第二十一話 虚舟《うつろぶね》梅乃は、気になっていた三人組の男性の近くまで距離を縮める。そして、気づかれないように地面に、お絵描きをしながら近寄っていった。そして声が聞こえる場所までくると、絵を描きながら聞き耳を立てていると(あの人、見た事あるな……) 梅乃は、“ある人 ”が気になっていた。そこに見えたのは、男性がお金を渡している姿だった。(あら……見ちゃった~) 梅乃は気まずさから、絵を描きながら男たちから離れていった。そして、梅乃が三原屋に戻り「ねぇ、お婆……私、見ちゃった」 梅乃は采に、先程の事を話すと「お前、大変なものを見ちまったね……誰にも言うんじゃないよ」采が釘を刺す。夜中、酒宴の最中に梅乃は寝る時間になり、大部屋で横になっていたが(なんか落ち着かないな……) 昼間の事もあり、落ち着かない梅乃は三時くらいに小用で起きた。(お漏らししたら、お婆に外に吊るされちゃう……) そうして用を足した後、梅乃は妓楼の屋根に上った。「星が綺麗だな……」 そう言って、先日に習った舞踏《ぶとう》の真似事をしていた。その時である「あれ? 大きなお茶碗?」 梅乃は目を擦《こす》り、何度も見直していた。お歯黒ドブに浮かぶ、大きな茶碗のような丸い物が見えたが「まぁ、いいか……」 梅乃は布団の中へ戻っていった。翌日の朝、吉原に人だかりが出来ている。梅乃は興味本位で、その中に紛れていった。そして、話題となっている方向を見ると、そこには夜中に見た大きな茶碗がお歯黒ドブに浮いていた。そして、頭を抱えている男性が河岸見世の前に立っているのに気づく。「あの……どうしたのですか?」 梅乃は、見知らぬ妓女に話しかける。「なんだい、アンタ……禿か? ここ最近、変な事が起きるんだよ」 妓女は、こう漏らしていた。「足抜なのかね~? これじゃ見張りも厳しくて商売にも影響しちゃうよ」妓女は困った顔をしている。そして頭を抱えている男性に近づいていくと、「また足抜だよ……」 頭を抱えていた男性は、妓楼の主人だった。梅乃は、さらに聞き耳を立てていく。(みんな朝に気づく……? そうか、私は夜中に起きたから見えたけど、普通は寝ているものだ) 「おじちゃん……お団子食べたい……」 梅乃は、頭を抱えていた男性に話しかける。「なんだい? どこの禿だい?
Huling Na-update : 2025-07-25 Magbasa pa