見えなかった。待っていられず、彼女は携帯を取り出し、電話をかけようとした。ロックを解除すると、ちょうど今朝、智也から送られてきた愛莉を幼稚園まで送ってくれというメッセージが目に入った。朝はずっと忙しくて、メッセージに気付かなかった。今思えば、少しだけ愛莉のことが心配だった。娘は極度の負けず嫌いで、何でも一位を目指すタイプである。今朝遅刻したら、きっと泣き出して、ひどく落ち込んだことだろう。そう考えると、玲奈の胸は締め付けられた。彼女が今朝、愛莉を送らなかったことで、愛莉はさらに自分を恨み、沙羅こそ彼女の母親に相応しいと思うだろう。しかし、そうなったとして、何か困ることでもあるだろうか?自分から彼らを捨てたわけではなく、彼女が彼らに捨てられたのだ。その時、新垣グループの入り口から、勝を連れて出てくる智也の姿が見えた。スーツ姿の智也の凛とした姿が、行き交う人々の中でもひときわ目を引く存在だった。彼がそこに立つだけで、誰もが視線を奪われる存在感があるのだ。黒いロールスロイスが道端に止まり、智也は近づいてもすぐに車に乗らなかった。運転席のドアを開け、手を車のドアの上の部分にかざして、運転席に向かって手を差し伸べた。玲奈はこの車に気付かず、中に誰がいるのかも知らなかった。しかしすぐに、その人物が沙羅だと分かった。車から降りた沙羅は智也にしっかり守られ、まるでこの世のものではない女神のように美しく真っ白なワンピースを着ていた。余計な飾りのない清楚な姿は、智也の傍に立っても少しも見劣りせず、むしろお互いを引き立て合っていた。車の窓をおろし、玲奈は通りの向こうの夫と彼の愛する女を眺めた。夕日もこの二人の美しさに酔いしれたのか、地面に伸びた影は仲良さそうに絡み合っていた。沙羅が自然に智也の手を組むと、智也は彼女のほうへ目線を下げながら、その瞳に優しい笑みを浮かべた。隣の勝はそれを見て、そっとその場を離れた。智也は沙羅に何か話しているようだが、距離が遠くて、聞き取れなかった。彼女は車に座り、身動きが取れないように固まっていた。しかし、親が孫娘に会いたがっていることを思い出し、無理やり
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