Semua Bab 幸福配達人は二度目の鐘を鳴らす: Bab 11 - Bab 20

76 Bab

第11話

 そしてその日は驚くほど早く訪れた。 その頃世界の各国、あるいは国の中の特定の州によって重婚を認める動きが目立つようになり、キリスト教の教会でも宗派によっては結婚式を上げさせる場所が多くなった。『主は、誓いを立てる者に対し、平等に祝福を与えたもう』 誓いを立てずに性交するのは罪だが、ちゃんと誓いさえ立てれば神は不倫を正当なものだと認めてくださるというありがたい教えだ。 そしていよいよ日本の国会でも、重婚を認めるべきではないかという意見が議論され始めるようになった。おそらく本音のところは出生率の問題ではなかっただろうか。 以前フランスは日本と同じく出生率1・2%を割るという世界で最も少ない水準だった。おそらくそれには早くから同性愛の結婚を認めていたということがあったのだろう。同性愛を認めれば当然子供など生まれようはずがない。 しかし、フランスはまた愛の国でもある。結婚できるなら何人とだってしたいと思う人間がたくさんいてもおかしくはない。そして愛し合う二人の間に子供が欲しいと思うのもまた当然のことである。そこがうまくかみ合ったのか、フランスの出生率は一気に上がっていった。 それに対し、日本の出生率も出産軽減税率でわずかばかりは上昇したものの、最近ではすでに伸び悩んでいた。それと言うのも、卒業とともに出産した女性たちの多くが一刻も早く社会進出したいと考え、子供を一人産み、重税から逃れることに成功さえすればそれでいいと二人目以降出産するものが少なくなったことが原因だと言われている。『子供を二人以上産む場合はなるべく年が離れて産んだ方がいい』という言葉が雑誌の見出しに並ぶ。一人目の子供が出産軽減税率の対象から外れる二〇歳前後で次の子供を産むことが最も税対策として効率が良いというのだ。しかし、物事はそんなに簡単なことではない。それではいつまでたっても親は子育てから解放されないばかりか、子供二人の歳の差を二〇歳離すなんて、出産にかかる体の負担を甘く見すぎだ。年齢とともに出産のリスクは高まる。一人目を二〇歳で生んだとしても二人目を産むのは四〇歳前後だ。それに対し、重婚というのはひとつの可能性でもある。一部の噂では重婚を推奨している妻子ある大物政治家が陰で若い女性をはらませ、そのことで妻と別れ、自分との結婚を迫られているといううわさも出ていたのだが、そんなことはどうでもいい。 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-03
Baca selengkapnya

第12話

 かくして法案は通り、日本での重婚が正式に認められるようになった。そんな矢先に空良からの電話。「ねえ、今日、うちに来られる?」 別に改めて聞かれるまでもなくほとんど毎日のように行っているのに、あえてそんなことを聞いてくるのはきっと何かあるのだろうということは直感で分かった。「座って」 いつになく真剣な空良の言葉におののきながらダイニングのテーブルに腰かけた。向かいに正輝さんと空良とが並んで座っている。空良はじっとこちらから言っときたりとも目を離さないのに対し、正輝さんの目は泳いでいてこちらを見ようとはしない。「なに? どうしたの、そんなあらたまっちゃって」 重い空気をどうにかするため、わざと明るい口調で言ってみた。「あのね――。アタシ、前から少し気になっていたことがあって……」「なに?」「うん、それでまあ、その事を正輝に問いただしたんだ……」「だから、なんのこと?」 しらばっくれてみたものの、それが大体何のことを言っているのかがわからないわたしでもなかった。そしてやはり予想の通り、空良の言うその事とは、あのことだった。 ――あの台風の日。わたしが正輝さんと関係を持ったということ。「ねえ、朋絵。正直に答えて。あなた、正輝のこと好き?」 こくり。首を縦に、小さくうなずく。「そう、で、どのくらい?」 それには答えない。どう答えればいいのかがわからない。「いつから?」 その質問の答えは難しい。正直に言えばずっと前からだ。空良と正輝さんとが付き合い始めるよりもずっと前。 でも、そのことを今言えば、わたしが空良を責める形になりかねない。そんなことになれば話はずっとこじれるだろう。「――ずっと前から」 そう答えるのが最も無難だった。「そう…… そうよね。まあ、それも知ってたけど…… それに元々はアタシが横取りしちゃったわけだし……」 たしかにそれはそうなのだ。しかも二回。一度目は高校生の時、そして二度目は大学を卒業した時。でも、わたしは一度だって空良のことを責めたりなんかしなかったはずだ。だって、だってそれは―――「ねえ、朋絵。アタシと正輝、どっちのことが好き?」 そんな質問ってない。まるでどちらか片方を選べと言っているみたいだ。もし、わたしが今ここで空良を選んだらどうなるというのだろう? 正輝さんのことをきっぱりとあきらめて、それでまた空良と、今までと同じように友達でい
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-03
Baca selengkapnya

第13話

 わたし達は結婚することになった。 本当はもうとっくにあきらめかけていたことだけれども、今、こうしてその夢が実現できる時代になったのだ。そして、この状況がとてもおかしな状態に感じる今日この頃なのだが……もう時代は変わったのだ。これからはこんなカップルが次々に登場する時代が来るのだろう。 結婚式の翌日、正輝さんたちの部屋にわたしの荷物が運び込まれた。 新しく作り直された表札には『重光正輝・空良・朋絵』と書かれていた。みればまるでわたしが二人の間の生まれた子供のようだった。事実、新婚生活でのわたしは二人の子供だったのかもしれない。二人の愛を一身に受けて幸せそのものだった。重婚が法律で認められるようになり、世間では夫婦別姓が一般的になりつつあった。たとえばある女性が一度目の結婚で姓を変更し、その後二人目の配偶者を得た時に姓をどうするかという問題が生じた時の事を考えると夫婦別姓こそが最も無難な方法であり、別居婚というのも珍しくない。これからは初婚同士の夫婦が一時的に同棲したり、新婚期間だけ同棲し、妊娠とともに別居するというケースなど、各家庭ごとにいろいろな生活様式が生まれていくことになるだろう。一般的に言えば二人配偶者のうち、どちらか片方だけと同居すれば嫉妬の原因にもなり得るし、またそれまで出産後の父親の多くは遅くまで仕事をこなして帰ってきて、ロクに家事や育児の世話を手伝わず、妻には負担が大きかったが、別居婚で母親と同居をすることで育児の世話を自分の母親に手伝ってもらえるだけでなく、教えててもらうことにだって気兼ねがない。 しかしそれでもわたしたちはあえて三人で同じ姓を名乗ることにしたのはやはり子供のころからそれが憧れだったから。愛する人と同じ姓を名乗ることで生まれ持っての赤の他人である男女がその行為によって一つの絆を得られるのだと信じていたということ。三人で同居することを選んだのはわたしたちは互いにライバルである以上に親友だったということ。 そして、さらにもうひとつ。はっきりと正解だと思えたことがある。 なぜ、愛し合う関係のはずの夫婦の仲が険悪になっていくのか。と、言うことなのだが、結論から言えばいままで夫婦と言う形が二人っきりだということだ。 ひとりの人間が自分の自由に、一人暮らしをしていれば険悪になることはない。これはまあ当然のことだろう。現に最近増えてきた別
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-03
Baca selengkapnya

第14話 重婚法に関する条項まとめ

少子化が深刻な問題になっていた我が国日本において、新しく施工された少子化対策基本法において大きく変更されたのはその税収制度だった。まず、国民全員には重い税収が科せられるようになった。そしてその救済措置として『出産軽減税率』が採択されることになる。これは結婚して出産をした場合、両親の税率が安くなるというものだ。そもそも子供はこの国の宝で、国民全員で守っていかねばならないことは言うまでもないが、生涯独身、または結婚はするが子供は産まないという家庭は少なくとも育児をする家庭に比べて生活にゆとりが生まれるはずで、その分国民の宝となる育児をする家庭の支援をするのは当たり前という考えが浸透し、この法案は難なく施行されるに至った。この法律の施行により、国民の意識は大きく変わった。働いて税金を納めるようになったら、なるべく早く結婚して出産した方がいい。政府はこの意識改革によって出生率が大きく上昇することを期待したが、現実はそう甘くはなかった。学生たちの間ではなるべく学生時代に結婚相手を見つけ、卒業後まもなく出産することがブームとなった。そうして女性はひとり出産し、育児が落ち着いた頃に就職するというのが定番になりつつあり、年齢も若く、収入も安定しないうちに結婚することにより、ほとんどの家庭では何人もの子供を育てることは困難になった。この法律の施行以来、各家庭が一人っ子という状態が多く、出生率の上昇は期待するほどまでに上がることもなかった。加えて、早くに出産することにより子供が早くに学生を終了することにより、その分早く両親は出産軽減税率の対象から外されてしまうため、四十代以降に重い税金がかけられるようになるだろうという不安が募り始める。そのころ、アメリカのセレブの間で変わった風習が起こり始めた。特定の相手と婚姻関係を結ぶではなく、容姿の端麗な者、財のある者などが複数の相手とひとつ屋根の下で同居し、事実婚生活を営む、俗称〝ハーレム婚〟が流行し、世界中の各地でハーレム婚をするセレブ達が増え始めた。まっさきにそこに目をつけたのはフランスだった。フランスは同性愛の結婚を早くから認めていることもあり、出生率の低下は日本とほぼ同じで1・2パーセントを下回っている。これは世界で最も低い数値で、フランスも日本と同じく、このことで大きく頭を悩ませていた。フランスは世界に先だって重婚を合法
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-09
Baca selengkapnya

第15話 彼の彼女とカルテット ~桜川ゆかりのケース~

「ねえ、志穂っち。アンタまた告られてなかった?」「あー、大貴のこと? まー、わかってたけどねー。前々からあいつ、ずっとあーしのこと見てたしー、そろそろかなーって思ってたから」「で、どうするの? 付き合うの?」「えー、まー、べつにー、断る理由もないしー、とりあえずはつきあっとこーかなってー」「へえ、そうなんだ。ま、おしあわせに」 クラスメイトの優樹菜と志穂との会話を聞きながら、ふと疑問に思った。「あのさ、志穂って彼氏いなかったっけ? もう別れたの?」「えー、耕介のことー? べつにー、わかれてないけどー」「え…… でも、今、大貴君に告られて付き合うって……」「えー、そーだけどー?」「そうだけどって…… それっておかしくない?」「あ、ゆかりっちってもしかしてプッピー?」「……ぷっぴー?」「プッピー……。旧世代の一夫一婦制を支持する人たち」「べ…… 別にそういうわけじゃないけど……」「えー、なにそれー、ウケるー」「ゆかりっち、別にプッピーを否定するわけじゃないけど、それって時代錯誤だと思うよ。結婚相手が二人まで可能なら恋人だって二人まで作ることは別におかしい事じゃないじゃない。志穂っちだって別に三人四人彼氏つくってるわけないんだし」「ち、ちがうよ、べつに私そんな風には……」「あー、ごめーん。話の腰折っちゃって悪いんだけどー、あーし、彼氏三人目ー」「ええ? なによそれ。アタシ聞いてないよ。だいじょうぶなの? ソレ?」「えー、だいじょーぶだよー。そのうちどれか切るからー」「また揉めてもアタシ助けないからね」 なんとなくその場では話を合わせたが、やはり私はどうしてもそういう考えについていけなかった。高校二年になった時のクラス替えで初めて志穂と優樹菜と知りあった。私の前の席に座る優樹菜はクラスの優等生で長いストレートの黒髪がきれいな子だ。授業中、ついつい目の前に座る彼女のしなやかな髪についつい見とれてしまうことがある。私がそんな優樹菜に少し憧れているということ、それに席が近いということもあってすぐに仲良しになれた。そして志穂は優樹菜の中学時代からの友人。二人が古くからの友人だとは思えないくらいに志穂はゆるーいタイプ。頭にしても、股にしても……。いつもくるくるとカールさせた茶髪を指に巻きつけていじっている。初めのうちはニガテなタイプだと思っていたが、優樹菜のいるところ常に志穂あ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-09
Baca selengkapnya

第16話

「そうね。女性というのは元来、一度に一人の男性しか愛せないようになっているものなのよ。なぜならそれは女性は一度に一人の相手の子供しか身ごもれないから。子供を一人ずつ身ごもって、その子を育てるためにその相手の男性を未来永劫独占してしまいたいと思うのが本能。それに対して男性は一度にたくさんの相手に自分の子供を産ませることだって出来るでしょ。だから男性は多くの人を同時に愛することができるのよ」そう教えてくれたのは担任の国語教師、重光朋絵こと、朋絵ちゃんせんせい。もうすぐ私たちも高校三年生。そろそろ進路のことを考えなければならない頃だ。その日の放課後に行われた進路相談で朋絵ちゃんせんせいと向かい合った私は思い切って相談してみた。「でも、それでは男女不平等でしょ。たしかに男と女では生物的にまったく同じではないし、だからこそ区別しなければならないけれど、権利としては平等でなくてはならない。区別と差別とは全く別物だから。だから、この国の法律では一夫多妻制ではなく、二夫二婦制なのよ。あ、ちなみにこれはうちの旦那の口癖なのだけれど」 朋絵ちゃんせんせいは自分で言った『旦那』という言葉に心酔しながら少し自慢げに鼻を鳴らした。彼女はこの春ついに結婚をした。二十六歳はすでに『行遅れ』と呼ばれる時代、見事に若い男性との結婚を果たした。しかも若くして二人目の結婚相手だというのだから、旦那さんもたいしたものだ。(あるいは少しばかり計画性がないだけなのかもしれないけど) 朋絵ちゃんせんせいはよほどそれがうれしかったのか、結婚して姓を『悠里』から旦那さんの姓の『重光』に改名した。一昔前ならともかく、最近では夫婦別姓が当たり前。まるで結婚できたことを自慢して回っているように感じた。―――行遅れの結婚相手は大体中年以降のおっさんと相場が決まっている。出産軽減税率のせいで、初任給のほとんどが税金で持って行かれてしまう。だからなるべく就職と同時に結婚して、なるべく早く妊娠する必要がある。母子手帳をもらえば、その時点で両親の所得税は大幅に免除される。その結果、新卒の社会人のほとんどがすでに結婚しているため、すでに社会に出ている独身者はなかなか結婚相手を見つけられない。しかし中年以降の男性ともなればそれなりに所得があり、妻帯者であっても二人目の妻をもらって子供を産ませ、所得税対策としたいと強く願っているものが
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-09
Baca selengkapnya

第17話

社会の流れとしては女性が就職するのは育児の後で、どちらかと言えば将来どんな仕事がしたいのかというより、まず結婚相手を探すことの方が優先される動きになっている。おかげで競争相手の少なくなった男性の就職率は格段に上がり、安定していた。高校三年になる私たちの進路志望も、それに伴い以前とはだいぶ変わって来たらしく、結婚について教師と真剣に話し合う生徒というのも珍しいことではない。進路希望票には進学、就職、結婚の三項目がある。私はとりあえず進学に〇をつけていたが、正直のところ進学をしたいわけではない。どうせ進学して勉強をしても就職するのは子供を産んで、育ててその後だし、かといってすぐに就職をしたところで重い税金を課せられ、馬車馬のように働くのはゴメンだ。そして卒業とともに結婚するにもあいにく私には恋人さえいない。いったん社会に出てしまえばほとんどが既婚者だし、仮に未婚の者がいたとして大したのは残っていない。それよりはとりあえず進学してその間に結婚相手を探す方が無難だ。「でも、どうせなら将来やりたい仕事を考えて、そのための勉強ができる大学を選ぶということも大事なのよ」と朋絵ちゃんせんせいは言う。「それに、大学卒業とともに結婚ができるとも限らないのだから」と付け加える。 ―――想像したくもない。 でも、朋絵ちゃんせんせいが言うのだから説得力もあるというもの。「せんせい、そうはいっても結婚相手の仕事によっては選べない仕事ってあるじゃないですか。だから相手の仕事がわからないと自分の仕事も決められないかなって…… ほら、家のこととかしないといけないし」「あら、じゃあ桜川さんは結婚したら同居を望んでいるの? 最近は別居婚を選ぶ人が多いから勤務地や仕事の時間帯なんかも考えなくていいことがほとんどよ」「あ、そうなんです。私、できれば結婚したら二人で一緒にに住みたいなって…… ほら、なんか憧れるじゃないですか、旦那さんの朝食つくったり洗濯したりとかっ」「うん、わかるわ。わたしもそうだったから」「あ、朋絵ちゃんせんせいも同居でしたっけ?」「そうよ。でもうちは旦那ひとり、妻二人でまだ子供もいないし三人とも仕事をしているから家事はみんなで分担しているのよ」「え、最初の奥さんも一緒に住んでるんですか? それって気まずくないですか?」「うん、たぶん普通だと気まずいのだと思うわ。だからこそ妻二人が一緒に顔
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-09
Baca selengkapnya

第18話

 結局、進路相談だなんだと言いながら痴話話をしただけのような感じだった。とりあえず進路はとりあえず進学。志望校はおいおいに考えることにするとしてその日は終わった。  家に帰り、玄関を開けるといつもよりも妙に静かで張りつめた空気が漂っているのがわかった。私の家は戸建ての住宅で、玄関を開けてすぐフローリングの廊下になっている。左手すぐが二階に上がる階段があり、二階には私とお姉ちゃんの部屋がある。廊下をまっすぐ行くと引き戸があり、その向こうがダイニングつきのリビング。そちらのほうから話し声が聞こえてきて、何やら緊張の糸が張り詰めているのがわかる。 玄関で靴を脱いでいる途中でリビングの方からお母さんがいそいそと出てきて、 「今お客さん来ていて大事な話しているから、ゆかりは二階に上がって待ってなさい」と言う。 「だれ?」 「その…… かおりの婚約者」 「婚約者? お姉ちゃん結婚するの?」 「そういうこと」 「もしかして、となりの弘樹お兄ちゃん?」 「まさか……」 「違うんだ…… 仲、よかったのに……」 「結婚ってそういうもんじゃないでしょ」 「で…… 今、来てるの?」 「うん、今お父さんと話している」 「うわあ、やばい、修羅場だ」 「べつにやばくはない」 「あー、私も聞きたいな。その話」 「あとでちゃんと話してあげるから」 「ところでお姉ちゃん、結婚したら家出るの?」 「出ないらしいわよ。別居婚の予定だって。まだ、大学だってあるし…… それにまだあの子だって子どもなんだから、結婚して子供産んでもお母さんなしじゃ一人で面倒みられないでしょ」 「ま、まあ…… それはそうなんだけど…… 結婚したら一緒に住みたくないのかな? お母さんはどうだったの?」 「まあ、最初のうちはね。でも、子供が生まれたらもういいかなって思ったわ。男なんて何歳になっても子供みたいなものだし、面倒なだけね」 「お姉ちゃん。結婚したらすぐにでも子供産みたいらしいし、それならずっと家にいた方がいいのか……」 「そんなことより早く二階に上がってなさい」 「はあーい」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-09
Baca selengkapnya

第19話

 仕方なしに二階に上がり、部屋の床に耳を押し当てて聞き耳を立てたが残念ながら話はほとんど聞こえなかった。もやもやしながら、その婚約者なるものが帰って行ったのは二時間も後のことだった。二階の部屋の窓からこっそり立ち去る婚約者をのぞいてみたら、あの美人で有名なお姉ちゃんにしてはモサイ男だったことにショックを受けた。ふと、視線を上げ、隣の家の窓に目を向けると、やはりその窓からも我が家から立ち去って行くモサイ婚約者君を眺めている影が見えた。間違いなく隣の弘樹お兄ちゃんだ。 弘樹お兄ちゃんはかわいそうに……。たぶん弘樹お兄ちゃんはずっとお姉ちゃんのことが好きだったに違いない。子供のころは私も入れてよく三人で遊んだものだ。その頃からずっと…… それは今でも変わらずに熱いまなざしだった。そのくらいのことはわかる。 弘樹お兄ちゃんとは別々の高校に入ったお姉ちゃんは高校に入って急にあかぬけて、それからというものあまり一緒に遊ばなくなった。それでも私は知っている。ほとんど会話を交わすこともなくなった今でもこうして弘樹お兄ちゃんはあの窓からお姉ちゃんを眺めている。そんな弘樹お兄ちゃんをながめる私の視線に気づき、彼は気まずそうに部屋のカーテンを閉め、部屋の奥へと引っ込んだ。「ねえ、あれのどこがいいの?」「あの人、超一流企業の内定とっているのよ」お姉ちゃんはけろりとした顔で答えた。「だからあたし、他の人にとられる前にすぐに結婚してくれって頼んだの」「でも…… お姉ちゃん結婚するって言ってもまだ大学卒業するまで一年以上もあるんでしょ」「敬一郎さん(姉の婚約者の名前だ)は今年で卒業よ。だから在学中に結婚して、来年は妊活するつもり。卒業と同時に母子手帳がもらえればベストかなって」「……っていうかお姉ちゃん。別にあの人のこと好きなわけじゃないんでしょ。なんで結婚するのよ」「なに? ゆかりひがんでるの? 彼氏もいないからって」「ちがうよ。結婚して子供まで産もうって考えている人、そんなに好きでもないヒト選ぶなんておかしいと思うんだけど」「……あんたわかってないわね」「なにを?」「だから子供なのよ。いい? 大学卒業までに結婚するなんて言ってもそんなに大恋愛なんてできるものでもないのよ。それに出世できる人かどうかもわからない学生の中から選ばなくっちゃいけないの。だからなるべく将来性のある人と結婚しておかな
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-09
Baca selengkapnya

第20話

「わかる―。あーしもその意見にさんせー」 次の日に姉の結婚観に対する不満を志穂と優樹菜にグチってみた。昼休みの教室で私の机の上に三人分のお弁当を広げて、輪になっておしゃべりをする。志穂は私じゃなくてお姉ちゃんの考え方に同意した。「ほらー、よくあるでしょー。結婚するならお金持ちのブサイクと、貧乏人のイケメンどっちがいい。ってやつ。 あんなの誰が迷うこともなく、両方と結婚。だよねー」「まあ、たしかにそれは言えてるかも。一昔前、お母さんたちの世代ではよくそんなことを言っていたけど、最近言わなくなったのは重婚が合法化されて、明確な答えが出ちゃったから。っていうのはあるのよね。今じゃ究極の選択。ってわけでもなくなっちゃったからね」 と、優樹菜は少し真面目に答える。「でもさ、その方法って結局のところ貧乏なイケメンしか愛してない結果になるのよね。金持ちのブサイクの方はお金のために存在してるだけなわけだし」「あー、そーねー。でもあーし。こー見えてもちゃんと考えてる」志穂はカールした前髪を指に巻きつけながらちょっと得意気になった。「たぶんその場合、まずお金持ちと別居婚で子供つくって、彼の給料の三割をちゃんともらえるようにするでしょ。そんでそのお金を頼りにイケメンと同居婚してその子を育てるんだよ」「じゃあ、イケメンとは子供つくらないの?」「えー、まーつくってもいいけどー、別に貧乏人の給料三割って大したことないでしょー。それよりイケメンとはなるべくいちゃいちゃしていたいしさー」「でもさ、志穂。ブサイクとの子供より、イケメンとの子供つくった方が絶対かわいい子生まれるよね?」「しんぱいなーい。だってあーしがかわいいもん。誰と子供つくっても絶対かわいい子生まれると思うー」「あ…… でも……」優樹菜は何かを思いだしたように一度視線を天井に送り、それからまた視線を志穂に向けた。「危ないかも?」「えー、なんでー?」「そのイケメンはちゃんと志穂との子供かわいがってくれるかな? だってその子供はイケメンの子供じゃないんだよ?」「だめなのかなー? だってあーしの子供だよー」「あのね、こんなデータがあるの。まず、部屋の中に母マウスとその赤ちゃんマウスを入れておくの。そしてそこに新たにオスのマウスを入れるのよ。そうすると、オスのマウスはまず、赤ちゃんマウスを殺そうとするのよ」「えー、なんでー? やばーい」「母
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-09
Baca selengkapnya
Sebelumnya
123456
...
8
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status