夜11時、美由紀は最後のお客を見送ってから、ソファに座り込んだ。彼女は携帯を取り出してSNSを開き、ちょうど玲奈が家族写真を投稿しているのに気付いた。春日部家は非常に仲睦まじい様子で、それを見た美由紀は不快感を覚えた。今日は新垣実の誕生日だったのに、嫁である玲奈は家に帰って来なかったばかりか、帰って来ないことについて先に一言も伝えてはいなかったのだ。例年であれば、連続二日間、玲奈は家で誕生日のお祝い用の料理を作っていたというのに、今年、彼女は実家の春日部家に帰ってしまった。それで美由紀の心には不満が込み上げてきた。彼女は怒り心頭に発し、イライラした様子で二階にあがっていった。そしてドアをノックすることもなく、そのまま智也の書斎へと入っていった。携帯を智也の手元にぽいっと置き、美由紀は地団太を踏んで言った。「見てごらんなさい、一体どういうことかしらね」智也は手元の携帯をちらりと見て、訳が分からないという様子で眉をひそめた。「なにか問題でも?」美由紀は両手をデスクの上にバンッと置き、目線を下にし智也を睨みつけた。「今日はあなたのお父様の誕生日じゃないの。彼女はおめでとうの一言すらなく、何も言わずに実家に帰ったのよ。結婚してから、あの子の衣食住は全部我が新垣家の財源から来ているのよ?私やお父さんを敬わず、自分の実家に帰ってそっちのために働くなんて非常識でしょう。あの子、頭がおかしくなっちゃったんじゃないの?」智也は美由紀が生活上のことでぶつくさと言うのが好きではなかった。彼は携帯をデスクの上に置き彼女のほうへ押し戻して、冷たく淡々とした口調で言った。「母さんだってしょっちゅう実家に帰ってるんじゃないのか?」智也の中で、玲奈が実家に帰るのは別に悪いことではなかったのだ。美由紀は智也のその言葉を聞いてさらに腹を立てた。「私と同じじゃないでしょ?あなたと玲奈が結婚する時、春日部家は一人として挨拶に来なかった。それに明らかに玲奈とは縁を切った態度だったでしょ?きっと我が新垣家がますます発展していっているものだから、それを見てあなたに媚びを売る計画なのよ。だから、娘の玲奈を家に帰らせたんだわ」智也は眉間にしわを寄せ、まくし立ててくる美由紀を無視することに決めた。「あの春日部家は絶対にあなたに何か要求してくるわよ。言っておく
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