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602 チャプター

第601話

拓海の口づけは強引で、それでいてどこか優しい。彼はキスがうまい。ほんの数回で、玲奈の身体はすっかり力が抜けてしまった。押し返したいのに、指先にすら力が入らない。玲奈はただ、少しずつ息を奪われていくのを受け入れていた。拓海は力の抜けた玲奈を抱きとめ、手を伸ばして胸元のボタンを外しにかかった。だが一つ外したところで、拓海は動きを止めた。拓海は俯き、口づけで赤く熱を帯びた玲奈の頬を見つめる。胸は高鳴り、衝動も抑えきれない。今すぐにでも、玲奈を自分のものにしたかった。けれど玲奈は、まだ離婚していない。そう思った瞬間、拓海は衝動に歯止めをかけた。玲奈の前で、すんでのところで踏みとどまったのは一度や二度ではない。身体の奥が張り裂けそうなのに。それでも彼女の名誉のために、拓海は諦めることを選んだ。玲奈はぼんやりしていて、頭の中はぐちゃぐちゃだった。拓海は彼女を抱き寄せ、掠れた声を耳元に落とした。「ごめん。俺はまだ、お前を手に入れられない」その声に呼び戻され、玲奈ははっとして目を見開いた。濁っていた視界が、一瞬で澄んでいく。玲奈は身体を起こし、勢いよく拓海を突き放った。同時に胸元のボタンを留め直し、怒りに任せて言い放つ。「須賀君、あなた、恥知らず」玲奈の怒りを見て、拓海は整った顔に笑みを滲ませた。そして静かに、逆に問い返した。「なあ、玲奈。こういうの、刺激的だと思わないか?」玲奈は答えなかった。背を向けてドアを開け、そのまま車を降りた。拓海も慌てて降りる。少し大きな声で追った。「怒った?」玲奈は足を止めない。答える気配もない。自分が怒っているのかどうか、玲奈自身にもわからなかった。胸の奥には、いろいろな感情が渦を巻いていた。玲奈は拓海が嫌いなはずだった。なのにさっきは、折れてもいいと思ってしまった。さっきのキスが、あまりにも心地よくて。このまま続けたいとさえ――けれど冷静になった途端、玲奈は自分が情けなくなった。まだ離婚もしていないのに、別の男と寝たいと思ってしまったのだ。そう思えば思うほど、足は速くなる。拓海は玲奈が自分を無視するのを見ると、数歩で追いつき、手を掴んだ。「本当に怒ってるのか?」玲奈は
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第602話

拓海は俯いたまま、笑みを含んだ声で言った。「誰かと別れたい時ってさ。相手の金、全部使い切りたくなるだろ」言いたいことがあまりに露骨で、玲奈はなぜか腹が立った。顔を上げて睨みつけ、きつい口調で言い返す。「でたらめもいい加減にして」拓海は身を屈め、視線を玲奈の高さに合わせた。探るように見つめ、しばらくしてから言った。「図星だろ?」玲奈は手を上げて拓海を叩こうとした。けれど力が入っていない。その様子が、拓海には甘えているように見えたらしい。拓海は笑った。目の中には甘さと優しさが滲んでいる。玲奈は目を合わせられない。拓海の視線が、熱すぎた。静まり返った空間に、鋭い着信音が響いた。その音は、玲奈にとって救いだった。いつからだろう。玲奈は拓海の目が、少し怖くなっていた。いつも深く思い詰めたような顔で見てくるから、引きずり込まれそうになる。そしてまた、別の深みに落ちてしまいそうで。着信は鳴りやまない。画面を見ると、昂輝からだった。玲奈は迷わず背を向け、そのまま通話に出た。電話口で、昂輝の澄んだ声が弾む。「玲奈。今夜、ご飯でも行かない?」玲奈は首をかしげる。「先輩、どうしたの?」反射的に、誕生日なのだろうかと思った。そういえば昂輝の誕生日がいつか、玲奈は知らない。昂輝は言った。「応援の気持ちを込めて、奢りたいんだ」「応援」という言葉で、玲奈はすぐにわかった。明日は院試の日だ。昂輝は、励ましたいのだ。少し考えてから、玲奈は断らなかった。「……わかった。お願いするわ」玲奈の返事を聞き、昂輝はようやく笑う。「じゃあ、仕事終わったら迎えに行く。住所を送って」「わかった」玲奈は考える間もなく答えた。通話を切ったあと、まだ携帯をしまいきらないうちに、拓海が寄ってくる。口元をわずかに上げ、痞っぽい笑いを浮かべた。「なあ、玲奈。俺だって応援くらいできるけど?」玲奈は、ろくなことを言わない気がして、どういう応援かは訊かなかった。声を沈めて言った。「いらないわ」拓海を避けて立ち去ろうとした。だが拓海はふいに玲奈の耳元へ寄った。、熱い息が耳たぶにかかる。「腹は満たしてもさ。別のとこが腹ペ
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