春日部玲奈(かすかべ れいな)が白鷺邸に帰ってきた時には、すでに夜の10時を回っていた。今日15日は排卵日だ。第一子は女の子だったので、義父母はずっと次は男の子を産めと催促していた。もし、彼女が嫁いだのが他の家であれば、彼女は彼らに王位継承者が必要なのかと臆せず尋ねるところである。しかし、新垣家は久我山(くがやま)市一の財閥家で、この家には莫大な財産を受け継ぐための男子が必要だったのだ。寝室に行くと、新垣智也(にいがき ともや)はすでに寝る準備を済ませていた。一言も気にかけるような言葉もなく、二人はさっそく本題に入った。3分後、智也はバスルームに体を洗いに行き、玲奈はベッドに横たわったまま両足を上げピタリと壁につけ、智也からの「生命の源」をしっかり奥まで届けられるように姿勢を保っていた。目的を達成し、一滴も余すことなく漏らさないようにしなければ。するとすぐに、智也はバスルームから出て来て、今服を着ている玲奈に背中を向けて言った。「定期的に調べろよ、何か兆候があればすぐに俺に電話しろ!」結婚して5年、彼は彼女に対して一言しゃべることすら億劫そうだった。彼らの結婚は、ただ法律上の夫婦という関係で、中身は空っぽだった。智也は外に愛人を作っていた。玲奈は智也のSNSを全て調べ、小さな手がかりを頼りに、その浮気相手の女のアカウントを見つけ出すことができたのだ。この時から、彼女はこっそりと二人の浮気を調べていた。夫の行動を探るには、彼女は結婚をぶち壊しにしたその浮気相手の女から調べていくしかなかった。その女は頻繁にSNSをアップしていた。小さいことでは日常生活の事、大きなことでは何かのイベントや誕生日の事などだ。二人目を計画し始める前は、玲奈はおおよそ智也に会うことなどできなかった。しかし、今は彼らは月に一回会っている。智也が急いで出て行こうとするのを見て、玲奈は急いで体を起こし、彼の背中に向かって言った。「ちょっと話したいことがあるの」智也は振り返り、無表情で彼女に尋ねた。「何を話し合う必要がある?」玲奈は声のトーンを落とし、懇願するような声で言った。「私、あなたと平凡な日々を過ごしたいの」この結婚を続ける必要などないことは分かっていたが、玲奈はそれでも試してみたかったのだ。もしもがあれば?
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