「さて、じゃあ早速始めようか。メガネ取って顔良く見せて」 部屋についてやっとメイクが出来ると思ったら元気が出てきた。 あたしは日高くんを座らせると、早速そう指示を出す。 日高くんは何やら諦めの境地に達した様な顔をして、溜息をつきながら指示通りメガネを取っている。 そうして見えやすいように髪をかき上げると、本当に溜息が出るほど整っている顔だなぁと思う。 ただ、すぐに肌や唇の乾燥。 そして目の下のクマに目が行き、頬が引きつる。 昼食の改善をしてみたけれど、すぐに効果が表れるわけじゃないから乾燥などは仕方がないか。 口元の傷はあともう少しで見えなくなりそうだといったところ。 日高くんの顔の状態を見てやっぱりと思いつつ、最初にやるべきことは決まった。「日高くん、まずは顔を洗って来て」「は?」 日高くんは意味が分からないとばかりに目をパチクリ。「……今朝、顔洗って来たけど?」 まあ、それはそうだろう。 不思議がる日高くんにあたしは説明する。「日高くん、朝の洗顔って水だけ? 洗顔フォーム使ってる?」「水だけだけど?」「うん、それはOK。じゃあ洗ってるときや顔拭くとき、ごしごし擦ってない?」「擦ってるな」「それよ!」 突然大きな声で指さしたので、びっくりさせてしまった。「そうやってごしごし擦ると肌に負担がかかって乾燥してしまうの。夜の洗顔も擦ってるんじゃない? 多分そのせいで乾燥肌になって来てるんだよ」「……はあ……」 解説しているあたしに、日高くんは気のない返事をする。 まあ、興味ない人に色々言っても仕方ないか。「取りあえず、そういう事だから顔洗おう。擦らずにね」
Last Updated : 2025-07-07 Read more