All Chapters of 地味男はイケメン元総長: Chapter 11 - Chapter 20

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ヒミツ③

 い、言ってしまったーーー! 「……何? 交換条件出すの? お前のメイク好き秘密にしてやるって言っただろ?」 怒るかもと思ったけれど、日高くんは何だか面白そうな笑みを浮かべている。 「そ、その代わりに火燕の総長だってことを秘密にするって言ったでしょ?」「……つまり、本当は地味男じゃないって秘密の方をを守る代わりにメイクさせろってことか?」「そうよ」「……ふーん」  何だかニヤニヤしている日高くん。 怒ってはいないけれど、良い予感もしなくて何だか不安になる。 「ま、良いぜ。それだけで秘密にしてもらえるなら悪い話じゃない」「そ、そう? ありがとう!」 不安はまだちょっとあったけれど、了承してもらえて良かった。「じゃあそろそろ戻るか。あいつらどこにいるだろうな?」 そう言いながら立ち上がり、メガネを掛けようとする日高くん。「あ、待って」 あたしはすぐにメガネ拭きを取り出して手を差し出した。 「メガネ貸して。やっぱりそれじゃあ見えづらいでしょう?」 日高くんのメガネにはまだあたしの手あかがついたままだ。 気になるし、あたしのせいだから綺麗にしておきたい。 「ん? ああ、じゃあ頼む」 今度は素直に渡してくれる。 さっきはメガネなしで工藤くんたちに会わないように焦ってたのかな? そんなことを考えながら拭いていると、このメガネに度が入ってないのが分かった。 入っていたとしてもそこまで強くない。 「これ、度が入ってない? もしかして本当はメガネもいらないんじゃない?」 そう聞きながら返した。「まあな。地味男になるって言ったとき、親父がこれもつけてけって買ってきたやつだからな」 メガネを掛けながら教えてくれる。「お父さんが?」 父親も協力的
last updateLast Updated : 2025-06-27
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閑話 日高 陸斗

 ガチャ 誰もいないアパートに帰ってくると、俺はすぐベッドに横になる。 今日は疲れた。 メシ食ってシャワーも浴びなきゃならねぇけど、その前にちょっと休憩だ。  メガネを取ってローテーブルに軽く放り投げると、邪魔臭い髪をかき上げる。 「ったく、休みの日までこんな格好しなきゃなんねぇとか……」 愚痴ったけれど、それでも最初のジェットコースター以外は中々楽しめたし、悪い事ばっかりじゃなかった。  普通の学生とつるむのは面倒だったが、花田辺りなんかは面倒見が良いから勝手に色々やってくれて楽だったなぁ。 工藤と小林はちょっと面倒臭ぇけど、大体二人でつるんでるからこっちから話しかけなきゃ面倒なことにはならねぇし。  女子チームは、何か色々やってたな。 宮野が花田を好きなのは今日の出来事で何となく察した。 それを田中や明川がフォローしてて……女子って何であんなに恋愛に力入れれるんだろうな、不思議だ。  しかも倉木まで巻き込んでやがったし。  そうして倉木の顔を思い浮かべてフッと笑いが|漏《も》れた。 「あいつ、あんなに面白そうな奴だったとはな」  学校では友達もいなさそうな地味子にしか見えなかった。 肩までの髪で黒縁メガネを掛けた地味な女。 それくらいの認識だった。  他にはせいぜい、地味男をやってる俺とセットにされることがあったからうぜぇなーと思ってたくらいか。  それがまさかあんな面白いヤツだったとは。  俺の顔に見惚れてる様だったから、そのまま誘惑して黙っててもらおうかと思ったら……。『すっごくもったいない!!』 「……くはっ!」 言われた瞬間は呆気に取られたけど、思い返すと笑いしか出てこない。  確かに一人暮らしになったせいもあって、食事も三食取れてればいいと思
last updateLast Updated : 2025-06-28
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仲間①

 みんなで遊園地に行って、日曜日も過ぎた休み明け。 教室に入ってすぐに美智留ちゃんに「おはよう」と声を掛けられた。  今までもよく話しかけてきてくれたけど、朝からこうして挨拶してくれることは無かった。 仲良くなれた嬉しさから、あたしも「おはよう」と返して三人固まっているグループに近付いてみる。 「一昨日は楽しかったねー。今さ、あの時撮った写真見せあってたところなの」 そう言った沙良ちゃんがホラ、と自分のスマホ画面を見せてくれる。 そこにはコーヒーカップに乗ったあたしとさくらちゃんの姿が映っていた。  そういえば突然撮るよーと言われて慌てて笑顔を作った気がする。 うん、慌てたから笑顔がぎこちないね。さくらちゃんは安定の可愛さだけど。「灯里も何か撮ってたよね? まだ遠慮してたのかあたし達のことはあまり撮らなかったみたいだけど」 沙良ちゃんが続けてそう言うと、美智留ちゃんが「沙良、言い方」とたしなめる。「ううん、美智留ちゃん大丈夫。本当の事だし、悪気がないのは分かってるから」 言って、あたしもスマホを取り出す。 「あたしは大体景色ばかり撮ってたかな。思い出代わりにみんなで乗ったアトラクションとか、花壇がキレイだったから……あっ」 スライドさせながら見せていたら、ある写真が出てきて気まずくなる。 「あ、これ……」 さくらちゃんが軽く驚いて呟いた。 その写真には、さくらちゃんと花田くんが二人並んでいるのが映っていた。「ご、ごめんなさい。これはその……さくらちゃんが花田くんの事好きだって聞いたから……なんか良い絵だなって思ってつい撮っちゃって……」 言い訳をしてみるけれど、許可も取らずに隠し撮りしたようなものだ。 何を言っても気まずい。  でも、さくらちゃんは恥ずかしそうに微笑んでくれた。「この写真、あたしに送ってくれる? 良く撮れてる。嬉しい」 そう
last updateLast Updated : 2025-06-29
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仲間②

 あたしはすぐ日高くんに渡すものを持って彼の席に急いだ。 日高くんはいつも遅めに来るから朝のSHRまであまり時間がない。「日高くん、おはよう。ちょっと渡したいものがあるんだけど、良い?」「……眠いんだけど……」 少しだけ顔を上げた日高くんは不満そうにあたしを見上げる。 学校の中だからか、口調は地味男バージョンだ。「すぐ済むから」「……ここで言えば?」「ちゃんと傷の様子も見たいからせめて顔上げて」「んだよ、めんどくせぇ」 最後の言葉はあたしにだけ聞こえるように小声で言っていた。 それでもあくびをしながら顔は上げてくれる。 口元の傷はちゃんと塞がっているみたいだ。 変に盛り上がったりもしていないし、傷跡として残らなそうで安心する。 でも一昨日あたしが消毒代わりに塗ってあげた軟膏以外手入れはしていなさそうだ。 やっぱり持ってきて良かったかも。「はい、これ」「……なんだ?」「これは紫外線カットのサージカルテープ。こっちは同じく紫外線対策のBBクリーム」「……で?」「傷跡が残らないように使って。サージカルテープは傷が塞がってないときに使うものだから、BBクリームが良いかな」 日高くんは数秒それらを見つめた後、あたしを見て言った。「嫌だって言ったら?」「次の休みまでに傷跡が残ってたら秘密バラす」「おい」 鋭く睨みつけられたのですぐに「冗談だよ」と誤魔化した。 半分くらいは本気だったけどね。「でも使ってくれると助かるな。痕が残らないかずっと気になってたんだ。ほら、BBクリームは傷が見えないようにカバーもしてくれるんだよ?」
last updateLast Updated : 2025-06-30
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仲間③

「あ、灯里待って。良かったら一緒にお昼食べない?」 美智留ちゃんが三人固まっている場所から手招きしていた。「え、良いの?」 近付きながら聞くと、「当たり前じゃん」と沙良ちゃんが言った。「また話そうって言ったでしょ?」 小首を傾げてさくらちゃんにもそう言われ、あたしはありがたくお昼をご一緒することにする。 すると、また別の場所から声が掛けられた。「あれ? そっちも皆で食べるんだ? なら一緒に食べよっか?」 目を向けるとそれは工藤くんだった。 そっちもいつもの三人組に日高くんが入っている。「なあ、みんなも良いよな?」 そう同意を求めると他二人は快く了承し、日高くんはダルそうに「まあ、いいけど」と返していた。 こっちの女子も反対意見は無い。 むしろさくらちゃんのことを考えると願ったり叶ったりと言ったところだ。 そうして何だか大所帯になったけれど、他の子の机を借りたり自分の椅子を持ってきたりして一つの輪になる。 女子チームがこっそり奮闘し、さくらちゃんは無事花田くんの隣の位置に座ることが出来た。 ただ、何故かその反対側。 男女隣り合わせになるもう一つの位置にあたしと日高くんが座ることになった。 別に嫌というわけじゃないんだけど、何だか自然にそうなるようにされたって感じがして何とも言えない。 何か、お前ら仲良いよなぁって思われてる感がある。 仲、良いのかな? 秘密の共有者で、基本的にはあたしがおせっかいしてるだけって感じなんだけれど。 まあ、学校では日高くんも特定の友達とかいないからそうなっちゃうのかな? でもまさかさくらちゃん達みたいにくっつけようとしてるわけじゃないよね? 流石にそれは考え過ぎか。 「一昨日は楽しかったよなー」「そ
last updateLast Updated : 2025-07-01
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昼食改善①

 何とか無事に今日の学校生活を乗り越えたあたしは、またうっかり化粧用品を持ち込まないようにと気持ちを引き締めた。 それと一緒に、お昼のことも思い出す。 日高くんの食事、あれもどうにかしなければ……。 きっと今日に限らずいつもあんな感じの昼食なんだろう。 朝晩も好き嫌いせずにちゃんと食べているのか不安になるけれど、流石にそこまでは口も手も出せない。 でも、だからこそお昼だけは何とかしなければ。 帰り道、一人で歩きながら考える。 あたしがお弁当を作れば、とも思ったけどすぐに却下した。 今も自分のお弁当すら作っていないのに、早起きして作り続けるとか無理な話だ。 それにそんなことをしたら愛妻弁当だとか言われてからかわれるのが目に見えている。 どうすればいいだろう? せめて、足りない栄養素を補給出来るように……。「あ、そうだ」 足りないものだけをと考えたら良い事を思いついた。「それにこの方法ならみんなで食べようってなるから日高くんのためなんて分からないよね」 呟いて言葉にすると、尚良い案に思えた。 あたしはそれを実行するため、まずは材料集めのためスーパーへ寄っていくことにした。  そして家に帰ったら早速始める。 用意したのはブロッコリー、卵、小麦粉、ベーキングパウダー、パルメザンチーズ、ウインナー、そして牛乳と砂糖だ。 これでビタミンCと脂質、たんぱく質が取れるマフィンを作る。 一人にいきわたる量は軽食程度になるだろうから、気休めでしかないかもしれないけれどまったくないよりは断然いいはずだ。 レシピサイトを見ながら作っていく。 手作りの良いところはアレンジがきくところだ。 砂糖の量を好みで調節したり、上白糖以外のものに代用したりと健康面にも配慮出
last updateLast Updated : 2025-07-02
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昼食改善②

「これ食べて」「……何だこれ?」 別で何かを持ってきたことで日高くんの嫌そうな顔が少し普通に戻った。 もしかしたらあたしのお弁当から分けて貰ったから嫌だったのかな? まあ、それはそれとして。「ブロッコリーとパルメザンチーズのマフィン。少ないけれど、ビタミンCと脂質とたんぱく質も取れるから」「……まさか作ったのか?」 驚愕という言葉が顔に書いてありそうな表情で言われた。 そこまで驚くことかな?「なになに? 手作り? 倉木ってこういうの作るんだ?」 自分でお弁当を作って来ているからか、小林くんが真っ先に反応した。「うん、みんなで食べようかと思って。どうかな?」「いいの? じゃあ一つ頂きー」 そう言って一番初めに小林くんが食べてくれた。「うん、普通に美味しい。軽食って感じ」 その言葉にホッとする。 お世辞だとしても良かったと思う。 表情を見ても、そこまで不味いとまでは思われていなそうだから。「何々ー? へーじゃああたしも貰いっ」 次に沙良ちゃんが手に取って、他の皆も食べてくれた。「灯里ってこういうのも作るんだ」「凄いなぁ。あたし、お菓子しか作ったことないよ」 美智留ちゃんとさくらちゃんにも褒められて、最早嬉しいより照れくさくなってくる。「さくらちゃんのお菓子も食べてみたいなぁ」 照れ隠しもあってそう言ってみる。 食べてみたいのも本当だけど。「うん、宮野さんのお菓子も食べてみたいね。いつでもいいから、作って来てよ」 あたしのマフィンを食べながら花田くんがそう言うと、さくらちゃんは「う、うん!」とそれはそれは嬉しそうに頷く。 近くで美智留ちゃんがあたしに向けてこっそり親指を立てていた。
last updateLast Updated : 2025-07-03
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待ち合わせ①

 毎日作ると言ってしまったからにはレパートリーを増やさなければ。 数種類をローテーションでもいいかな、と初めは思ったけれど、そうすると「飽きた」と言われそうな気がして腹が立つ。 絶対そんな事言わせるもんか! と意気込んだものの、すぐにGWが来てしまった。 仕方ないのでGW中に気になったものはいくつか作ってみて美味しかったものだけを持っていくことにしよう。 そう決めたけれど、取り合えずGW一日目の今日は待ちに待ったお楽しみの日だ。 だから今日はそっちに集中したい。 待ちに待った日。 そう、日高くんにメイクをする日だ。 約束をしてから毎日のように、どんなメイクを試そうかとメンズメイクを勉強していた。 ネットもだけど、雑誌類も出来る限り買い漁った。 おかげで今月のお小遣いが早くもピンチだけど……。 あたしは約束の時間に合わせて家を出て、待ち合わせ場所の駅前に向かった。 時間ピッタリくらいについたけれど、日高くんの姿は無い。 遊園地のときも遅刻していたしなぁと思い出す。 でも十分程度だったし、ちょっと待ってみよう。 そうして近くの石段に座りながら何度かスマホを確認して待っていると、誰かが近付いて来た。 男の人みたいだったから、日高くんだと思って顔を上げたけれど違っていた。 誰だろう、知らない人だ。 ……ん? いや、でもどこかで見たことある様な?「君、高校生? 誰かと待ち合わせしてんの?」「え、と……?」「相手も女の子ならさ、俺達と遊ばない?」 そう言って親指で後ろを指す。 その先には、もう一人男の人が見える。「あの、すみません。相手は男の子――」「いてっ!」 
last updateLast Updated : 2025-07-04
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待ち合わせ②

「お、まえ……日高 陸斗」 日高くんをフルネームで呼ぶ男の人。 何だか|既視感《きしかん》を覚えて記憶を探ると、すぐに出てきた。 数日前に見た顔なんだから、見覚えがあって当然だ。 この男の人は、遊園地のお化け屋敷で日高くんに襲い掛かって来たあのお兄さんだ。「ん? ああ、あんたか。えーっと、数日ぶり?」「ふっざけんな! お前のせいであのバイト首になっちまったんだからな!? おかげで今は無職だよ!」 いきり立つお兄さん。 でもそれは自業自得だと思うけれど。 前もそうだったが、今回も八つ当たりだ。 予想が当たって呆れるしかない。 それでも今回は多くの人目のある場所だ。 日高くんも相手を殴って終わりなんて出来ないだろう。 何とか止めないと。 でもどうすれば……? 険悪な|雰囲気《ふんいき》を|醸《かも》し出している二人を見上げながら、内心結構焦っていると。「おい、何やってんだよ? 今日は可愛い子見つけて一緒に遊ぶんじゃなかったのか?」 さっきお兄さんが指していた男の人が近付いてきてお兄さんを止めてくれる。「だってこいつが!」「黙れって。人目もある場所だぞ? 遊びに行くってのに、問題ごとはお断りだ」 そうして男の人はお兄さんの耳を引っ張って、強制的に日高くんから離してくれた。「いってぇ! |杉沢《すぎさわ》さん、いってぇって!」「悪かったね。コイツ血の気が多くてさ」 そう謝ると、男の人はお兄さんの耳を掴んだままその場を後にした。 呆気に取られながらそれを見送っていると、バチリと日高くんと目が合う。 日高くんは「あー」と何やら言葉を探すように唸ったあと、口を開いた。「ナンパされてたんですよね
last updateLast Updated : 2025-07-05
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待ち合わせ③

「それじゃあナンパ邪魔して悪かったなぁ?」 ニヤリと笑う日高くん。 そして彼はメガネを外してあたしを真っ直ぐ見た。「で? 仕方ないから俺で我慢しておこうとか?」 妖艶に微笑んでそんなことを言う日高くん。 これが本当に初めて会う女性とかならドキッとかするのかもしれないけれど……。「……」 あたしは寧ろ死んだ魚の様な目で見返していた。 予想外の反応だったんだろう。日高くんも何やらおかしいと気付いたのかメガネを戻して黙り込んだ。「はあぁー……。うん、取りあえず行こうか、日高くん」 大きなため息をついて、本当に用件だけを口にする。 何だか待ち合わせだけで疲れた。「え? 何で俺の名前……ってか行こうかって……く、倉木……なのか?」 本気で信じられないものを見たという驚愕の表情。 あたしはそれに容赦なく止めを刺す。「そうだよ、倉木 灯里です。もういいからさっさと行こう」 そう言って歩き出したあたしの背後で、日高くんの「嘘だろう?」という呟きが聞こえた。 歩き出してからも何度も「嘘だろ?」「マジで?」と聞いて来る日高くん。 あたしはそれにウンザリして|率直《そっちょく》に聞いた。「本当にあたしが倉木だって。そんなに変わった? 中学の時はメイクしたってちゃんとあたしだって気付いてもらえてたよ?」「中学の時なんて知るか! 普段の地味子しか知らない状態で今のお前見たらハッキリ言って別人だ!」 相当ショックだったのか叫びながら言われる。 でもその言葉で理由が分かった。「あ、そうか。中学の時は地味子してなかったっけ」 中学の時と違って、今はギャップがありすぎるんだ。
last updateLast Updated : 2025-07-06
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