しかしながら今日僕が離婚もせずに会社を維持できているのはみんな重光のおかげだ。営業も重光がほとんど一人でこなし、僕はあくまでその他雑務をこなした形だけの社長に過ぎない。「社長、やっぱ社長のシャツがしわだらけっていうのはどうかと思いますよ。その、会社のイメージにも関わりますから」「あ、ああ、すまない。気を付けるよ。どうも……アイロンってやつはニガテでなあ」妻がいなくなって一か月。私生活において大きな変化はない。食事は外で済ませるし、帰って寝るだけの生活では掃除もほとんど必要ない。強いて言うなら洗濯が厄介だ。ボタンを押せば廻ると思っていたはずのドラム式洗濯機。妻が欲しいと言って買ったものの、買って三日後にはサイズが大きすぎると不平をこぼしていた洗濯機は男のひとり暮らしではいよいよもって邪魔過ぎる。このサイズを有効活用しようというのならばおそらく一週間分の洗濯ものをためてもまだ足りないくらいだろうが、あいにく僕はそれほどの衣服の替えは持ってはいない。「まあ、無理もないっすよね。社長、いっそのこと新しい奥さんでも貰ったらどうですか」「いや、別に僕は離婚したわけじゃないから」「いや、離婚なんてしなくても関係ないですよ。家事とかやってくれる新しい奥さん迎えればいいだけじゃないですか。それにその人と子供つくれば税金対策にもなりますよ。そのくらいやる稼ぎは社長なんだからあるでしょう」「重婚……か。そういえば重光はもう二人目の奥さんをもらっているだったな」「はい。でもまだ子供は生まれてないんでどっちも税金対策にはなってないっすけどね」「どうも……な。僕らの歳じゃあその……重婚っていうのに馴染みがないというか、そもそもそういう考え方がないんだよな。重光は奥さんが二人もいてしかも三人で同居しているんだったよな…… その、揉めたりなんかしないのか? それこそ嫉妬とか大変そうな気がするんだが……」「いやあ、うちは特別な方だと思いますよ。そもそも嫁二人がすごく仲がいいんで…… もしかしたら俺がいなくても別にいいんじゃないですかね。でも、まあ、うちは特例だとして社長は新しい奥さん見つけて家に住まわせてもいいんじゃないですかね。だって奥さん自分から出て行ったわけですし…… 文句言えないでしょ」「おい、そこまで言うなよ」「……あ。そうっすね。すいません」「なあ、重光。お前のところの家事は誰がやって
Last Updated : 2025-07-09 Read more