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仲間①

Author: 緋村燐
last update Last Updated: 2025-06-29 17:31:06

 みんなで遊園地に行って、日曜日も過ぎた休み明け。

 教室に入ってすぐに美智留ちゃんに「おはよう」と声を掛けられた。

 今までもよく話しかけてきてくれたけど、朝からこうして挨拶してくれることは無かった。

 仲良くなれた嬉しさから、あたしも「おはよう」と返して三人固まっているグループに近付いてみる。

「一昨日は楽しかったねー。今さ、あの時撮った写真見せあってたところなの」

 そう言った沙良ちゃんがホラ、と自分のスマホ画面を見せてくれる。

 そこにはコーヒーカップに乗ったあたしとさくらちゃんの姿が映っていた。

 そういえば突然撮るよーと言われて慌てて笑顔を作った気がする。

 うん、慌てたから笑顔がぎこちないね。さくらちゃんは安定の可愛さだけど。

「灯里も何か撮ってたよね? まだ遠慮してたのかあたし達のことはあまり撮らなかったみたいだけど」

 沙良ちゃんが続けてそう言うと、美智留ちゃんが「沙良、言い方」とたしなめる。

「ううん、美智留ちゃん大丈夫。本当の事だし、悪気がないのは分かってるから」

 言って、あたしもスマホを取り出す。

「あたしは大体景色ばかり撮ってたかな。思い出代わりにみんなで乗ったアトラクションとか、花壇がキレイだったから……あっ」

 スライドさせながら見せていたら、ある写真が出てきて気まずくなる。

「あ、これ……」

 さくらちゃんが軽く驚いて呟いた。

 その写真には、さくらちゃんと花田くんが二人並んでいるのが映っていた。

「ご、ごめんなさい。これはその……さくらちゃんが花田くんの事好きだって聞いたから……なんか良い絵だなって思ってつい撮っちゃって……」

 言い訳をしてみるけれど、許可も取らずに隠し撮りしたようなものだ。

 何を言っても気まずい。

 でも、さくらちゃんは恥ずかしそうに微笑んでくれた。

「この写真、あたしに送ってくれる? 良く撮れてる。嬉しい」

 そう

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