暗闇の中。 ほんのりと淡緑黄色で照らされた部屋はどこか幻想的で、そこに立つ彼は普段とは違って見えた。 近づいて来る彼はとても整った顔をしていて……。 口元には赤い血が付いていて、それを指で拭った。 そんな仕草も妖艶でつい魅入られてしまう。 「なぁ……俺の秘密、知っちゃった?」 そう言って弧を描く口元に視線が吸い寄せられる。 ドクドクと心臓がうるさいほど。 「俺とヒミツの関係、なってよ?」 *** あたし、倉木灯里(くらきあかり)は悩んでいた。 高校一年になった四月の終わり。 GW直前の土曜日。 鏡の前でうんうん唸りながらどうしようか悩む。 「いっそぶっちゃけて本気メイクで行くか……地味子を通すためにナチュラルメイクで行くか……」 悩んだ末に、あたしはナチュラルメイクで行くことにした。 今日出かけるのは遊園地。 外を歩くことが多いだろうから、日焼け止め下地は必須。 肌のトーンを明るくするリキッドファンデーションをポンポンと塗って、仕上げに化粧筆でパウダーをサッと撫でる。 アイブロウは目立たないように薄めに描いて、アイメイクはしないでおく。 最後にリップクリームを塗って唇を保湿して、軽くティッシュを当てる。 リップライナーと赤みの少ないタイプのルージュを塗り、もう一度ティッシュを当てた。 鏡を見直して、おかしいところがないかチェックをする。 「うん、こんなもんかな」 メイクに納得したので、他の準備を始めた。 なんであたしがこんなに悩んでメイクをしているかというと、今日はクラスの校外学習で同じ班になった子達と一緒に遊園
Last Updated : 2025-06-20 Read more