拓海の口づけは強引で、それでいてどこか優しい。彼はキスがうまい。ほんの数回で、玲奈の身体はすっかり力が抜けてしまった。押し返したいのに、指先にすら力が入らない。玲奈はただ、少しずつ息を奪われていくのを受け入れていた。拓海は力の抜けた玲奈を抱きとめ、手を伸ばして胸元のボタンを外しにかかった。だが一つ外したところで、拓海は動きを止めた。拓海は俯き、口づけで赤く熱を帯びた玲奈の頬を見つめる。胸は高鳴り、衝動も抑えきれない。今すぐにでも、玲奈を自分のものにしたかった。けれど玲奈は、まだ離婚していない。そう思った瞬間、拓海は衝動に歯止めをかけた。玲奈の前で、すんでのところで踏みとどまったのは一度や二度ではない。身体の奥が張り裂けそうなのに。それでも彼女の名誉のために、拓海は諦めることを選んだ。玲奈はぼんやりしていて、頭の中はぐちゃぐちゃだった。拓海は彼女を抱き寄せ、掠れた声を耳元に落とした。「ごめん。俺はまだ、お前を手に入れられない」その声に呼び戻され、玲奈ははっとして目を見開いた。濁っていた視界が、一瞬で澄んでいく。玲奈は身体を起こし、勢いよく拓海を突き放った。同時に胸元のボタンを留め直し、怒りに任せて言い放つ。「須賀君、あなた、恥知らず」玲奈の怒りを見て、拓海は整った顔に笑みを滲ませた。そして静かに、逆に問い返した。「なあ、玲奈。こういうの、刺激的だと思わないか?」玲奈は答えなかった。背を向けてドアを開け、そのまま車を降りた。拓海も慌てて降りる。少し大きな声で追った。「怒った?」玲奈は足を止めない。答える気配もない。自分が怒っているのかどうか、玲奈自身にもわからなかった。胸の奥には、いろいろな感情が渦を巻いていた。玲奈は拓海が嫌いなはずだった。なのにさっきは、折れてもいいと思ってしまった。さっきのキスが、あまりにも心地よくて。このまま続けたいとさえ――けれど冷静になった途端、玲奈は自分が情けなくなった。まだ離婚もしていないのに、別の男と寝たいと思ってしまったのだ。そう思えば思うほど、足は速くなる。拓海は玲奈が自分を無視するのを見ると、数歩で追いつき、手を掴んだ。「本当に怒ってるのか?」玲奈は
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