そしてその日は驚くほど早く訪れた。 その頃世界の各国、あるいは国の中の特定の州によって重婚を認める動きが目立つようになり、キリスト教の教会でも宗派によっては結婚式を上げさせる場所が多くなった。『主は、誓いを立てる者に対し、平等に祝福を与えたもう』 誓いを立てずに性交するのは罪だが、ちゃんと誓いさえ立てれば神は不倫を正当なものだと認めてくださるというありがたい教えだ。 そしていよいよ日本の国会でも、重婚を認めるべきではないかという意見が議論され始めるようになった。おそらく本音のところは出生率の問題ではなかっただろうか。 以前フランスは日本と同じく出生率1・2%を割るという世界で最も少ない水準だった。おそらくそれには早くから同性愛の結婚を認めていたということがあったのだろう。同性愛を認めれば当然子供など生まれようはずがない。 しかし、フランスはまた愛の国でもある。結婚できるなら何人とだってしたいと思う人間がたくさんいてもおかしくはない。そして愛し合う二人の間に子供が欲しいと思うのもまた当然のことである。そこがうまくかみ合ったのか、フランスの出生率は一気に上がっていった。 それに対し、日本の出生率も出産軽減税率でわずかばかりは上昇したものの、最近ではすでに伸び悩んでいた。それと言うのも、卒業とともに出産した女性たちの多くが一刻も早く社会進出したいと考え、子供を一人産み、重税から逃れることに成功さえすればそれでいいと二人目以降出産するものが少なくなったことが原因だと言われている。『子供を二人以上産む場合はなるべく年が離れて産んだ方がいい』という言葉が雑誌の見出しに並ぶ。一人目の子供が出産軽減税率の対象から外れる二〇歳前後で次の子供を産むことが最も税対策として効率が良いというのだ。しかし、物事はそんなに簡単なことではない。それではいつまでたっても親は子育てから解放されないばかりか、子供二人の歳の差を二〇歳離すなんて、出産にかかる体の負担を甘く見すぎだ。年齢とともに出産のリスクは高まる。一人目を二〇歳で生んだとしても二人目を産むのは四〇歳前後だ。それに対し、重婚というのはひとつの可能性でもある。一部の噂では重婚を推奨している妻子ある大物政治家が陰で若い女性をはらませ、そのことで妻と別れ、自分との結婚を迫られているといううわさも出ていたのだが、そんなことはどうでもいい。
Terakhir Diperbarui : 2025-07-03 Baca selengkapnya