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待ち合わせ①

Auteur: 緋村燐
last update Dernière mise à jour: 2025-07-04 17:31:54

 毎日作ると言ってしまったからにはレパートリーを増やさなければ。

 数種類をローテーションでもいいかな、と初めは思ったけれど、そうすると「飽きた」と言われそうな気がして腹が立つ。

 絶対そんな事言わせるもんか!

 と意気込んだものの、すぐにGWが来てしまった。

 仕方ないのでGW中に気になったものはいくつか作ってみて美味しかったものだけを持っていくことにしよう。

 そう決めたけれど、取り合えずGW一日目の今日は待ちに待ったお楽しみの日だ。

 だから今日はそっちに集中したい。

 待ちに待った日。

 そう、日高くんにメイクをする日だ。

 約束をしてから毎日のように、どんなメイクを試そうかとメンズメイクを勉強していた。

 ネットもだけど、雑誌類も出来る限り買い漁った。

 おかげで今月のお小遣いが早くもピンチだけど……。

 あたしは約束の時間に合わせて家を出て、待ち合わせ場所の駅前に向かった。

 時間ピッタリくらいについたけれど、日高くんの姿は無い。

 遊園地のときも遅刻していたしなぁと思い出す。

 でも十分程度だったし、ちょっと待ってみよう。

 そうして近くの石段に座りながら何度かスマホを確認して待っていると、誰かが近付いて来た。

 男の人みたいだったから、日高くんだと思って顔を上げたけれど違っていた。

 誰だろう、知らない人だ。

 ……ん? いや、でもどこかで見たことある様な?

「君、高校生? 誰かと待ち合わせしてんの?」

「え、と……?」

「相手も女の子ならさ、俺達と遊ばない?」

 そう言って親指で後ろを指す。

 その先には、もう一人男の人が見える。

「あの、すみません。相手は男の子――」

「いてっ!」

 

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