13時からの打ち合わせまであと5分という時、ソファで寝入っていた泉の身体がびくりと動き、マックスが驚いて飛び降り、音川は1人と1匹を撫でていた両手をパッと宙に上げた。どうやら泉のスマートウォッチが会議のアラートを発したようだ。泉は束の間もぞもぞとしていたが、急にガバっと起き上がり「音川さん!」とコーヒーテーブルに腰掛けた音川の太腿にすがるように手を置いた。「会社、間に合わないですよね?」「ここから繋げばいいよ」「すみません……」「いや、俺が起こさなかったせいだから」「そんな……寝ちゃったの僕ですし」先週までの泉のがんばりを考えれば、週が開けても疲弊していて当然だ。脳も筋肉と同じように、使いすぎると回復に時間がかかる。——それは事実だろうが、音川にとっては都合のいい言い訳でもある。泉を起こさなかったのは間違いなく音川の意図で、両の掌に等しく残っているふわりとした柔らかい感触が名残惜しい。「じゃあ、泉を寝かしつけていたマックスさんのせいということで」「あ……」初めて名を呼び捨てにされ、泉はぐいと心臓を掴まれたような気がして思わず胸を押さえた。音川にはそれが物理的な痛さに写ったようで、「5キロあるから重かっただろ」と無頓着に言う。「俺は仕事部屋から繋ぐよ。あと、カメラはOFFで」「はい、僕がここに居ることは言わないほうが……?」「今日のところは」泉は敬礼のジェスチャーで了解を表すと、床においていたバックパックから手早くノートパソコンを取り出し、音川からWiFiのパスワードを受け取る。そうしてリビングと仕事部屋に分かれ、それぞれの端末をオンライン会議に接続した。インド側では、高屋がすでに画面を共有して待機しており、挨拶もそこそこに、システムの動作検証が始まった。泉により新たに構築されたサーバー上で、アプリケーションは今まで以上の
Last Updated : 2025-09-01 Read more